『2025くまもとニュースの深層』。
7回目は、今年熊本から大都市圏へ広がりを見せた赤ちゃんポスト、内密出産についてです。

今年3月、東京・賛育会病院が新たに取り組みを始めました。

そして6月には大阪・泉佐野市が導入に向けた関連予算案を可決。
先月には職員らが熊本へ視察にやってきました。

私たちは今回泉佐野市の千代松市長にインタビュー。

国内初となる自治体主導での取り組みについて、熊本の視点から考えます。

泉佐野市といえば、関西国際空港が立地する臨空都市。

大阪府の南部に位置し、人口はおよそ10万人です。

その泉佐野市は今年、親が育てられない赤ちゃんを匿名でも預かる『赤ちゃんポスト』、そして病院の担当者にのみ身元を明かして出産する『内密出産』を来年度中に導入すると表明しました。

自治体主導での取り組みは、全国で初めてとなります。

先月末、泉佐野市の職員や医師らが熊本へ視察に訪れました。

【ゆりかご見学】
「これがこうのとりのゆりかご、赤ちゃんポストです」
「ベッドは一年中温められています」

熊本市の民間病院・慈恵病院が2007年に運用を始めた『こうのとりのゆりかご』。

国内では法制化されていない中、当時、慈恵病院の申請を受け熊本市が設置を許可しました。

以後、地元行政との連携で運用が続けられていて、赤ちゃんの処遇などを熊本市の児童相談所が担っています。

『ゆりかご』には昨年度までに193人が預け入れられ、同じく慈恵病院が取り組む
『内密出産』は2021年の初事例から、これまでに60例を数えています。

ここは一般の病室とは別のフロアにある、内密出産を希望する妊婦が滞在する部屋です。

【泉佐野市】
「最長どれくらい(の期間)ここにいたのか?」
【慈恵病院】
「2カ月くらい」
【泉佐野市】
「勝手に離れるのを防ぐ仕組みは?」
【慈恵病院】
「妊娠なさっているので戻って来ていただかないと危ない。コミュニケーションをとる。色々な事情で外出する人はいる」
【泉佐野市】
「滞在費は?」
【慈恵病院】
「無料です」

慈恵病院の蓮田健理事長は、『ゆりかご』や『内密出産』を求める女性たちの実情を     説明しました。

【慈恵病院 蓮田健理事長】
「安易な気持ちで来ているわけではないので、そこをよく推し量っておかないと『突き放しても他のどこかに頼るだろう』と思い込んではいけない。『そのくらい出来るだろう、どうしてできないんだ』と言いたくなるが、できない特性を持っていたり家族の環境を含め『できる人の論理』は通用しない。パニックになりやすいので『どうしよう、どうしよう』となり(赤ちゃんの)首を絞めるなど含め、あらぬことをしてしまう可能性がある」

蓮田理事長は女性の『匿名性を保障する』こと、そして『費用負担を求めない』ことが大前提だと強調しました。

【りんくう総合医療センター 松岡哲也 院長】
「匿名性の担保、環境整備についても今のりんくう総合医療センターで『ゆりかご』『内密出産』をするには、整備すべきハード面ソフト面、多々あると実感した」

泉佐野市の担当部長は慈恵病院のノウハウをどう生かすか報道陣に問われ、こう述べました。

【泉佐野市こども部 島田純一 部長】
「秘匿をどこまで守れるか懸念されていると思うので、児童相談所を持たない泉佐野市として(大阪府の)児童相談所とどうやって連携していけるか、ということを感じている」
      
今回の熊本視察を、泉佐野市の市長はどのように受け止めたのでしょうか。

 【泉佐野市・千代松大耕市長(52)】
「泉佐野市長の千代松大耕です。どうぞよろしくお願いします」

今月、話を聞くことができました。

【泉佐野市・千代松大耕市長】
「色々と報告受けたが非常に必要性、重要性を感じて帰って来てくれていると私は思った。どういう費用が発生するかどういう改修が必要になるかなど細かく検討を進めてもらうワーキンググループの設置経費を今定例会に提案している」

設置予定のワーキンググループでの検討を経て、来年度の当初予算案に具体的な経費を盛り込みたいと語った泉佐野市の千代松市長。

匿名性の保障についての考えは?

【泉佐野市・千代松大耕市長】
「匿名性という部分を担保しなければ、赤ちゃんポスト・内密出産を望む女性たちの支援につながることは少ないのかなと思う」

泉佐野市に対し慈恵病院の蓮田理事長が『匿名性の保障』を強調したのには、理由があります。

【慈恵病院・蓮田 健理事長】
「匿名を前提としたサービスをこれまで行政はされていない。例えば生活保護もそう。法的よりどころがあれば積極的に動けるけれども内密出産、赤ちゃんポストは法律がない中で動きにくいのが行政。心配している。ただ期待はしている」

【泉佐野市・千代松大耕市長】
「匿名性を担保することをどういう形でやっていくのかは、これからりんくう総合医療センターと検討を深めていきたい。できる限り匿名性は担保できるという中で進めていくことが、前提になってくると思っている」

こども基本条例を制定している泉佐野市、千代松市長は取り組みの必要性をこのように語りました。

【泉佐野市・千代松大耕市長】
「こどもの生きる権利を保障していく中において、最後の砦となる赤ちゃんのゆりかご事業について行政として取り組むべきだと考えたので、しっかりと進めていきたい」

泉佐野市は赤ちゃんポストなどの取り組みに先立って、妊娠に悩む人からの相談に夜間や休日も対応するオンライン窓口を近く新たに開設する予定です。

法制化されていない国内で、 事例を重ねてきた熊本の取り組みはどう生かれるのでしょうか。

泉佐野市は、来年度中の導入を目指しています。

テレビ熊本
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