名古屋・栄の歓楽街で違法な客引き行為が後を絶たず、ぼったくり被害も相次いでいます。中でも増えているのが、未成年による客引きです。夜の街に居場所を求める若者を取り巻く実情と、支援のあり方を追いました。
■増える未成年の客引き「もっとまともな仕事したい。でも金は稼げる」
師走に入り、ますます賑わう名古屋の歓楽街・錦三丁目。この夜の街に一歩足を踏み入れると、多くの“客引き”の姿が…。
客引き:
「飲みだったらラウンジ、ガールズバー、揉みだったらおっパブです。初回なんで70分5000円で頑張るっす。ビール・焼酎・ウイスキー飲み放題って感じで。女の子のドリンクは1杯ずつサービスさせてもらうんで」
愛知県では、迷惑防止条例などにより「客引き行為」は禁止されていますが、夜な夜な姿を現し、通行人をキャバクラなどに誘い込みます。
「ぼったくり」の店へと連れていかれるケースも多く、錦三丁目を含む栄地区のぼったくりによる被害額は、11月末までで1億5000万円に迫る勢いです。
愛知県警によると、現在栄地区で確認されている客引きの数はおよそ220人。中でも、2年ほど前から増えているというのが、“未成年者による客引き”です。
記者に声を掛けた客引きに、話を聞きました。
Q.いつからやっている?
客引き:
「結構長いっす。高校行かずにやってるので。小遣い稼ぎみたいな。僕は後輩の女の子に誘われた」
悪いことだとは認識しながらも、小遣い稼ぎ感覚で15歳から続けているといいます。
Q.今も未成年はいる?
客引き:
「16歳とか。(Q.客引きは楽しい?)楽しくない。もっとまともな仕事したいっす。でも金は稼げるんで。(月に)40後半とか」
愛知県警は18歳未満の未成年に深夜に客引きをさせたなどとして、2025年9月以降、あわせて8人を逮捕しています。そのうちの1人で、すでに逮捕された男が、居場所を求めて栄などに集まる未成年を客引きなどの違法行為に引き込んでいたとみられています。
■警察逃れ流れた先に…若者たちはどこに行ったのか
名古屋・栄にある「オアシス21」。2022年に取材した際は、夜に居場所を求めて集まる若者たちがいて、彼らの間で「オアシス界隈」と呼ばれるようになりました。
12月16日夜、話を聞こうとオアシス21に向かいましたが、人影はまばら…。彼らの居場所は変わっていたのです。
名古屋を代表するもう一つの歓楽街・女子大小路にある池田公園。午後11時過ぎにも関わらず、酒を飲んだり動画を撮ったりする多くの若者たちの姿がありました。
若者ら:
「元々はオアシス界隈です。向こうだと警察とか、僕らは車で集まっているので、路駐していると結構…。(オアシス界隈は)なくなっているわけではないんですけど、(トレンドは)こっちです。池公界隈」
自らを「池公界隈」という若者たち。集まる理由は様々ですが、ここでの出来事が原因でトラブルに巻き込まれることもあるといいます。
若者:
「『キャッチ紹介して』と言われて紹介したら、紹介した友達が辞めて、『紹介したお前に責任がある』と20万円くらい請求された」
■若者の受け皿になるカフェがオープン
トラブルに巻き込まれないよう、行く当てのない若者たちの受け皿になっているのが、名古屋市中区にある女性限定のカフェ、その名も「夜カフェ」です。
若者の支援などに取り組む「愛知PFS協会」が、2025年7月にオープンさせました。
大学生:
「(家族と)今日は顔を合わせたくないな、ケンカしちゃったな、みたいな日もあるので、そういう日に来てここで楽しく過ごして、冷静になってまた家族と会えるので、すごく良い居場所だなと思っています」
20代:
「小さなことでも日々のことをいろいろ話せたりとかするので、心が軽くなったり楽しい気分になったりするので。のびのび自分らしくいられる」
出入りは自由で、おやつや軽食は無料、スタッフや若者同士での交流もできるスペースです。代表の星野智生さん(52)は次のように話します。
星野代表:
「若者たちを食い物にする。心地良い言葉だったり、居場所や仕事を提供してくれたり、どんどん深みにハマっていってしまう。犯罪だって分からずに、足を踏み込んでしまう子たちが多い」
自らも若いころ、夜の街に居場所を求めた経験があるからこその思いがあります。
星野代表:
「若者たちがたむろしていると、街の景観が崩れる、治安も悪くなる。その場所をなくそう、たむろする若者たちを排除しよう、という動きは理解できなくはないんですけど、そうなると『彼らはどこに行くの?』って。安心な場所や安心な大人がいることを、少しでも分かってもらえたらいいなと」
