宮城・名取市の朝空に現れた不思議な雲

宮城県名取市で、珍しい形をした雲が見られた。12月17日午前8時ごろ、市内の住宅街の上空に、のこぎりの歯のように規則正しく波打つ雲が出現した。この雲は「波状雲(はじょううん)」と呼ばれる気象現象とみられている。
(解説:平野貴久気象予報士)

6歳の子供が発見

波状雲を見つけたのは、宮城県名取市在住の6歳の男の子。12月17日、何気なく外を見たときに「すごい雲が出ている」と気づき、母親が撮影したという。

写真には、住宅街の上空に広がる青空の中に、等間隔で波打つように連なる雲の列がはっきりと写っている。のこぎりの歯を思わせる独特のシルエットが、空一面に続いている様子が印象的だ。

名取市の朝空に現れた波状雲
名取市の朝空に現れた波状雲
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「波状雲」の正体と発生メカニズム

平野気象予報士:
「この雲にはきちんと名前があり、『波状雲』といいます。この日は上空に強い西風が吹いていて、その風が奥羽山脈にぶつかることで、空気の流れが波のように上下に揺れています。その波に沿うようにして雲が並んでいるのです」

波状雲は、上空の強い風が山脈などの地形的な障害物にぶつかったときに発生する。風は障害物を越えたあと、波のように上下に振動しながら流れていく。この上下運動に伴って、湿った空気が凝結と蒸発を繰り返すことで、雲が帯状に並び、波打つような形が浮かび上がると考えられている。

平野気象予報士は、「ある意味、目に見えない風の流れが、雲の形として可視化されたようなもの」と表現する。普段は意識しにくい大気の動きが、雲の模様として現れる…それが波状雲という興味深い現象だ。

解説する平野貴久 気象予報士
解説する平野貴久 気象予報士

日常の中の気象現象を発見する眼差し

一見、何気ない日常の風景の中にも、実はさまざまな気象現象が潜んでいる。今回の波状雲も、大人ではなく、6歳の子供の好奇心と観察眼によっていち早く見つけられた点が印象的だった。

「すごい雲が出ている」という素直な驚きの声が、珍しい気象現象の記録につながった今回の出来事。私たちが何気なく見上げる空にも、自然がつくり出す不思議な模様やドラマが隠れていることを、改めて気づかせてくれる。次に空を見上げるときは、雲の形にも少しだけ注目してみてはいかがだろうか。

仙台放送
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