秋に収穫される番茶の価格がいま、異例の値上がりをしています。その価格は2024年と比べて実に6倍も上がっていて、普段手にするお茶も値上がりを続けています。いま、お茶業界に何が起きているのでしょうか。
茶葉を焙煎する機械から次々と出てくる香ばしい香りの“番茶”。この番茶を扱う静岡県静岡市葵区の茶商・茗広茶業ではいま、ある“異変”が起きていました。
茗広茶業・長瀬隆 社長:
例年だともっと仕入れをしたかったが思ったキロ数が仕入れできなくて、うちだけじゃなくて全国の問屋の悩みではないか
いま、全国的に番茶の茶葉が手に入らないと話します。
手に入らなければ値段は上がるとあって今シーズンの県内産の茶葉の取引価格は2024年の6倍近くに跳ね上がりました。
茗広茶業・長瀬隆 社長:
なかなか懐具合が難しい
番茶は主にペットボトルのお茶の原料などに使われています。
ペットボトルのお茶はここ最近、値上げが相次ぎ1本200円超えが普通になりつつあります。
価格高騰が広がるなか茗広茶業では今後も番茶の生産量が減っていくと予想し、原料を確保するために自ら生産にも参入していこうと考えています。
茗広茶業・長瀬隆 社長:
生産にも参入しようかなと、ゆくゆくだが。やめる農家と提携したりとか一緒に協力したりとか生産から一体的なことも考えていかないと
では、なぜこれだけ危機的な状況に陥っているのか?要因とされているのが海外などでの“抹茶ブーム”です。
というのも、抹茶の原料となる「碾茶」の生産に切り替える生産者が急増していて、茶葉で入れる「煎茶」の生産が減少しているからです。
静岡市葵区の中山間地にある足久保ティーワークス茶農協。
茶農家が共同で出資し、お茶の栽培から加工・販売まで一貫して行うこちらでも2025年、2億円をかけて煎茶の製造ラインの半分を碾茶の製造ラインに切り替えました。
県内で生産されている煎茶は太陽の光の下で育てられる一方、抹茶の元になる碾茶は日光を遮って育てるのが特徴です。
さらに、加工工程も蒸してから揉んで完成させる煎茶に比べて、抹茶は乾燥させてから粉末にする全くの別物。
煎茶から碾茶への切り替えは大きな冒険でしたが、予想以上の“反応”といいます。
足久保ティーワークス茶農協・松永哲也 組合長:
大体1ラインだと100kg。5倍。これでも足りないですよ。うちの注文からすると
生産ラインの導入後、注文が相次ぎ生産が追いつかないと言います。
松永さんによりますと、さらに今シーズンの碾茶は1kg当たり約3500円で取引され、碾茶に切り替えた農家の中には2024年と比べ、売り上げが10倍になった人もいます。
足久保ティーワークス茶農協・松永哲也 組合長:
急に価格が上がることでビックリ。ビックリっていうのかな、支払った時に「間違いじゃないか」っていう。「こんな金額間違いじゃないか」という問い合わせを何件ももらうほど、みなさん(農家が)口をそろえて言うのは「うれしい」と「ありがたい」と「やる気が出た」
松永さんは「元々の値段が低すぎだ」と指摘しますが、今後は自分たちでのカフェの経営や煎茶の生産も続けながら生き残りをかけます。
足久保ティーワークス茶農協・松永哲也 組合長:
煎茶離れがあるが、そこに戻していきたい。しっかり煎茶も製造して碾茶もしっかり収入をとってこの地域を守っていきたい
先行きが不透明なお茶業界。急激な環境の変化に対してそれぞれが生き残る道を模索しています。