性的少数者のカップルの関係を公的に証明する仙台市の「パートナーシップ制度」は開始から1年が過ぎました。
宮城県内では最初の導入で、11月までに41組が宣誓したということです。
当事者たちの今の思いです。

仙台市の「パートナーシップ宣誓制度」は性的少数者のカップルの関係を市が証明するもので、2024年12月10日に始まりました。
法的拘束力はありませんが、市営住宅への入居申込みや、市営墓地の承継など一部の公的サービスを家族同様に受けることができます。

仙台市男女共同参画課 土屋直樹企画推進係長
「11月末時点で41組82人が宣誓。制度心待ちにしていた、制度ができたことで安心して暮らせる、自分たちの関係が認められたように感じるという声もらった」

日本で初めてパートナーシップ制度を導入したのは、東京都の世田谷区と渋谷区。
10年で全国に広がり、2025年5月末の時点で全国532の自治体が導入。9837組が宣誓したということです。

仙台市青葉区で理容室を経営する小野寺真さん。
市民団体「にじいろCANVAS」の共同代表として性的少数者への理解を進める活動を続けています。

小野寺さんはトランスジェンダー男性で、現在は戸籍上も男性です。
パートナーの女性とは法律上の夫婦であるためパートナーシップ制度を利用することはありませんが、制度導入1年をこう見ています。

「にじいろCANVAS」共同代表 小野寺真さん
「誰かに認めてもらったっていうのはすごい喜びだと思う。勇気にもなるし。(でも周りからは)パートナシップ制度使って何かしたという声は届いていない。(宣誓の)意味を見いだせない人が多くいると感じる」

この日店を訪れていた、仙台市内に住むFさん。8年ほど前から同性のパートナーがいて、近々、パートナーシップ制度を利用する予定です。
しかしそこに至るまでには葛藤もあったといいます。

Fさん
「(制度利用提案したが)メリット感じないと突っぱねられて、めっちゃけんかした。」
小野寺真さん
「2人でカミングアウトするものだからね宣誓は。そこがハードルになっている」

制度を利用することにしたのは、パートナーが体調を崩したことがきっかけでした。

Fさん
「自分たちはパートナーですということで面会ができたり、病状の説明をしてもらえたり、本当に最悪の事態になったときに、私と彼女は仙台市が認めたパートナーだったということがオフィシャルに証明されるので、すごく大きい」

仙台市の子育て支援施設「のびすく泉中央」。
親子などが自由に遊べる場所に性的少数者に関する本やリーフレットをさりげなく置いていたり、当事者の講演会や若い世代の居場所づくりをしたりしています。

のびすく泉中央を運営 小川ゆみ代表理事
「そういった本を置いたり、名札に虹色のシールを付けて、そういうことがあるだけでも、ここの人たちは、もしかしたら分かってくれる人かもしれないという暗黙のメッセージになって、たとえカミングアウトしなくても安心して利用できるそういう道筋ができるんじゃないかと(当事者に)教えていただいて」

この日、子供と訪れた、仙台に住む「うみ」さん。同性のパートナーがいます。
施設のこうした姿勢を感じ、安心して利用できると言います。

うみさんたちは、パートナーシップ制度は利用していません。

うみさん
「婚姻制度と比べるとメリットとしては少ないと思うので、パートナーシップ制度があるからいいじゃないかということを言う人もいるが、そこの比較では比べ物にならないくらい違いがあるものだと思って」

ただ、制度ができたこと自体には感謝したいし、意味があると話します。

うみさん
「そのくらいの(数の)カップルがいるんだということが可視化された先に、同性婚の法整備が整うといいなと思っていて。制度としては同性婚を国に認めてほしいというところが一番大きい」

パートナーのコウさんは現実的な問題を指摘します。

コウさん
「自治体としてできることとしてのパートナーシップ制度はすごく大事、意義があると思うが、実際利用するかとなった時には、わざわざカミングアウトして宣言するのか、法的な効力がないもののためにそういう労力を割くのか、ということになると実際、別にいいかなという感じになってしまうのが現実なので」

当事者として望む社会とは。

うみさん
「男性と女性の婚姻制度における家族像みたいなものが、子供たちの間にも刷り込まれていると思うが、それ以外の選択肢もあるよねっていう。そう思ってくれる人たちが多い社会がいいかなと思う」
コウさん
「お父さんが2人、お母さんが2人もそうですけど、多様な家族があるよね、とみんなが思えるような社会になったらいいなと思います」

当事者として理解を進める活動を続ける小野寺さんはこう話します。

「にじいろCANVAS」共同代表 小野寺真さん
「大事だと思うのは選択すること。パートナーシップ制度を使うか使わないかも選択。それをどう使うかも選択だから、その選択の枠を仙台市に増やしてもらいたい。それが尊厳だし、人権だし、より自分らしく、目標とかこれから頑張っていこうとか、きっかけになるのではと思う」

宮城県内でパートナーシップ制度があるのは、35市町村のうち仙台市と栗原市だけです。
一方、全国的には自治体同士の連携の仕組みやパートナーの子供も家族と証明する「ファミリーシップ制度」など、制度のすそ野は広がりつつあります。

それでも、当事者の方の話にもあったようにパートナーシップ制度と法律上の結婚では、当事者が得られるものに雲泥の差がありますので、同性同士でも法律上の結婚ができるようにしてほしいということを、当事者の多くが望んでいます。

仙台放送
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