あと2週間余りで迎えるお正月。
新年の食卓を飾る高級おせちの代表的食材といえばイセエビです。
本来暖かい海に生息するとされるそのイセエビが今、東北の海で大豊漁となっています。
宮城県漁協志津川支所・高橋義明課長:
8月から水揚げが増えて、毎日100kg前後の水揚げ。
宮城県の南三陸町では、2024年度は約195kgだったイセエビの水揚げが2025年度は11月末時点で2800kg超え。
2024年度と比べ、実に14倍以上の急増ぶりです。
記録的な豊漁を受け、町内の飲食店では驚きのイセエビグルメが登場。
イセエビを丸ごと使った天丼です。
観光協会もイセエビ料理を出す飲食店をホームページでPRするなど、町は突然のイセエビブームに沸きました。
こうした状況を受けて、町は2025年9月、イセエビの生息調査を初めて実施。
カメラが捉えたのは、暗い海底を進むイセエビの姿です。
南三陸町自然環境活用センター・阿部拓三研究員:
ライン上に5匹なので、それなりに数はいる。きょう見たイセエビでも2~3年くらいたってると思われるので、ここ2~3年の(海水温の)暖かさによって加入してきた個体だと思う。
暖かい海に生息するはずのイセエビが、なぜ東北の海へ?
その理由として考えられているのが、暖かい海流である黒潮の蛇行です。
2017年ごろから和歌山県の紀伊半島沖で流れが大きく蛇行。
その流れの一部は岩手沖まで達したといわれています。
その結果、一帯の海水温が上昇し、これまで東北の海では生息できないとされてきたイセエビが、冬を越せるようになったとみられているのです。
さらに2025年10月には、これまで太平洋側では千葉が北限とされていたサザエも南三陸町で初めて見つかったといいます。
サザエを採取した漁師:
イセエビ漁をしていて、なんか変なの来たなと思った。見たらポコポコと突起物があって、もしかしたらサザエかなと。
イセエビにサザエ、それだけではありません。
2025年2月に行われた潜水調査では、同じくこれまで東北の海にはいないとされてきた生き物が複数見つかったといいます。
南三陸町自然環境活用センター・阿部拓三研究員:
これがサラサエビの仲間、ヤイトサラサエビです。これも暖かい海の生き物、エビの仲間で房総半島より南にしかいないとされていた。これもアカシマモエビというエビで、今回私たちが初めて見つけた。これも生息は房総半島以南、そんなのばっかりですね。
東北の海に異変をもたらしたとみられる黒潮の蛇行は、2017年から7年以上続いた2025年に終息。
平常値に戻ったといいます。
南三陸町自然環境活用センター・阿部拓三研究員:
2023年~2024年が異常な高水温だったので、それが続くかと思ったが、今は例年の三陸の水温に近づいている。
黒潮の蛇行が終息したことで、水温も下がっているという三陸の海。
となると、イセエビは今後どうなるのでしょうか。
その鍵を握るのが、冷たい海流である親潮が北から来るかどうかだといいます。
南三陸町自然環境活用センター・阿部拓三研究員:
親潮が来ると水温が一気に下がるので、そうすると南から来た生き物は冬を越せずにいなくなるのが通常。親潮が来ればイセエビなどは冬を越しづらくなるのは明らか。親潮の海流の影響が今後、春先どうなるかがカギになる。