菅政権の発足から1カ月以上が経過した。菅首相は携帯電話料金の値下げやデジタル化などの政策を矢継ぎ早に打ち出し、初外遊として東南アジアに赴くなど、国内外ともに自ら掲げる「スピード感」を意識した姿勢で臨んでいる。一方、26日からの臨時国会に向けては、学術会議の任命拒否問題などに関し、軌道修正が必要になったときの「ブレーキ役」不在の心配もささやかれている。

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高支持率の波形に携帯料金値下げなどの「伝わりやすさ」

10月16日、就任1カ月を迎えた菅首相は「振り返る間もなく早かった。常に念頭に置いているのは“やるべきことをスピード感を持って躊躇無く実行に移す”ことだ」と語った。そして具体例として、各社が値下げプランを発表するに至った携帯電話料金を挙げ「改革を進め国民に実感として味わって頂く」と力を込めた。

菅内閣は国民からの支持も高く、要因としては「菅首相が掲げている政策はほとんどが国内の話で、デジタルや縦割り打破など国民に伝わりやすいものが多いからだ」という分析が聞かれる。その首相の1カ月の動静を振り返ると、ある特徴が浮かび上がる。

多彩な民間ブレーンとの会食で情報収集

それは政治家との会食よりも、大学教授や会社経営者などの民間人との面会が突出して多いことだ。相手は経済学者、不妊治療に詳しい産婦人科医、銀行業界の会長など、菅首相が進める政策とリンクする人物を中心とした顔ぶれとなっている。

これらの面会者の中からは、デジタル政策に詳しい慶応大学の村井純教授や、コロナ対策に精通した岡部信彦氏、外交が専門の宮家邦彦氏らが内閣官房参与に任命され、正式に菅首相の政策に助言や提言を行うことになった。

政府関係者は「総理はしっかりとした信念を持ち、専門家の意見などを自身の耳で聞きながら判断されている」と語っていて、多彩なブレーンからの情報収集を重視するという菅総理の姿勢がみてとれる。

学術会議問題で政府与党から懸念の声

一方、菅政権の波乱要素となっているのが日本学術会議の任命拒否問題だ。105人の会員候補のうち6人の任命を見送り、その理由の明確な説明がなかったことに、学術会議などが反発。16日には菅総理と学術会議の梶田会長が会談した。

会談で梶田会長は、会員候補の任命拒否の理由の説明と再任命を求める決議文を手渡したが、議論は学術会議の在り方についての話が中心で、任命に関する踏み込んだ話は行わなかったという。

しかし政府与党内からは、「今のままでは説明が不十分。今後一定の軌道修正が必要になったとき、菅総理にものを言える人がいるのか」「臨時国会では、強気なままの答弁では乗り切れない」という声も出ている。

つまり、かつて安倍前首相が「菅総理には菅官房長官がいない」と語ったように、首相を支えつつ時に諫める役割の人物が菅政権にいるのかどうかが懸念材料になっているわけだ。

菅首相のブレーキ役は?臨時国会での説明に注目

ある官邸関係者は菅内閣の体制について、「スポークスマンとしてミスのない加藤官房長官、総理と近い坂井副長官や和泉補佐官、そして長官時代から持ち上がりで周りを固める総理秘書官などの人員配置によって菅総理がやりやすい環境が整っている。総理自身の思いが強く総理主導で進んでいる」と評しているが、同時に菅首相のブレーキ役が必ずしもいないことを窺わせる。

こうした中で菅政権として初めて迎える26日からの臨時国会での本格論戦。菅首相の総理大臣としての答弁力は未知数だが、野党からの激しい追及が予想される学術会議問題などで、菅首相が自らの考えを国民にわかりやすく、納得の得られるように説明出来るのかどうか、注目が集まっている。

(フジテレビ政治部 亀岡晃伸)

亀岡 晃伸
亀岡 晃伸

イット!所属。プログラムディレクターとして番組づくりをしています。どのニュースをどういう長さでどの時間にお伝えすべきか、頭を悩ませながらの毎日です。
これまでは政治部にて首相官邸クラブや平河クラブなどを4年間担当。安倍政権、菅政権、岸田政権の3政権に渡り、コロナ対策・東京五輪・広島G7サミット等の取材をしてきました。