同性カップルの日常に焦点を当てたドキュメンタリー映画が、12月12日から仙台で上映されます。

その映画を制作したのは、自身も、同性のパートナーと子供がいる方です。同じ当事者の視点で家族、そして社会を見つめています。

「『この子の親です』って胸張って言える日は来るのかなって」

ドキュメンタリー映画「ふたりのまま」。

親である、あるいは親になりたいという同性カップル4組の日常を、1年半に渡って追った作品です。

「17歳の子がいるんだよ、すごくない?」

監督の長村さと子さんは、自身も同性のパートナーと子供の3人家族です。10年以上前から、子供がいたり、子供を望む性的少数者を支援する活動をしています。

映画「ふたりのまま」 長村さと子監督
「この社会の中で、『見えていない』だけで、私たちのような家族は既にたくさんいるっていうことや、その存在を『いない』ことにされないよう、この瞬間の家族の姿を残したいという思いで制作を始めました」

作品に登場する人たちは、皆、自身のことを公にはカミングアウトしていません。それでも、カメラの前で、日常生活や率直な思いを明かしています。

「なんか私自身はあまり血のつながりって、あまり重要視してなくて、一緒に住んでる人が家族みたいな気がする」

「『ノーマル』っていうのは何が『ノーマル』、誰が『ノーマル』なのか、みんなが違う」

「自然に持てないものを欲しがる人っていうのは、あまり好かれないですね」

一方で、本人たちが顔を明かすのは、映画館での上映に限っています。


Q「映画館では見に来てくれる人には顔を見せていいけど、テレビではちょっとねというところもある、というのが難しさというか葛藤かなと思いますが」

映画「ふたりのまま」 長村さと子監督
「そうですね。例えば、これをDVD化、配信してという声はあるが、それは、映ってくださった家族たちに、何もないと言い切れるかと言われたら、私はそういう社会ではまだないと思っています。なので、本当に多くの人たちに知ってもらいたい・見てもらいたい映画ではあるけれども、でも、それができない状況であるっていうことも現状なんだっていうことを感じていますね」

Q 「すごくジレンマというか、そういうものは感じますね」

映画「ふたりのまま」 長村さと子監督
「そうなんですよね、私もジレンマばかり感じて、どうやって顔を隠してどうやって発信し、その人たちを可視化するのかとか、そんなことをいつも考えて発信しているので、今回は初めて可視化という意味では、顔が見えて生活が見えるという映画になったっていうのは大きな一歩かなと思っています」

作品では、法制度の問題も指摘します。

第三者からの精子提供などによる不妊治療について、同性同士や事実婚のカップルを対象としない法案です。

廃案となりましたが、成立すれば同性のカップルが不妊治療で子供を持つことが難しくなってしまいます。長村さんたちは国会議員へ訴えました。

「異性愛者だったら、理想的な子育てができているんでしょうか。子供は皆幸せなんでしょうか」

長村さんには、映画を通して社会に問いたいことがあります。

映画「ふたりのまま」 長村さと子監督
「『制度の外側』にいる家族たち、今回のような家族たちを通して、家族って一体何なのかっていうことを、私は社会に問い直したいって考えています」

宮城県内に住む大塚のぞみさん。この映画の、仙台での上映を働きかけました。

大塚のぞみさん
「ドキュメンタリーとしても素晴らしいものだと思いましたし、知るきっかけで映画は非常に入りやすいと、個人的にもすごく実感しました」

大塚さんは、16年前から同性のパートナーと事実婚をしていて、同性婚を認めているカナダでは法律上の結婚の届けを出しています。

日本で結婚式も挙げ、周囲には自身のことをカミングアウトしています。性的少数者をめぐる現在の社会状況について、こう感じています。

大塚のぞみさん
「性的少数者は存在は昔からいて、近年本当に珍しくないんだよねという意識にはなっていると思います。なので過剰に反応する人は今時いない、というのは自分の実感としてあるんですが、まだまだ言いづらい、というのも一方ではあると思います」

だからこそ、お互いに理解を深めるきっかけにと、この映画に期待を寄せます。

大塚のぞみさん
「ただ『いますよ』という主張というより、どういう生活をしていて、どういう考えを持っていて、その経緯に至ったか、みたいなところまで丁寧に追っているものは理解しやすいですし、結局、何か違いを見せるのではなくて、一緒なんだということを実感する映画だと思います」

子供のいる宮城県内の当事者も、上映を心待ちにしています。仙台に住む「うみ」さん。小さな子供と同性のパートナーがいます。

うみさん
「セクシュアルマイノリティーの家族という形があるということを、そもそも多くの人が知らない。今まで世の中で見えなかった、見えてこなかった同性カップルの子育てについて、皆さんに見ていただけるとうれしい」

パートナーのコウさんも同性カップルの子育てを知るきっかけになってほしいと話します。

コウさん
「実際に育っている子供も映画に出てくるし、それを見てどう感じるのかっていうところを見た人には感じてほしい」

家族とは、親子とは、それぞれの幸せとは。そして、同じ社会に生きる隣人を「見えない」ことにしていてよいのか。多くのことを問いかける作品です。

監督の長村さんは当事者を支援する活動を続けるなかで、本当に心ない誹謗中傷を受けることも少なくないそうで、その度に深く傷つくと話していました。

ただ、映画を通じてそうした誹謗中傷が、誰に向かって何を投げているのか、その先にいる生身の人間や家族の存在をリアリティーを持って感じてほしいとも話していました。

映画「ふたりのまま」は12月12日から青葉区のフォーラム仙台で上映されます。

仙台市のパートナーシップ制度が開始から1年というタイミングで仙台での上映となりました。

12日と13日は上映後に長村さんの舞台挨拶やトークも予定されているということです。

仙台放送
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