これまで安価な家計の味方とされてきた鶏むね肉の価格高騰が止まらない。
農水省によると、卸売価格は過去最高を更新し、もも肉との割安な差が薄れた。年末に向けさらなる値上がりが予想される中、専門家はお得に購入する狙い目の「曜日」があると指摘する。

“割安”だった鶏むね肉が高騰

外はカリッ、中はジュワ〜。子供から大人まで幅広く愛される「鶏のからあげ」。

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東京都・大田区のJR大森駅近くにある「中津からあげ専門店 吉吾」で、ここ最近人気急上昇中だというのが「鶏むね肉」のからあげだ。

夕飯の支度が始まる午後5時頃、店の売れ行きを観察すると食卓に“もう1品”と、からあげを求めて次々と客が訪れていた。

中津からあげ専門店 吉吾・加藤店長:
ヘルシーだし、安価といったところを含めるとすごく売れ行きが伸びている。

約2時間で訪れた20組ほどの中で、売り上げの3割がむね肉だった。
もも肉に比べ、むね肉は割安なイメージが強い。

しかし、こちらの店の料金を見ると、どちらも100g350円だ。

取材班:
2024年の今頃の仕入れ値と比べると?

中津からあげ専門店 吉吾・加藤店長:
全然上がっちゃってます。100円以上。2025年も2回店頭の値上げをした。デリバリーも2回目。

飼料価格の高騰や需要の増加を受け、家計の味方とされてきた鶏むね肉が高騰した。その影響は、意外なところにまで広がっていた。

東京・豊島区の池袋にあるバー、その名も「筋肉女子」だ。

筋肉女子店長・ハリさん:
たいした筋肉じゃないですけど…触ってください。

取材班:
めちゃくちゃ固い!

筋肉女子店長・ハリさん:
ありがとうございます。

「筋肉女子」店長、ハリさんの鍛え上げられた筋肉の源を聞いた。

筋肉女子店長・ハリさん:
基本的には鶏むね肉です。

いわゆるマッチョ界では神食材とも呼ばれているという、高タンパクで低脂質な鶏むね肉だ。

自宅の冷蔵庫の中を見せてもらった。

筋肉女子店長・ハリさん:
値段というより、グラムで見て買っている。

約1㎏の鶏むね肉を週に3回ほど購入しているという。
単純計算で2024年と比べ、すでに年間1万円以上、家計を圧迫していることになる。

筋肉女子店長・ハリさん:
えー!そんなに変わるんですか。本当ですか?やばっ!めっちゃお金かかってますね、これ(筋肉)。むね肉で作った筋肉でお金稼いで、そのお金でまたむね肉を買います。

農林水産省によると、鶏むね肉の平均卸売り価格は、9月に1㎏あたり589円まで値上がり、過去最高を更新した。
2024年と比べ約1.5倍も跳ね上がり、もも肉より割安なイメージが薄まりつつある。

12月はなべ需要やクリスマスを前に、鶏肉の消費量がピークを迎える季節だ。
街からは戸惑いの声が上がっている。

消費量増える12月…“買い時”は

町の人:
いつ買いに行ったらいいのか知りたい。

割安という点で“最後の砦”として家計を支えてきた鶏むね肉に、かつてない物価高騰の波がきている。
どうすればクリスマスを安心して迎えられるのか。1円でも安く買う方法とタイミングを取材した。

10日午前10時半頃、取材班は東京・中央区の日本橋にある鶏肉専門店を訪ねた。
そこで目にしたのは「むね肉を15枚、あとガパオ用の鶏むね肉を1.5㎏」と、豪快に注文する男性の姿だ。

男性:
体を鍛えているというのもあり、筋肉をつけるために1日2枚ぐらいを家族で食べる。水曜日と土曜日が特売日なので、狙って買いに来てます。

創業昭和28年、70年以上の歴史を持つ鶏肉専門店「大金鳥店」では、国産鶏むね肉を通常100g200円で販売しているが、10日は特売日だ。
約半額の110円で購入できるとあって、まとめ買いする人の姿が見られた。

農水省によると、健康志向や低価格志向の高まりで近年鶏肉の消費量は伸び続けていて、2006年の個人消費量は15.1kg、2023年の個人消費量は20.3kg。この店でも、約2、3年前からむね肉を手に取る人が増えてきたという。

店長は2025年に入って仕入れ値が急激に高騰していると話す。

大金鳥店・鈴木健治店長:
高いですね…笑っちゃうぐらい高いですね。(仕入れが)1週間おきに10円ずつ上がってきている。ムネとモモ、そんなに価格の違いがなくなってきている。

各店の「特売日」を調査…専門家にも聞いた

クリスマスを前により安く鶏肉を買うためにはどうすればいいのか、調べてみた。

青井実キャスター:
まずはスーパー各社です。イトーヨーカドーは12日に鶏むね肉が通常100g99円のところ、88円に。イオンは毎月20日の特売日に、対象の支払い方法で購入すると、鶏肉を含む食料品などが5%オフになります。パックン、特に鶏肉需要の高い12月ですけれども。

SPキャスター パトリック・ハーランさん:
実は番組の直前に電話を入れて料理を予約したんですよ。普段だったら180円ぐらいのところ、230円。ブランド鶏だと280円。高いですよね。

今回取材した日本橋の精肉店「大金鳥店」に今後の鶏肉価格について聞いてみると…。

大金鳥店・鈴木健治店長:
年末はまだあと2〜3週間あるので、上がってくる予想は業者側から言われている。

早めに買っておいて、冷凍保存しておくことも一つだという。

では、買い時はいつなのか。
流通ジャーナリスト・西川立一さんによると、街のスーパーなどでは、鶏肉を含む生鮮食品が割引される傾向が多い狙い目の「曜日」があるという。

流通ジャーナリスト・西川立一さん:
週末の次の日やその翌日はお客さんが少なくなる。火曜日特売というのを色んなお店でやっているので“狙い目”。

クリスマスまでの火曜日は残すところ16日と23日。
なかでも気にしておいた方が良いことがあるという。

流通ジャーナリスト・西川立一さん:
高齢者は年金支給日だと割引になったりする。16日の火曜日は、もしむね肉が特売になっていれば高齢者はシニア割引があるので、さらに安く買うことができる。

お得に買うためのひと工夫が、家計を守る“最後の砦”となりそうだ。
(「イット!」12月10日放送より)

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