5年前、茨城・古河市の介護老人保健施設で入所者の男性2人の体内に空気を注入して殺害した罪などに問われている元職員の女。
10日の初公判で無罪を主張しました。
介護老人保健施設「けやきの舎」の元職員・赤間恵美被告(39)。
2020年5月、当時84歳の入所者・鈴木喜作さんの体内に点滴を介して空気を注入して殺害した他、約1カ月後にも同様の手口で当時76歳の入所者・吉田節次さんを殺害した罪に問われています。
10日、水戸地裁で行われた初公判に、黒色のスーツに白色のワイシャツ姿でマスクを着用して出廷した赤間被告。
「私は空気を注入していません。殺害していません」と、起訴内容を否認し無罪を主張しました。
裁判の争点は、入所者2人が他殺によって死亡したのか、その場合、赤間被告の犯行と認められるかです。
10日の公判では、2020年5月に死亡した鈴木さんについての審理が行われました。
検察側は、冒頭陳述で「鈴木さんは死亡する直前まで心身に不調はなく、体内に空気を注入される以外の原因で死亡した可能性は認められない」と主張。
犯行には注射器の筒「シリンジ」が使われたとみられています。
検察側は10日の裁判で、赤間被告のバッグの中に、本来所持する必要のないシリンジ2本が入っていたと指摘しました。
また、犯行時間帯に鈴木さんの部屋を出入りしたのは赤間被告だけで、他に犯行可能な人物はいないと訴えました。
これに対し弁護側は、「鈴木さんには脳出血の後遺症や高血圧、糖尿病などの持病があり、容体が急変し搬送先の病院で死亡したあと解剖が行われていない」ことを指摘。
弁護側は、「解剖をしないと正確な死因の判断は困難」「心臓の病気が原因で亡くなった可能性がある」との医師の証言を挙げたうえで、「証拠が乏しいのに想像を巡らせて殺人事件にすることは許されない」と無罪を主張しました。
10日の初公判から2026年7月の判決言い渡しまで、60回行われる予定のこの裁判。
審理期間は裁判員裁判として過去2番目の長さとなります。
異例の長さの裁判。
これは、赤間被告と犯行を結びつける直接証拠が乏しいことから、検察側が目撃証言や被害者の医療記録など、いくつもの状況証拠を積み上げて立証するためとみられます。