今から70年以上前の1948年に国連総会で世界人権宣言が採択された日です。
「イット!」でもお伝えしているように、近年、学校や保育園などの中で盗撮や不法侵入、虐待など子供の人権が侵害される様々な事件が起こっています。
こうした流れを受けて、校舎に防犯カメラを設置する学校も増加しています。
そこで「イット!」では、児童や生徒、保護者の声や学校側の意見、そして専門家に話を聞きながら、「教育現場で設置が進む防犯カメラ 子供の安全と人権をどう守るのか?」をテーマに考えていきます。
文科省が発表しているデータでは、学校敷地内や校舎内への不審者侵入防止の対策として防犯カメラを設置している学校は64.6%に上るということです。
実際に街で防犯カメラについてどう考えているのか、設置されたらどう感じるのか話を聞いてきました。
小学4年生:
自分たちの身を守ってくれるために付けるなら良いと思う。
小学4年生:
(Q.防犯カメラの設置場所)トイレの前とか更衣室の前はやめてほしい。
60代:
デメリットは、プライバシーのことがあるので、それ(プライバシー)を克服したら良いんじゃないかな。
小学4年生:
(Q.防犯カメラの設置場所)教室の中とか体育館とか、みんなが使うところが良いと思う。
女性(40代):
カメラまでねって感じはします、私的には。そういうものがなかった時代なので。
子供の人権を巡って懸念の声も上がっています。
例えば、「子供が委縮するのではないか」「伸び伸びできないのではないか」という指摘もあります。
他にも、「税金での設置はいかがなものか」「教員研修などが先では」といった意見もあります。
宮司愛海キャスター:
パックンは学校の防犯カメラの設置に関してはどう思いますか?
SPキャスター パトリック・ハーラン氏(パックン):
僕もなかった時代に育ったもので違和感はあるんですが、アメリカは日本よりも進んでいるんです。乱射事件が起きるからその必死さが全然違いますけど。いろいろ数字があって多い方は90%以上設置されている割合なんですが、でも面白いことに、設置はしているけど4分の3が普段から監視していない。見てないんですよ。つまり何かあった時に対応できるように。録画も大事な資料ですが、不審者が入ってきた時は、どこにいるのか突き止めるため。その使い方ならいいかなと思いますね。普段から監視されていないほうが子供は伸び伸びできるんじゃないかな。
遠藤玲子キャスター:
防犯カメラなのか、監視カメラなのか、それでまた捉え方も変わってくるかもしれないですね。
宮司愛海キャスター:
確かに“見守りカメラ”みたいな名称だったら安心できるという子供もいるかもしれませんしね。
では、実際の教育現場はどうなっているのか、カメラをすでに設置している中高一貫教育の都内にある私立の学校と、設置を決めて2026年4月から市内12の小中学校に設置予定の愛知・みよし市を取材しました。
まず、都内の学校ですが、「青稜中学・高校」では約10年前からカメラを設置しています。
設置理由は、導入当時に外部からの侵入などの事案が問題になっていたということで、抑止力として校内に設置を開始しました。
設置する前には「安心・安全を届けたい」と保護者に説明して、プリントで保護者に学校の態勢や運用の厳格化などについて説明を行ったということです。
一方、2025年9月に防犯カメラの設置を発表した愛知・みよし市。
市内の中学校で起きた常勤講師の男の盗撮事案がきっかけで、こういった事件を未然に防ぐ狙いから設置を決め、2026年4月から運用を始める予定だということです。
ではどこに設置しているのかですが、都内の学校では現在64台のカメラを設置していて、廊下を中心に死角ができないように設置しているといいます。
そして、撮った映像は職員室でチェックするということで、「視聴する時は複数の教職員で見ること」「過去の映像チェックは教頭の許可が必要」といったルールを作っているそうです。
青稜中学・高校 青田泰明校長:
(生徒から)「あそこが死角だから付けてほしい」とか意見も出てましたし、子供たち自身も職員室に入ってきたときに大きなモニターが見られるんですよね。それを見て「あ、こうやって先生たちはチェックしてるんだな」ということで、安心感とか安全感みたいなものを感じてくれていると思います。
続いてみよし市ですが、こちらも廊下の両端に設置して人の出入りを記録するということです。
みよし市教育委員会・鈴木啓太さん:
廊下の突き当たりの角辺りですね。カメラを設置して、教室とかを撮るのではなくて、廊下をそのまま撮る。
撮影した映像は校長室に置いた録画装置に記録されて、盗撮事案などが発生した時のみに確認できるとしています。
取材したどちらも、外部からの不法侵入や盗撮などから子供を守るということを理由に設置をしているということでした。
青井実キャスター:
子供たちからの提案もあったという先生がいて、ああいうのはいいかもしれないですね。
SPキャスター パトリック・ハーラン氏(パックン):
いいですね。いじめもありますし、不審者問題もありますけど、ここを通れば安心できるというセーフティーゾーンを作るのも大事かもしれませんね。
続いて、課題の部分を見ていきます。
まず都内の学校は、今後、個人情報の取り扱いが厳しくなった場合、カメラが使えなくなる可能性もゼロではないことは念頭にしているといいます。
また、死角もあるので見回りなどのアナログの対応を組み合わせて安全を提供したいとしています。
みよし市は現在議論中で、プロジェクトチームを作ってルールを作る話し合いを行っているということです。
どのように丁寧に周知していくかを課題にしているといいます。
そしてデータの部分では、都内の学校だと2週間で上書き・消去され、みよし市は30日で消去されるといった条件があるようです。
青井実キャスター:
結構細かく基準が決められているのでそれだったら安心ですね。
遠藤玲子キャスター:
そうですね、どうやって保存されているのか気になったので。
では専門家はどのように見ているのでしょうか。
発達心理学を専門にする恵泉女学園大学の大日向雅美学長に話を聞きました。
カメラの設置については、「大人がどう伝えるかが子供への影響としてはとても重要」で、一方的につけることを大人が決めるだけじゃなく、「あなたたちを守りたいからこの場所にカメラを設置するけどどう思う?」と「子供の意思表明」を聞くことが大事と話していました。
恵泉女学園大学・大日向雅美学長:
(Q.撮られるのが嫌だという子にどう向き合う?)何が嫌かを聞くことで、安心の方向に導くことができるかも。親も、カメラが嫌なら、どこが嫌か徹底的に話し合う姿を見せる。
防犯カメラの設置の議論を子供に見せることで、子供が「守られているんだ」という実感を受け取ることができるというのが大日向先生の指摘でした。
宮司愛海キャスター:
こういった議論が抑止力になって、カメラ以外にもちゃんとそういった事案を防ぐ効果もあると大日向先生はおっしゃっていました。子供の人権という議論からも、今後、防犯カメラについて議論していくことが大事だと思いました。ぜひご家庭の中でも、これを機にお子さんに聞いてほしいなと思います。