2023年にミャンマーから覚醒剤を密輸入した罪や、監禁・強盗致傷などの罪に問われている中国人の男の判決公判が新潟地方裁判所で開かれた。弁護側は「確実に有罪と言えるのは、道路交通法違反の無免許運転と速度超過のみ。それ以外は無罪だ」として執行猶予付きの懲役1年が妥当だと主張していたが、新潟地裁は男に懲役13年の実刑判決を言い渡した。

中国人の男の裁判 検察側は懲役18年を求刑

道路交通法違反、覚醒剤取締法違反、関税法違反、監禁・強盗致傷の罪に問われているのは中国籍で東京都葛飾区に住む麻雀店経営の男(30)だ。

新潟地裁
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起訴状などによると、男は2023年1月、仲間と共謀し、ミャンマーから2回にわたり国際スピード郵便を使って上越市の集合住宅などに覚醒剤を隠し入れた荷物を送り、覚醒剤合わせて5.4キロを密輸入しようとした罪、また、2023年2月に知人女性らと共謀し、東京都内で20代男性を美人局の手口で脅して車などに監禁、その上で暴行し、5000万円を借りた旨の契約書に署名させ、「とりあえず手持ちの金を出せ」と脅すなど暴行・脅迫を加え、現金約30万円を奪い、男性に全治1週間のけがを負わせた罪、その他無免許運転と速度超過の道路交通法違反の罪に問われている。

今回の裁判では、覚醒剤の密輸について、共謀が認められるか、監禁・強盗致傷については、監禁の有無、共犯者との間に監禁・恐喝の共謀はあったか、暴行・脅迫をしたか、被害者は暴行により傷害を負ったかなどが争点に。

11月26日の論告で検察側は男の一連の行為は反省態度がなく、再犯の可能性が高いなどとして懲役18年および罰金500万円を求刑。

一方、弁護側は「確実に有罪と言えるのは道路交通法違反の無免許運転と速度超過のみ。それ以外は無罪だ」として執行猶予付きの懲役1年が妥当だと主張していた。

中国人の男に懲役13年の実刑判決

そして迎えた判決公判。スーツ姿で青いネクタイを着けて証言台に立った男に対し、新潟地裁の小林謙介裁判長が言い渡した判決は…

「主文 被告人を懲役13年および罰金500万円に処する」

覚醒剤取締法違反と関税法違反事件については、男と共犯者との間に覚醒剤輸入の共謀があったか、男に覚醒剤輸入の故意があったかが争点だったが、新潟地裁は「チャットで共犯者と頻繁にやり取りしていたことやその内容に照らせば荷物の中身が覚醒剤であったことを知らなかったとは到底考えられず、覚醒剤を輸入する上で重要な役割を果たし、共謀共同正犯が成立する」と認定。

また、監禁・強盗致傷事件については、「被害男性や共謀した知人女性の証言から被害男性を監禁した事実は認められ、金品を得る目的で暴行・脅迫を加えたことは認められるが、その暴行・脅迫は被害男性を畏怖させる程度のものにとどまり、現金を受け取ったとは認められず、恐喝未遂罪が成立する。被害男性は男の暴行によってけがを負ったので傷害罪は成立。また監禁及び恐喝の限度で知人女性との間に共謀があったと認められる」とした。

裁判長「短期間に犯罪を繰り返した意思決定は非難に値する」

小林裁判長は、懲役13年に至った量刑についても説明した。

新潟地裁 小林裁判長
新潟地裁 小林裁判長

新潟地裁 小林裁判長:
密輸された覚醒剤が多量で、国内に拡散すれば大きな害悪をもたらす恐れがあった。男が覚醒剤密輸に主体的、積極的に関与し、共犯者と比較してもその関与の程度は従属的とはいえず、重要な役割を果たしている。監禁、恐喝未遂、傷害の点についてみると、美人局を計画的に実行し、被害男性を長時間にわたり監禁した上、暴行を加えてけがを負わせるなど態様は粗暴で悪質。道路交通法違反については、以前から交通違反を多数繰り返し、免許が取り消されたにもかかわらず、何ら意に介さず、安易に無免許運転をしており、常習的犯行。速度超過についても交通規範を遵守する意識が欠如している。

短期間に異なる犯罪を複数遂行して抵抗なく、これらを繰り返した意思決定は非難に値すると厳しく指摘した。

検察側から懲役18年の求刑を受けた際に、「検察側の求刑が重すぎて驚いている。ノートを見ながら話してもいいか、緊張して頭が真っ白だ」と語っていた男。懲役13年の判決や、その理由を聞いて何を思うのだろうか…

弁護側は、控訴するか男と協議して判断する方針だ。

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NST新潟総合テレビ
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