金沢大学は、新たなアルツハイマー病治療薬「ドナネマブ」の投与により、患者の脳内でアルツハイマー病の原因物質が除去されたことを国内で初めて確認した。治療を担当した金沢大学脳神経内科学の小野賢二郎教授は「1年間頑張ってやっていただいて、今回プラーク(原因物質)の除去を確認されたということで、投与を完了になるんです」と述べ、患者に治療確認証を手渡した。
1年間の治療で明らかな成果

ドナネマブは、アメリカの製薬大手イーライリリー社が開発したアルツハイマー病治療薬だ。2024年11月末、国内で初めて金沢大学附属病院で軽度認知障害と診断された白山市に住む70代の女性へ投与が開始された。

その後、この患者は1カ月に1度のペースで薬の投与を受け続け、治療開始からちょうど1年となる11月29日に治療効果を確かめるための脳画像検査を受けた。その結果は驚くべきものだった。

「投与前の方は、こういう大脳皮質と言われているところが赤いんですよね」と小野教授は説明する。画像で赤く見えている部分は、アルツハイマー病を引き起こす原因物質と言われているタンパク質「アミロイドβ」が多く蓄積している場所だ。それが最新画像では明らかに消えている。

「核医学の専門の先生に見ていただいても『除去確認』というお墨付きを頂いた。見事に消えていたということで、投与完了ということでご説明させていただきます」と小野教授は治療の成功を確認した。

患者と家族の安堵
診察室では投与完了の知らせに、患者の家族の涙ながらの拍手が起こった。投与完了を伝えられた患者は、「やっぱり変わった病気、あれあったでしょ?だから怖いなという気も少しあったけど。こうやって色々お話聞くと、ちょっと安心しました、正直なところ」と心境を語った。

患者の家族も「不安でした、ずっと。(薬が)聞かなかったらどうしようかっていう不安もあったし、今、いい結果が出て、すごく良かったなって、本当安心してます」と胸をなでおろした様子だった。

アルツハイマー病治療薬の現状
現在、国内で認可されているアルツハイマー病治療薬は「レカネマブ」と「ドナネマブ」の2種類だ。これらはいずれも、アルツハイマー病の原因物質を除去することで認知症の進行を遅らせる薬であり、認知症が完治する薬ではないという点に注意が必要である。

小野教授は、治療の個別性についても言及した。「この方には上手くいったけども、全ての方にドナネマブが効くわけではないし、あるいはレカネマブという薬があって、その薬が効く方もおられるから、今後どういった方にどちらがいいか、あるいは新しく出てくるお薬がいいのか、そういったことを今後さらに明らかにしてオーダーメイドできる診療につなげていきたい」と展望を語った。
日常生活の変化が患者を勇気づける

患者の認知機能については、小野教授によれば「ほぼ現状維持」であるが、本人からは「散歩に出かけられるようになった」「前向きに考えられるようになった」などの言葉が出ているという。こうした日常生活での変化が患者や家族を勇気づけていると小野教授は話した。

投与完了後も金沢大学附属病院では、この患者を今後数カ月おきに経過観察する予定だ。アルツハイマー病治療の新たな一歩を記した今回の成果は、同様の治療を待つ多くの患者とその家族に希望をもたらすものとなるだろう。

(石川テレビ)
