伝統食品の「奈良漬」。
日本酒の豊かな香りと独特のうま味は、乳酸菌の発酵によるものであることを、奈良先端科学技術大学院大学の研究グループが明らかにしました。
「奈良漬」は、塩漬けにした野菜を熟成した酒粕に複数回漬けこむことで作られる、奈良発祥の伝統食品です。
1300年以上前から食されていたとされていますが、酒粕に漬けているのは“味付け”という側面が強いと考えられ、具体的にどのように発酵しているのかはこれまで科学的に実証されてきませんでした。
そこで、奈良先端科学技術大学院大学の渡辺大輔准教授の研究グループは、老舗2店舗の協力を得て、奈良漬に含まれる微生物とその割合を分析しました。
その結果、奈良漬には特定の乳酸菌が非常に高い割合で含まれているほか、時間が経って熟成された酒粕に何度も漬けこむことで数が増えていくことがわかったということです。
また、一般的に高いアルコール濃度では乳酸菌を含む多くの微生物の活動が弱まる一方、今回見つかった乳酸菌は高いアルコール濃度の方がむしろ元気に育つ性質があり、これが奈良漬の発酵を進めていることを突き止めたとしています。
研究成果について、渡辺准教授は「今回見つかったのは日本酒の製造などで品質を劣化させる“火落菌(ひおちきん)”と呼ばれ忌避されてきた乳酸菌だが、奈良漬の製造では実際に機能している可能性を示した。今後、香りや味がよくなったり、健康によい成分が含またりする奈良漬の生産につながれば」と話しています。