今の仕事を退職しようと考えていた30代の女性は、SNSで「失業保険のサポート」をする業者を知った。
仕事を失った人が生活を維持しながら再就職を目指すための公的支援制度が「失業保険」だ。その業者は「最短で1か月後には傷病手当が出て、失業給付も10か月間に延長できるようにサポートする」と女性に伝え、女性はサポート費用として約20万円をクレジットカードで支払った。
業者は、退職日までに指定したオンライン診療のメンタルクリニックを受診し、うつ病との診断を受けたら、すぐに仕事ができないという内容の書類をハローワークに提出する事などを女性に説明。うつ病と診断されるためのマニュアルまで送ってきたという。
だが、女性はうつ病ではない。心配になった女性は「詐欺にならないか…」と相談してきた。
これは国民生活センターに寄せられた相談事例の一つだ。
こうした、「失業保険の受給額や受給期間が増える」とうたう申請サポートに関する相談が、2025年度は前の年度よりも2.4倍のペースで増えているという。
主な相談内容は、
・申請サポートを依頼すれば受給額が増えると期待したが、実際には増えなかった。
・途中で解約を希望したが、事業者が認めなかったり、違約金を請求された。
・うつ病などメンタルの不調はないのに指定のクリ ニックで受診するよう指示されるなど、不正受給を促すかのような誘導をされた。
というものだ。
40代の男性は、インターネットで失業保険の申請サポートをしてくれる事業者を知り、 WEB会議で面談をしたという。男性は、「社会保障制度を利用すれば最大200万円の失業保険が受給できる。その申請をサポートする」と言われ、約30万円の申請サポート契約を申し込んだ。
その後、事業者から教えられた通りの手順で失業保険の申請を行ったが、事業者が言っていたような給付金はもらえなかったが、事業者からサポート費用の請求を受けているという。
また30代の女性は、退職を考えていた時に、インターネットで失業保険をもらえる期間が長くなり金額も増やすことができるというサイトを見て登録したという。
WEB会議で説明を受けて契約し、サポート費用として約 20万円を振り込んだが、退職しないことになった。そのため、解約を申し出たところ、サポート費用の大部分が違約金になると言われたという。
国民生活センターによると、「最大200万円の失業保険が受給できる」など、申請サポートを利用すれば高額の給付が受けられるかのような、「過度な期待や誤解を招く広告や勧誘」がなされているケースがあるという。
しかし、失業保険の給付はあくまでも行政機関による審査を経て、個別の条件に応じて決定されるものであり、サポートを受ければ誰でも一律にもらえるというものではなく、事業者のサポートに従って申請をしても、思ったような給付金が受け取れないこともあるとしている。
そもそも、失業保険の申請書等の作成や提出を、報酬を得て代行できるのは社労士や社労士法人に限られるという。
無資格の事業者が出来るのは助言に過ぎず、ハローワークでは無料で相談や案内を受ける事が出来るため、国民生活センターは、「事業者を利用しなくとも自分自身で手続きを行う事が可能」と説明している。
また、虚偽の内容で失業保険を不正受給した場合には、受給した金額の最大3倍に当たる金額の返金・納付を命じられ、詐欺罪等の刑事罰の対象になるとして、「絶対に応じないようにしましょう」と呼びかけている。