宮城県栗原市には「長屋門」という建物があります。
主に、江戸時代から明治時代にかけて建てられ、全国各地で見られますが、なかでも栗原市はこの長屋門が今なお500棟以上あるという全国的にも珍しい地域だそうです。
この長屋門を絵本で全国に発信しようという取り組みが進んでいます。

栗原市の田園風景の中に建つ、立派な建物。
これは「長屋門」といって、住まいと門が合わさった武家屋敷などに見られる建築物です。
江戸時代に武家の間で広まり、当時は、限られた身分の人のものでしたが、明治時代以降は、農家など広く一般に普及し、農作業などに使われてきました。

この長屋門をイメージして誕生したキャラクターが…その名も「もんモン」。
そして今、この「もんモン」を主役にした絵本が制作されています。

「もんモン」を生み出したのは、兵庫県在住の編集者、藤本智士さんです。

藤本さんは、20代の頃に、地元・関西でフリーペーパーの製作などから編集者の活動をスタート。
その後、アイドルグループ嵐が日本各地を旅する「ニッポンの嵐」など、地方をテーマに雑誌や本を編集しています。

藤本智士さん
「とにかく日本中旅しまくって、色々自分の実感の中で届けたいものを見つけては表現するみたいなことをずっとやっているので」

そんな藤本さんが、栗原市の「長屋門」に目を付けたのは、2024年、新しい観光コンテンツを見つけて発信する県の事業に関わったのがきっかけでした。

くりはらツーリズムネットワーク大場寿樹さん
「栗原の役場の人が、実は長屋門というのがありすごいと思うけれど、いまいち広がってないみたいな声が集約されて届いた。長屋門のことを一生懸命広めようと頑張っている大場さんという人がいることを聞いて、長屋門の面白さと同時に大場さんの情熱というか、長屋門に対する愛というか、そこに感動した。」

栗原市内で観光案内を行っている大場寿樹さんです。長屋門を案内してもらいました。

くりはらツーリズムネットワーク大場寿樹さん
「聞いたところによると、江戸時代からあるそうです。栗原市内でも結構古い方の長屋門になります。」

こちらの長屋門は現在「カフェ」として利用されています。

くりはらツーリズムネットワーク大場寿樹さん
「ここはカフェにするために、リフォームというか作り変えているので、お部屋という感じはするんですけれど、他の長屋門は無機質というか、もっと合理的というか、小屋みたいなものが多い」

大場さんが「長屋門」の価値に気づいたのは、今から20年ほど前。
当時は、市の「田園観光課」の職員でした。

くりはらツーリズムネットワーク大場寿樹さん
「みんなで地域を見て回って、その時に長屋門っていうの多いんじゃない?というのに気づいた人がいて。」

その後、2009年度に、栗原市が調査を行ったところ、市内に「543棟」の長屋門があることが判明。全国有数の長屋門密集地であることが分かりました。
今も使われていることも大きな特徴です。

くりはらツーリズムネットワーク大場寿樹さん
「家によっては、物置とか農機具を入れたり。時代が変わって農業の機械化に合わせて大型の機械が置いてあったり。だんだん扉も外す家が多くなって、下を軽トラとか車が通れるようにしたり。時代に合わせて変化している。」

栗原市の長屋門を調査している東京大学の林憲吾准教授は、これが、栗原市に長屋門が多く残っている理由ではと話します。

東京大学生産技術研究所 林憲吾准教授
「大正、昭和とずっと作り続けていて、一番新しいものだと平成の2000年に作られたものがある。栗原の人たちの建築の文化というか、暮らしの中にこの建物っていうのが常に身近な存在としてあり続けたから、今この数を維持できているということじゃないか。」

地域の歴史や文化を伝える長屋門を観光資源として生かそうと、大場さんは市の職員を辞めた後も、試行錯誤を続けてました。

くりはらツーリズムネットワーク大場寿樹さん
「なかなか僕らとしてもいいものなんだけど、どうしたら皆さんに見てもらったり、ご案内できる仕組みが作れるかなっていうのは、実はもうずっと手探りな感じで。」

藤本智士さん
「やっぱり地元の人がどれだけ熱量があって、これまでどんなことを蓄積されてきたかっていうのはすごく大事なので、あとは僕でも少しお手伝いさせてもらったらやれるんじゃないかなってすごいワクワクしましたね。」

あとは印刷・製本という段階まで来ました。

くりはらツーリズムネットワーク大場寿樹さん
「とにかくもんモンがかわいいので、もんモンのかわいらしさを通じて、長屋門に対して関心とか意識が集まってくれるといい。」

藤本智士さん
「この絵本を日本全国どこかで手にとってくれた人が、この聖地である栗原にいずれ訪れてくれたらいいと思いますし、宮城のことをどんどん知ってもらう、その入り口に、まさに門ですから。門戸を開く、その一番スタートのところになってくれたらいい。」

現在制作中の絵本「ひらめけ!もんモン」は、12月21日に仙台駅前AERで開催される、全国から自主制作本を集めたイベントで、お披露目、発売予定です。

イベントでは、絵本の読み聞かせのほか、もんモンのグッズも販売予定です。

今後もんモンが、宮城・栗原に関心を寄せるきっかけ、いわば、入口・門となるのか注目です。

仙台放送
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