宮崎市に本社を置く宮崎ケーブルテレビグループが、新たな事業として魚の陸上養殖に取り組むことを発表した。漁獲量の減少や将来のタンパク質不足といった社会課題に対応するため、既存のケーブルテレビ事業で培ったインターネット技術を餌やりや水質管理に活用する。
ケーブルテレビ技術を養殖に活用
宮崎ケーブルテレビグループは、海と同様の生育環境を陸上で再現する「魚の陸上養殖」に乗り出した。インターネットを駆使するケーブルテレビ事業で培った既存の技術を、魚への餌やりや水質管理といった養殖プロセスの効率化に生かす。

「陸上養殖」が行われるのは、宮崎ケーブルテレビの敷地内にある駐車場の一角に設置された水槽。天候に左右されることもなく、安定して養殖が行える。

11月26日には、近くにある祇園こども園の園児が稚魚を水槽に放流した。

放流されたのは、成長が早い「タマカイ」と高級魚「クエ」を掛け合わせたハイブリッド魚「タマクエ」の稚魚。現在は約70グラムだが、約1年で、出荷可能な1キロほどのサイズに成長することから、新たな養殖魚として注目を集めている。
将来の食糧危機への懸念から「陸上養殖」
「陸上養殖」の準備は2023年9月から進められてきた。

宮崎ケーブルテレビの池田浩司さんは、陸上養殖事業開始の背景について「日本の漁獲量が激減していることと、将来、我々の食べるタンパク質が不足する危機を知り、小規模の循環式装置であれば当社にもできるのではと思い、トライアルで開始した」と説明した。

池田さんは、陸上養殖において「育てやすさや成長の速さ、おいしさは必要不可欠の要素だが、タマクエは全て兼ね備えた魚」と話している。
3年での黒字化目指す

水槽は閉鎖循環式を採用し、魚ごとに異なる適した海水の温度や濃度を効率よくコントロールすることで、魚が成長しやすい環境を整えることが可能だという。総事業費は、約2,500万円で、3年での黒字化を目指す。

池田さんは今後の展望について「当社は2026年9月に開局30周年を迎える。まずはそこで初出荷を迎えられるよう育てていきたい」と語った。さらに、「トライアル事業が成功した際には、新しい魚種や魚介、装置の増設も含め、地元宮崎に貢献できるようになりたい」と意欲を示した。
九州で盛んな「陸上養殖」
陸上養殖は、陸地に海と同様の生育環境を整備した養殖場を設置し魚などを養殖することだ。陸上養殖には「かけ流し式」と「閉鎖循環式」の2種類があるが、水を循環して養殖を行う「閉鎖循環式」が環境負荷も少なく近年注目を集めている。

陸上養殖を行っている数を都道府県別で見ると、沖縄県が最も多く186件。次いで大分県が54件、鹿児島県が34件となっていて、九州で盛んに行われている。宮崎県内でもヒラメやトラフグ、クルマエビ、アワビなど11件、陸上養殖が行われている。
全国的に漁獲量が激減する中、食料の安定確保に向けた解決策の一つとなるのか今後の発展が期待される。
(テレビ宮崎)