全国大会を辞退した、仙台育英高校サッカー部の「いじめ」問題。
仙台放送は、学校と複数の保護者に取材を続ける中で、学校が公表している内容と、保護者の認識には“ズレ”があることがわかってきました。

仙台放送は学校に文書で質問しましたが、学校は「回答を控える」としています。
仙台育英サッカー部で何が起きていたのか。取材内容をもとに整理します。

11月2日。仙台育英高校サッカー部は、全国高校サッカー選手権・宮城県大会で優勝し、2年ぶりに全国への切符をつかみました。

優勝後のインタビュー 城福敬監督(当時)
「(選手たちは)本当によくやってくれたと思いますし、実は私も今年度をもって引退しようと思ってますので(最後に優勝できて)私は幸せ者だなと思っています」

しかし、この喜びの直後、チームの内側の深刻な問題が一気に表面化します。

学校によりますと、いじめを受けていたのは3年生の部員。
1年生だったおととし春ごろから、主に同じ学年の部員から、不適切な言動を受けていたとされています。

学校は、県大会が行われていた10月、「いじめ重大事態」として調査を開始。
11月12日、いじめの調査結果を公表しました。

「顧問団と生徒の人権意識が不十分だった」などとして、“構造的いじめ”と結論づけています。
“構造的いじめ”とは、一体どういう状態なのでしょうか。
聞き慣れない言葉ですが、学校が認定した行為は次のようなものです。

学校が認定した「構造的いじめ」
・部員同士で頭を丸刈りにするよう強要・同調圧力
・遅刻などに、重い罰則
・連帯責任の文化が定着
・指導者は罰則を認識しながら是正しなかった

こうした行為が重なり、厳しい規律がいじめを生む「構造」になっていた。
つまり、「個人の問題」ではなく、部の体質として続いていた、「構造的いじめ」というのが学校の説明です。

学校は、出場が決まっていた全国大会を辞退し、年内の対外活動をすべて停止しました。

さらに11月18日、監督とコーチ兼部長の2人が辞任届を提出し受理されました。
いじめを受けた生徒には直接、謝罪したということですが、そもそも何について謝罪したのか、具体的な内容は明らかにされていません。
辞任の理由についても学校は「一身上の都合」と説明するにとどめています。

こうした中、現役部員たちからも、学校に対して声が上がっていたことがわかりました。

11月10日付で、1・2年生の生徒たちが提出した要望書です。
そこには「説明の透明性を求めます」といった声や、「対外試合再開の道筋を示してください」といった訴えが記述されています。
入学前の出来事で、3年生のいじめとは無関係だったとされる、1・2年生の不安と戸惑いが表れています。

取材に応じた保護者からも、学校の対応をめぐり不満を訴える声が聞かれました。

3年生の保護者
「まず構造的いじめの原因がなんだったのか。規律に対しての連帯責任への罰則というようなものが構造的いじめの根幹というふうに結論付けている。でも、その規律を作ったのは選手ではなく指導者だと思う。今回の裁定・ペナルティがあまりにも子供たちにとってばかり大きすぎると私は感じている」

2年生の保護者
「1・2年生が入学する前の事案なのでその時は無関係だったと(学校が)言わないと、いかにも育英サッカー部全員が(いじめを)見ぬふりして、加担していたように捉えられてしまう。そこらへんは一言(学校が)発してもらわないと、彼ら(1・2年生)が第二の被害者になっている」

学校側の説明と保護者側の受け止めには、「ズレ」が生じています。

保護者側の主な疑問です。
・いじめの具体的な内容が十分に説明されていない
・情報共有や初期対応に問題があったのではないか
・聞き取り調査は公正だったのか

保護者の一部は、追加調査と説明の徹底を学校に求めていますが、学校側は「調査中」として詳細は伏せています。

そこで仙台放送は、これまでの取材をもとに、正確な事実関係を確認するため、学校に「質問状」を送りました。

主な確認点は、
・指導者の初期対応が適切だったか
・いじめの相談内容がどう共有されていたのか
・聞き取り調査の進め方 などについてです。

しかし、学校の回答は、「特定の個人に関わるため、回答は控える」というものでした。
そして、「学校の公式見解・説明は、ホームページに公表している通りです」としています。

学校は、外部講師による人権研修を年内に4回実施し、新しい監督・部長のもとで、部内ルールの見直しなど、再発防止策を進めることにしています。

ただ、部活動の本格的な再開の時期は明らかにされていません。

全国の舞台を目前に、直面した問題。
部員と保護者の心のケア、学校の説明責任は問われ続けています。

仙台放送
仙台放送

宮城の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。