所有者の高齢化などにより手入れされず放置される竹林。土砂災害リスクを高めるなど社会問題化する中、メンマを作って竹林整備を進める活動が注目されている。
市職員がメンマ作り?
良質な地下水と豊かな自然が自慢の静岡県裾野市。
ここでNPO法人みらい建設部の宮坂里司さんが取り組んでいるのがラーメンでおなじみのメンマ作りだ。

「食べた人が『美味しい』と言ってくれるのを想像しながら作っている」と話す宮坂さんだが、これが本業というわけではない。
普段は裾野市の職員として裾野駅や岩波駅周辺の街づくりに関わる仕事をしている。
一体なぜ市の職員がメンマを作っているのだろうか?
放置竹林の現状を知ってほしい
これまで、街づくりや自治会の在り方などについて地域の人たちと勉強会を重ねて来た宮坂さん。
その中で多く寄せられたのが放置された竹林をめぐる問題だった。
「(所有者も)人に迷惑をかけたくないという気持ちはあるが『どうしようもない』と言う。放っておけば竹は減らずにどんどん広がっていくので誰かが何とかしなければいけない」と話す宮坂さんが案内してくれたのはメンマの加工場からすぐ近くにある竹やぶだ。
元々はひとり暮らしの人が所有していたものの、自分では整備できずに荒れてしまい、隣にまで竹が伸びていくため宮坂さんたちが管理しているという。
放置竹林は土砂崩れを引き起こす要因となるほか、他の植物の成長を妨げることにつながり、いま社会問題化している。
このため、竹を伐採すると共に放置竹林の現状を知ってもらおうと裾野産のメンマ作りを始めた。
伐採した孟宗竹は渋みを抑えると同時に長期間保存できるよう塩漬けにした後、短冊状にカットした上で今度は2日間にわたって塩抜きする。
そして、砂糖や醤油など独自にブレンドした調味液で40分ほど煮込めば完成となる。
この味にたどり着くまでは試行錯誤の連続で、当初はカレー味を試してみたものの、カレーの味しかしなかったため”幻”に終わったそうだ。
情熱とアイデアに惹かれる仲間
一緒にメンマ作りに取り組むのはいずれも別の本業を持ちつつ宮坂さんの情熱に惹かれて集まったメンバーで、柳原和広さんは「止まっていられない人。毎日走り続けているようで、いつも何かしている」と宮坂さんを評する。
また、前田稔さんは「おもしろいアイデアを持っている。おもしろいという共感があるから一緒にやっている」と笑顔を見せた。
2019年にメンマの商品化に成功してから6年。
国内で流通しているメンマのほとんどが中国産と言われる中、現在は年間約200kgを製造・販売し、売上金は竹林を整備するために使う農機具の購入費に充てるなど好循環を実現している。
市役所の仕事に加え、竹林整備にメンマ作りと多忙な日々を送る宮坂さんだが「不思議と大変さは感じていない。時間はもちろん使うが大変だと思うよりむしろ楽しみの方が大きい。みんなと会って話をして、新しいことがアイデアとして出てくる。それを実現していくという繰り返しがすごく楽しい」と苦にしている様子はない。
広がりみせる活動の輪
宮坂さんたちの活動は放置された竹林整備のモデルケースとなり、今では約200団体が名を連ねる純国産メンマプロジェクトの立ち上げへとつながっていて、「(竹林の整備は)終わりがない。竹は放っておくと横にも上にも伸び、地下でつながっている。このつながりに負けない人のネットワークで、竹と一緒に仲良くケンカしないように地域の中で活動していきたい」と意気込む。
“おいしく食べて竹林整備”をモットーに、宮坂さんは地域の課題解決に向けてこれからも走り続ける。
(テレビ静岡)
