相次ぐクマの出没や被害。
専門家によると、自然界のクマは、冬眠前には“大食漢”になるという。
さらに、“食生活に変化”が起きている可能性があると指摘する。

自然界のクマは、冬眠前には“大食漢”に

人の生活圏でのクマ出没が19日も止まらない。

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秋田市の千秋公園周辺では19日朝、クマの目撃情報が相次ぎ、近くの高校は臨時休校に追い込まれた。

降りしきる雪の中、警察は周囲をパトロールし、住民に注意を呼びかけている。

冬眠シーズンを前に、活発化するクマの行動。

そうした中、上野動物園がSNSに投稿した内容が話題を集めている。

冬眠に耐える体づくりのため、ツキノワグマが1日に食べるエサの画像。
サツマイモ、小松菜、ニンジン、ミカン、柿、リンゴ、キウイ、カボチャなど、野菜や果物に加え、落花生、煮干し、クルミなど全15種類。
1日あたり約1万2000キロカロリー分だという。

あくまでも飼育下のツキノワグマの一例だが、夏のエサと比較すると、約3倍の量を与えているという。

一方、ヒグマの場合はどうなのか?
現在、ヒグマが冬眠に入るための準備をしている北海道の施設では…。

十勝サホロリゾート ベア・マウンテン 坂出勝園長:
キロ数でいうと、今(エサを)MAXで9kgぐらい食べてるかな。一番大きいクマで400kgちょっと超えたぐらいのクマがいますね。

冬眠を前に、飼育下のヒグマも多くのカロリーが必要で、たくさんのエサを食べていることが分かる。

こうしたクマの“冬の食欲”だが、専門家は“飼育下と野生では量に違いがある”と指摘する。

岩手大学農学部・山内貴義准教授:
飼育下であれば、一定量いつも与えられているので、それほど大量に食べるってことはない。野生だと、かなりとてつもない量のエサ資源を、冬眠前に食べることになる。例えばドングリとかブナの実であれば、1シーズンに100kg以上食べることになるといわれている。

自然界のクマは、冬眠前には“大食漢”になるという。

ニワトリ、イヌ、鯉…そして牛も

さらに“食生活に変化”が起きている可能性が…。

岩手大学農学部・山内貴義准教授:
基本的には植物食なんですけど、自分の生活している環境によっては肉食の方に転食したり。ツキノワグマは“魚食べない”って言われていたんですけども、そのうち味を覚えてしまって。

10月には、山形県でクマが鶏舎に侵入し、中にいた地鶏を食い荒らす被害が発生。

愛犬がクマに襲われる被害も相次いでいる。

そして先週、新潟・小千谷市では…。

記者リポート:
こちらが被害にあった養鯉池。養鯉池の周りにはうろこなどの残骸があり、あちらの林でクマの目撃があったということです。

「泳ぐ宝石」といわれる特産のニシキゴイがクマに襲われた。

20cmほどのニシキゴイが複数匹食べられたとみられている。

そんな中、北海道・標茶町の牧場では、戦々恐々となる事態が…。
17日朝、放牧されていた牛1頭が血だらけの状態でいるのを従業員が発見した。

牛の足には約40cmの傷があり、クマに襲われた可能性が出ている。

牧場主・中村吉平さん:
自然になるケガでは絶対ないですし、クマとかしかありえないというようなケガだった。

標茶町では過去に、66頭ものウシを襲い続けたヒグマ「OSO18」の苦い記憶が残っており、「再来か」と住民に不安が広がっている。

冬を前に大食いで多食化し、危険度がさらに増しているクマ。
山でのエサが不足していることもあり、専門家は引き続き注意が必要と呼びかけている。

岩手大学農学部・山内貴義准教授:
今年はかなり長引きそうかなって気がしますね。12月いっぱいまでは警戒する必要があるし、場合によっては年をまたいで出没する可能性も考えられる。
(「イット!」11月19日放送より)