おにぎりの消しゴムが話題

文字や絵を書くときに欠かせない文房具の一つが、消しゴム。最近では、文章の一文字だけを消せる「多角消しゴム」などが製品化され、編集部でも取り上げた。

(参考記事:カドで消してもカドが出る…1つに45個もある“多角消しゴム”はいつまでも1文字だけを消せる

こうした中、今度は使うのが楽しくなる消しゴムがTwitterに登場し、注目を集めている。

おにぎりの消しゴム

消す過程で好きな形に整えたり、
具の中身が何か分かるまでのワクワク感を味わえます。

Twitterユーザーの有(@yuu99jp7)さんが投稿したのは、おにぎりの形になる消しゴム。名前はそのまま「おにぎりの消しゴム」で、元の形は正方形なのだが、使い方によって、三角むすびや丸形など、本物のおにぎりのような形にできるという。

「おにぎりの消しゴム」(提供:有さん)
「おにぎりの消しゴム」(提供:有さん)
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外観からだと白黒だけで変哲のないように見えるが、実は内部に具材が隠れている。

この作品はTwitterに投稿されると瞬く間に話題となり、既に22万以上(10月16日現在)のいいねを集めている。他のユーザーからは、「消しゴムってどこまで使えば良いのか分からなくなるけど、これがは楽しいな」「あったら欲しいなぁ」などの反応も寄せられた。

たしかに楽しみながら使えそうだが、有さんはなぜ、おにぎりの消しゴムを制作したのだろう。他にも独創的な作品を多数、Twitterで発表しているが、理由はあるのだろうか。作者本人に聞いてみた。

実は一部が合成のアート作品

ーーおにぎりの消しゴムはどのように制作した?

実は全てが実物なわけではありません。僕の作品はコンセプトアートの部分もあり、現物を作成したもの、一部を合成したもの、あったらいいなというアイデアを提案するものがあります。

おにぎりの消しゴムは一部を合成したもので、お米と海苔に当たる部分は実物ですが、中身の具材は描いたイラストを合成しています。実際の制作の流れは、市販品の消しゴムの形を整えて、海苔の部分を塗料で着色します。これを撮影したものを専用ソフトで図案にし、具材のイラストを不自然に見えないように合わせました。

実は具材部分はイラストを合成したという(提供:有さん)
実は具材部分はイラストを合成したという(提供:有さん)

ーーなぜ、おにぎりを消しゴムにしたいと思った?

日常的に作品のアイデアをためているのですが、消しゴムを使ったとき、こする行為が形を整える行為として置き換えられると思ったのがきっかけです。白くて形を整えられ、削る行為を楽しくできるものは何だろうと考えて、おにぎりが浮かびました。

ただ、それだけだとインパクトが弱いので考えると、おにぎりを食べる行為はある意味で削る行為だなと思い、消しゴムを削ることで具が見えるようにしようと思いました。


ーー消しゴムの大きさや具材の種類は?

大きさは縦横が16.5ミリで、奥行が11ミリとかなり小さめです。元は市販の消しゴムなので、質感などは一般的な消しゴムと変わりません。具材はTwitterに投稿した画像の左から、梅干し、鮭、おかかとなっています。

まさかの製品化の可能性も

ーー実際に購入したいという声もあるが?

僕の作品は制作物なので、通常は販売はしていません。ただ、おにぎりの消しゴムについては、実現するかどうかは分かりませんが、製品化のお話をいただきました。生産となれば、Twitterで報告させていただきたいと思います。作品はコンセプトアートの部分もあるとお話しましたが、作れるものは極力作りたいとも思っています。


ーー製品化が実現したときは、どう使ってほしい?

普通の使い方をしてもいいですが、こすって形を変えられるので、理想のおにぎりを表現しても面白いかもしれないですね。僕は海苔を全面に巻いているおにぎりがすきなので、周囲を全て黒く塗ってしまうかもしれません(笑)。

製品化の可能性があるという(提供:有さん)
製品化の可能性があるという(提供:有さん)

ーーなぜ、独創的な作品を投稿している?

僕は美術系の学校でデザインを学んでいる者です。新型コロナウイルスの影響で課題が出なくなったのを機会に、できることをやろうと3月ごろから作品を投稿しています。もともとは機能的、便利なものがいいものだと考えていたのですが、それだけだと考えが貧しくなると思い、面白さや人を引き付けるものを作り出せないかと、制作しています。


ーー作品制作で重視していることはある?

作品のクオリティ、写真の取り方、SNSに投稿する際の文章でしょうか。特に文章はくすっと笑えたほうが作品の魅力が引き立つ気がします。例えば、5月17日に投稿した「スプーンの浮き輪」の投稿文には「スプーンがお皿の中で溺れない様に、小さな浮き輪を作りました。」と書きました。

汚れない、沈まないでも伝わりますが、溺れないのほうがユーモアがある。SNSの投稿も含めて一つの作品になっているような気がします。

「スプーンの浮き輪」で作風の幅が広がったという(提供:有さん)
「スプーンの浮き輪」で作風の幅が広がったという(提供:有さん)

ーーお気に入りの作品は?

スプーンの浮き輪か、9月27日に投稿した「標本チョコレート」ですね。これは実物の作品で、パッケージは紙で自分で作ったほか、チョコレート部分は3Dプリンタで原型を作り、上からパテを盛り、削って作りました。もちろん、実際のチョコレートとしては食べられません。

僕は昆虫が好きですが、虫は気持ち悪いと思う人も多い。ただ、きらきらした一部分を抽出すれば美しいと感じてもらえることもある。そんなことを表現できたので、お気に入りです。

お気に入り作品の「標本チョコレート」(提供:有さん)
お気に入り作品の「標本チョコレート」(提供:有さん)

普遍的な存在になれる作品を作りたい

ーー今後の目標を教えて

Twitterアカウントでは、機能的ではない面白いものを投稿していますが、将来的には機能性もありつつ、生活に溶け込むものを作りたいですね。理想はお茶碗とかウォークマンのように、普遍的な存在になれる作品です。柔軟な発想ができるデザイナーになれればと思います。


ーー最後に何か伝えたいことはある?

学生の中には、コロナの影響で思うように学べない人がいることは伝えたいです。僕は学校で既に技術を学んでいたので、作品を作ることもできますが、入学間もない状況でコロナ禍に見舞われて、授業を受けられずに悩んでいる人もいます。

Twitterでは「みんながやれることをやればいい」という意見もありますが、そうはできない都合の人もいること、動けないことは決して悪いことではないことは伝えたいですね。

作品の一つ「時間の経過で香りが変化する線香」(提供:有さん)
作品の一つ「時間の経過で香りが変化する線香」(提供:有さん)


おにぎりの消しゴムは一部が合成だったが、実際に製品化される可能性もあるようだ。機能性に捉われるのではなく、作品としての面白さも大切にする。このような経験から、ヒット商品が生まれるのかもしれない。有さんの今後の活躍に期待したい。

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プライムオンライン編集部
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