愛媛県砥部町の伝統産業・砥部焼の原料となる“陶石”の供給が突然停止された問題で、窯元でつくる組合は18日に臨時総会を開き、今後の原料の確保のため産地の「山」を含め、採掘事業を業者から譲り受ける方針を決めました。砥部焼の職人たちにとって陶石は「命」。組合に在庫として残るのは半年分で、尽きる前の事態の収束を目指します。

岩田製陶所3代目・岩田健二さん:
「(陶石は)命ですよね。原材料ですので。この砥石がとれなかったら品物ができないということで、生活もできない」

砥部焼の原料として欠かせない「陶石」。しかし町内で唯一採掘・販売していた伊予鉱業所が、社長の体調不良を主な理由に10月末で受注をストップしました。まさに砥部焼の存続が危ぶまれる事態。このため約70軒の窯元で作る砥部焼協同組合が臨時総会を開きました。

砥部焼協同組合・松田啓司理事長:
「砥部焼の歴史、根幹に関わる原材料の問題です。砥部焼として前向きによりよい方向に解決していきたい」

臨時総会では今後の原料確保に向けた対策が話し合われ、採掘が止まった産地の山を含め、伊予鉱業所から組合が採掘事業を譲り受ける方針を賛成多数で決めました。

松田啓司理事長:
「原材料があるから産地の形成がされたというところで、地元で出てくる陶石が重要だという認識が組合員にはあったと思う」

採掘権などの取得にかかる費用は約3600万円。組合員の出資金を増額して募ることにしていて、今後は埋蔵量の調査のほか、経営体制も検討するとしています。組合に在庫として残る陶石は半年分にあたる約30トンのみ。尽きる前の事態の収束が次の目標になります。

昭和中期に創業した砥部町の「岩田製陶所」。湯呑や皿など唐草文様を特徴とした作品を基調に、手作り・手描きにこだわる老舗の窯元です。職人は家族の3人です。

3代目・岩田健二さん:
「砥石を砕いたのを整形してもらって、うちは仕入れるわけです」

総会で山の購入は決まったものの、課題として依然残るのは安定供給。3代目の岩田健二さんは「有田の天草陶石など、ほかの産地の原材料の量を増やすなどして作るようになると思う」と予想するものの、「手作りがしにくくなるかもしれない」とこぼします。

主にろくろで形づくりを担当するのが2代目の貞夫さん。「手がぶれないよう、息を止めて形をつくる」。半世紀以上に渡り変わらず続けてきた匠の技です。代わりの原料では思い通りの土にならず、手作業での成形が難しくなると懸念しています。


2代目・岩田貞夫さん:
「もうこれ困ったなと。生命線やけんな陶石というのは。陶石なかったら砥部焼じゃなくて焼き物できんなる。(砥石の)配分を変えたら、砥部焼の今のいろんな良さがなくなる」

砥部の陶石は砥部焼ならではの重み・厚み・色合いなど、独特の魅力を生み出す源。職人たちのこだわりは強いものがあります。

3代目・岩田健二さん:
「せっかく地元で取れている砥石ですから、よその産地の陶石を混ぜて使うこともあるでしょうけど、できれば砥部の陶石を使って焼き物を作るという方法を今後も続けていきたい」

砥部焼の未来をどうつないでいくのか。持続可能な産地づくりへ試行錯誤が続きます。

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