寒さとともに私たちの体に病のリスクが忍び寄る。特に注意が必要なのが、心臓に関する病気だ。冬は心筋梗塞、狭心症、心不全といった心臓病が多くなると専門医は指摘する。
寒暖差が心臓に負担…死亡率は夏の1.5倍
心臓に血液を送る冠動脈が詰まり、心臓の一部が壊死してしまう「心筋梗塞」。冠動脈が狭くなり、血流不足から息苦しさなどを引き起こす「狭心症」。そして、心臓の機能が低下し、全身に十分な血液を送り出せなくなる「心不全」。これらが冬に増える主な心臓病である。
国の統計によると、心臓病による死亡数は1月が最も多く、次いで2月、12月と冬の時期に集中している。その数は、夏場の約1.5倍にも上るという。

福井大学病院・循環器内科の池田裕之医師は「寒暖差が心臓に負担と書ける」と指摘する。
冷え込み厳しい明け方は発症リスク高い
暖かい場所から寒い場所へ移動すると、血管が収縮して血圧が急上昇する。この血圧の急激な変動が、心臓に大きな負担をかけるのである。
特に危険なのが、冷え込みが最も激しくなる明け方だ。この時間帯は発症リスクが高まるため、注意が必要となる。
また、冬場は風邪やインフルエンザ、コロナウイルスなどの感染症が心不全を悪化させるケースも多く見られるという。感染対策は心臓を守る上でも重要だ。
さらに、冬は空気が乾燥しているのに加え、暖房を使用することもあり気づかないうちに脱水症状に陥ることもある。「体内の水分が不足すると血液が濃くなって血栓ができやすくなる」と池田医師
日常生活での予防策
では、具体的にどのような点に気をつければ良いのだろうか。
まず、起床時の工夫について池田医師は「タイマーを使うなどして暖房を上手に使い部屋の温度差をなくすのが一つ」とアドバイスする。起床前に部屋を暖めておくことで、急激な温度変化を避けられる。
さらに、目が覚めてもすぐに起き上がらず、少し落ち着いてからゆっくりと体を起こすことも大切だという。
無理な雪かきも心臓に負担
これから本格化する雪かきにも注意が必要だ。
「無理な雪かきとか除雪は控えた方がいい」と池田医師。「頑張ってしまって心臓に負担をかけて心不全が悪化するケースもある」
特に心臓に持病がある人は、無理をせず、一人ではなく複数人で作業することが望ましい。
過度な飲酒や入浴前の飲酒は高リスク
食生活の乱れも血圧の変動に大きく影響する。塩分の多い食事は血圧を上昇させ、心臓への負担を増やす。推奨される1日の塩分摂取量は6g以下だ。
また、過度な飲酒は狭心症を引き起こす可能性があり、特に入浴前の飲酒は血圧変動や脱水のリスクを高めるため危険だ。年末年始の忘年会シーズンは特に注意が必要である。
過度な飲酒は狭心症を引き起こす可能性があり、特に入浴前の飲酒は血圧変動や脱水のリスクを高めるため危険だ。年末年始の忘年会シーズンは特に注意が必要である。
自分の体を守るために
さらに池田医師は「日頃からの血圧を知っておくっていうことも大事」だという。

今年、血圧のガイドラインが見直され、新たな基準が設けられた。年齢を問わず、家庭で測る血圧の目標値は「125-75未満」である。
日頃から毎日決まった時間に血圧を測り、自分の体の状態を管理することが重要。

特に冷え込みの激しい早朝のジョギングやウォーキングはなるべく控え、気温が上がってから、寒暖差をなくすような服装で無理なく行うことが大切だ。
本格的な冬を前に、日常生活を見直すことで病のリスクを避けよう。
