共和党重鎮が早くも敗北宣言「バイデン氏が勝つ」
2週間後に迫るアメリカ大統領選を前に、共和党内で敗北を見据えた動きが顕著に現れている。トランプ大統領の劣勢が変わらないことから、共倒れを回避するため、距離を置く“トランプ離れ”が加速化しているのだ。
大統領選と同時に行われる連邦議会選挙(上院33人・下院435人)でも、民主党の優勢が伝えられている。トランプ大統領と親しい共和党重鎮、リンゼー・グラム上院議員は15日、「バイデン氏が勝利する可能性が高い」と述べた。グラム氏は、現在最高裁判事の人事承認に向けた公聴会を行う上院司法委員会の委員長。注目が集まる公聴会の場でわざわざトランプ大統領に不利な発言をしたことから、地元メディアは“トランプ離れ”として大きく取り上げた。
共和党の牙城と考えられてきたグラム氏の地元、サウスカロライナ州は大接戦の様相を呈している。グラム氏はトランプ大統領の敗北を見据えた発言で、穏健派をとり込み自身の生き残りを狙ったとみられる。
この記事の画像(7枚)また、同じく共和党でネブラスカ州選出のベン・サス上院議員が、地元有権者に向けて「トランプ大統領は独裁者の尻にキスをしている」と批判した記録が流出した。
これに対し、トランプ大統領は18日、ネバダ州での演説で「馬鹿が何人かいる」と猛反発。再選に向けて結束を呼びかけたが、地元メディアは、同様の動きは党内で広がっている、と指摘する。
激戦州でも“トランプ離れ”の動きが加速
上院議員によるこれらの動きは、選挙区で実際に起きている有権者の“トランプ離れ”を反映したものに他ならない。
「私は共和党員だ。退役軍人だ。私はバイデン氏に投票する」
激戦州が予想されるペンシルベニアの幹線道路沿いに設置された看板。共和党員が自身の名前と顔写真入りで、本来“政敵”であるバイデン氏への投票を呼びかける内容だ。同様の看板は、州内に数百カ所に設置されている。
この運動に参加するマリー・ディックマンさんは、長年、共和党を支持してきたが、この4年間のトランプ大統領の言動や振る舞いをみて、不支持を決めたという。
マリー・ディックマンさん:
「トランプ大統領の新型コロナウイルス対策は、この国に悲劇をもたらした。彼は、マスクの着用は感染リスクを下げるという科学的な見地を無視している。あまりに傲慢だ。トランプ大統領は、ナルシストであり、エゴイストだ。
アメリカはかつて世界の危機管理をリードする存在だった。しかし、この政権は対処を誤った。世界で失ったリーダーシップを回復するのには、彼が選挙で負けたとしても、非常に長い時間がかかると思う。
私はこれまでずっと共和党員だったが、今は保守派があまりに極端になってしまった。だから、共和党にいることが不安になった。バイデン氏は真面目でしっかりしている。トランプ大統領のように愚かなことはしない」
白人労働者「もう支持できない」 逆転劇再現は困難か
不支持は、2016年の選挙でトランプ大統領の勝利を決定づけたラストベルト(さびた工業地帯)の白人労働者階級の間にも広がっている。
州内の金属加工工場に勤務するスカイラー・フィッシュさんは、前回の選挙でトランプ大統領の経済政策に期待し、支持した。しかし、この4年間で地域経済は改善しなかった、と話す。また、人種問題でのトランプ大統領の対応に違和感を覚え、バイデン氏支持を決めた。
スカイラー・フィッシュさん:
「トランプ大統領に完全に失望したわけではない。まだ支持している部分も残っている。しかし、人種問題への対応を見ると、もう支持はできない。私の周りには、そういう同僚が大勢いる」
同僚の一人もこう語る。
「自分の考えと完全に一致しない候補者のために、わざわざ投票する意欲はないよ」
身内からの離反の動きに加えて、今回の選挙では、前回に比べて、投票先を決めていない有権者が圧倒的に少ないとの調査結果も出ている。
逆転劇の再現は、より困難な情勢となっている。
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【執筆:FNNワシントン支局 瀬島隆太郎】
【表紙デザイン:石橋由妃 】