警備員が監視…詐欺拠点か
経済の失速と共に治安は悪化し、その隙間に入り込んだのが中国系の犯罪組織だ。
中華系レストランなどが並ぶエリアを車で走ると、団地のような建物の出入口で多くの警備員が周囲を監視していた。
詐欺拠点の多くは警備員を雇い、出入りする人はもちろん、メディアや当局の動きを監視しているという。
「ここは車から絶対に降りない方がいい」
現地コーディネーターの言葉がその場所の危険さを物語っていた。
建物内には複数の人影があり、上半身裸の男性や、監視員なのか、棒のようなものを持った人物も確認できた。詐欺グループは、このような外部との接触を遮断した空間で活動しているとみられている。
男性が監禁されていた2階建ての建物
シアヌークビルを訪れた目的は、日本で拉致された男性が監禁されていたという場所の調査だ。
GPSの位置情報を頼りに現地に向かうと、男性の証言と特徴が一致する2階建ての建物があった。
しばらく観察していると、複数の車が止まり、人の出入りが続いていて、現在も何らかの活動をしていることが伺えた。
何より驚いたのが、その場所が住宅地に溶け込んでいたことだ。建物の前では、小学生ぐらいの子供たちが楽しそうに遊んでいた。
近隣住民は「詐欺拠点ならもっと大きい建物はずだ」と語る。
住民も気付かないほど、拠点は巧妙に隠されている実態が見えてきた。
月120万円と高待遇も、過酷な罰金制度…
男性がいた建物は6LDKでバルコニー・プール付きで、食事は三食保証されていたという。
男性は警察官などを装ってウソの電話をかけさせられ、報酬は日本円で月120万円だったとしている。
しかし、遅刻やけんか、無断欠勤には多額の罰金が科せられ、実際は管理側に金を搾取される仕組みだったと話す。
この拠点にいたのは数日間で、その間にだましとった金額は0円だったと話す男性。その後、自力で脱出し、タクシーで日本大使館に駆け込んだ。
「報酬がなくなり、マイナスになるまで見えた。命がいくつあっても足らない」と実態を明かす。
日本がODAで支援してきた街
一流リゾート地を目指していたシアヌークビルは、わずか10年ほどで「廃墟だらけの犯罪都市」として悪名を馳せることとなった。
街はさびれ、その治安の悪さから人が寄りつかない。犯罪者にとっては都合の良い場所だと感じた。
今回取材した日本人男性は運良く脱出できたというが、この街で監禁されたら、逃げ切るのは容易ではない。
シアヌークビルは、日本がODA(政府開発援助)で港湾設備を整備してきた街だ。こうした場所で日本人が犯罪に巻き込まれるのを防ぐため、対策が急がれる。
(FNNバンコク支局 杉村祐太朗)
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