罰則つきの条例を都議会で提案へ
この記事の画像(7枚)「一個一個に罰を科すより、罰のある条例で自制を促していきたい」
こう話すのは都議会最大会派、都民ファーストの会の伊藤悠都議だ。次の都議会定例会で、新型コロナウイルスについて全国初の罰則付きの条例を議員提案として出す、という。
具体的には新型コロナウイルスに感染した人が、
「就業制限・外出しないことに従わないで、よって、一定人数以上の他人に感染させたときは、行政罰(5万円以下の過料)を科す」
「事業者が特措法24条9項または45条2項に基づく知事の休業要請・時短要請に従わないで、よって、一定人数以上の感染を生じさせたときは、行政罰(5万円以下の過料)。但し、ガイドライン遵守の場合除く」
「事業者が、特措法24条9項の要請に従わないで、かつ、ガイドライン遵守も怠っている場合に、知事は、感染の予防のため、事業者名等を公表できる」
などとなっているが、簡単にいうと
・感染がわかった後に出歩いて一定人数を感染させたら罰金
・休業要請や時短要請に応じず、ガイドラインも守らなかった事業者のところでクラスターが起きたら罰金
・要請(特措法24条9項による)に従わずガイドラインも守ってなかったら事業者名公表
ということだ。
結果に罰則を科す
「他人に感染させたという結果に罰則を科すものだ」
この条例案作りに深く関わり、弁護士でもある岡本光樹都議は「狙い」についてこう話す。
つまり、この条例は感染がわかった人の行動に対し「結果責任を問う」ということだ。
ちなみに都民ファーストの会は、次のようなアンケートを行っている。
「Q保健所は感染症法に下が、陽性者については、医療施設やホテルまたは自宅で療養するよう協力を求めていますが、これに従わないケースが起きています。これについてあなたの意見に最も近いモノを選んでください」
この問いに対しては1032件の回答がよせられ
・陽性者が要請に従うよう罰則を科すべき 54.6%
・現状通りの努力義務でよい 33.4%
・特に考えはない、わからない 10.9%
という結果となったそうだ。
半数以上の54.6%が「罰則を科すべき」と答えたことを“世論の後押し”が大きいと、みているのだろう。
また、岡本都議はこうも話す。
「受動喫煙防止条例も罰則を設けたことで行動変容があった」
東京都では、罰則付きの受動喫煙防止条例が2年前に作られ、2020年4月から施行されていて、この条例が出来たことで都民の行動が変わった、という見方を示したのだ。
ちなみに、罰則はまだ1件も適用されていない。
自民党都議が疑問を呈す
一方で都議会自民党の川松真一郎都議は、都民ファーストの会の条例案について、まずこう指摘する。
「外出したことを原因として他人に感染させたことを立証することは困難」
さらにこうも指摘する。
「感染拡大防止のルールが都知事によって確立されていないのにそれを破ったら罰則です、というのはそもそもおかしいのではないか」
東京都も新型コロナウイルス対策のためのガイドラインを出しているが、ガイドラインは業界団体が作っているものが多く、都が、それを踏襲している部分も大きい。
そういったガイドラインではなく、東京都としてもっとしっかりとしたガイドラインを作るべきで、都として「どういう行為が問題か」というルールをしっかりと作った上で罰則を課すべき、という考えなのだろう。
「行為」か「結果」か
ルールなどそもそも罰すべき「行為」が明確に規定されていないのに罰則をかけるのはおかしい、と指摘する都議会自民党の都議。
そうではなく感染させてしまった「結果」について罰則をかけよう、とする都民ファーストの都議。
「行為」と「結果」。
感染症という見えない敵にむかって、どう都民の安全安心につなげていくのか、そもそも法律を超える罰則付きの条例ができるのか、次の都議会定例会での各党の議論がまたれる。
執筆:都庁担当 小川美那