販売されることなく、廃棄される規格外野菜。食品ロスを減らすための取り組みが、北九州市で始まっている。

捨てられる筈だった野菜を安い運送費で

北九州市の到津の森公園。ネギをおいしそうに食べているのはニホンザルの子ども。夢中で齧っている。

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動物たちが美味しそうに頬張っているネギだが、実は長崎・雲仙市から運ばれた規格外のもの。つまり廃棄される筈だったネギなのだ。

飼育展示係の吉森安英さんは「普段、ネギとかあげてませんので、たまにあげると動物たちも嬉しいと思います」と話す。

北九州市の到津の森公園に雲仙からネギをはじめ、さまざまな規格外野菜を届けているのは『九州西濃運輸』。通常ならばエサを運ぶためだけのトラックが必要になることもあるが、低価格で実現できているのには大きな理由がある。

それは配送ルートの活用。九州西濃運輸は、福岡県と長崎県の間に週6日の配送ルートを持っているが、通常は小さなコンテナ2つ分ほどのスペースが空いている。それを社会貢献の一環として有効活用しているのだ。

配送ルートの途中で農家に立ち寄り、処理費がかかっていた廃棄予定の規格外野菜を集荷。価値が付かず捨てられる筈だった野菜を安い運送費で到津の森の動物たちに届けているのだ 

『九州西濃運輸』営業推進部次長の森部英人さんは「既存の輸送の輸送網を活用してやってますので、改めて費用がかかったり貨車を用意したりっていうことがありませんので、負担なく取り組ませて頂いています」と話す。

1年間のエサ代は2200万円以上

農家そして運送会社が協力して行っているこの取り組み。到津の森では物価高で上がり続けるエサ代を抑えられると大歓迎だ。

飼育展示係の吉森さんは「私たちからすると野菜の“形”って関係ないんですよね。規格外で廃棄されるものですと品質はすごくいいものですので、そういうのを頂けるとやっぱり有難いですね」と話す。

到津の森ではゾウやキリン、鳥類など約80種470匹の生き物を飼育。2024年度のエサ代は2211万円に上っている。20年前と比べると上昇率は約40%となっているのだ。

動物たちの健康に欠かせないエサ代が経営を圧迫しているが、この取り組みがエサ代の高騰、農家の処理費削減という両方の悩みを解決することが期待されている。

飼育展示係の吉森さんも「動物をたくさん飼育しておりますので、エサ代だけは削れない。これが増える分にはある意味しょうがないことなので、他のところで賄っていかなければいけない」と話す。

物価高が続くなか、決して削ることができない飼育動物のエサ代。活用されることがなかった野菜が、運送会社の協力もあり動物たちの健康を支え得る存在に変わっているのだ。

こうした動きは、福岡市動物園でも始まっていて10月からは『コストコ久山倉庫店』で、店頭に並べることができない規格外の野菜を西濃運輸が配送する取り組みも始まっている。

(テレビ西日本)

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