高市早苗首相:
たくさんのご指摘があるかと思いますが、予算編成に生かしてまいりたいと思います。
11月5日、高市首相に渡された分厚い報告書。そこに記されていたのは、319件の事業で金額にすると約540億円にも及ぶ“税金の無駄遣い”です。
見過ごせない実態を会計検査院が明らかにしました。

街の人からは「無駄だらけ。体裁の良いことで覆い隠しちゃって、国民をなめるなって思う」「あり得ない。普通に考えて、そもそも使うお金の不透明なところが出てはいけない」などの怒りの声が…。

会計検査院は、国会や内閣、裁判所からも独立した立場で、国や政府関係機関のお金の出入りを厳しくチェックしています。もし不適切な会計処理を見つけた場合は、その都度、是正や改善を求める、いわば“税金の番人”です。
私たちの税金は、適切に使われているのか?そして、今年度の報告書から見えてきた問題点とは?「サン!シャイン」のスタジオに前会計検査院長の田中弥生氏を迎え、その詳細に迫ります。
「国費が入っているものは全て検査」
佐々木恭子キャスター:
どんなことが今検査されて、あぶり出されているのかということを本当に知りたいですよね。
SPキャスター・杉村太蔵氏:
どんなことをされているんですか?

田中弥生 前会計検査院長:
会計検査院といいますと、名前で会計処理を細かくチェックしているというふうに思われがちなんですが、もちろん日銀のバランスシートを見たり、国そのもののバランスシートも見るんですけれども、検査の内容によっては山奥に行って、「シカよけの柵がちゃんとメンテナンスされているか」というのを重装備で行ったり、「高速道路の耐震設計がちゃんとなされているかどうか」ということをチェックしたりします。
国費が入っているものは全て検査をするということが法律に定められていますので。そうなると防衛もやりますし、農業も見ますし、教育も見ます。
谷原章介キャスター:
本当に多岐にわたるんですね。

谷原章介キャスター:
何人ぐらいの人員で会計検査院の方は調査するんですか?
田中弥生 前会計検査院長:
会計検査院の全職員は1250人です。うち、この検査に着手しているのは800人ぐらいですね。ありとあらゆる種類の検査をしますし、税なんかはちょっと長く滞在しますが、どこもローテーションします。あらゆるものを経験してもらうということなんですね。
検査の種類もとてもいろいろありますから、数カ月で報告書が上がるものもあれば2年以上かけるものもあります。
2つ特徴を挙げたいんですが、やっぱり「現場力」なんですよ。情報をもらって「これちょっとなんかおかしいんじゃないか」といったときに最後に(現場を)確認します。さっきの耐震性にしても、実際見に行かないと分からない場面というのはありますよね。
ただこれって1箇所の1点を見つけることなんですよ。我々はもちろんそれを正してほしいというのはあるんですけど、それが「点」から「線」になってないか、他ではないか、また全国の傾向としてそれが起こっていないかといった時に、初めて制度だとか政策の見直しということが提言できるんです。

谷原章介キャスター:
予算自体がどれも大きいものじゃないですか。その予算がその仕事に対して適正かどうかも分かりにくいし、しかもそれをちゃんと適正に運用しているのかも分からない。
そういった部分をきちんと見てくださるという意味ではとても安心なんですが、それによってきちんと予算の付け方だったり、次年度に反映はしてくださっているんですか?
田中弥生前会計検査院長:
例えば今年「問題ですね」って言ったことに関して、ちゃんと守られているかどうかということは翌年確認します。確認して「まだできていないね」となると、また次の年も検査し続けて、直るまで検査し続けます。
「国際機関への拠出金」は“義務”と“任意”
東中健アナウンサー:
今回不適切な利用が指摘された540億円ですけれども、それ以外にも税金の使い方問題があるのではないかと指摘されたのが、「国際機関への拠出金」です。
こちらは、義務的なものと任意型のもの2種類あるということです。

日本が2018年度から2023年度に国際機関へ拠出した金額を調べると、6年間で5兆237億円と巨額。その中で自発的に出した任意拠出金は3兆292億円に上ります。

2018年から2021年度の任意拠出金426件のうち追加拠出に関わるものは384件。そのうち、
会計報告を定期的に受領していない38件。繰越額を定期的に把握していない49件。余剰資金の有無などを確認していない36件。合わせて123件を番組で集計したところ、拠出額は合わせて4530億円に上ることがわかりました。

谷原章介キャスター:
4530億円って日本って今「お金がないない」って言っている中、海外の機関にその額を出してきちんと検査されていないっていうのは、一国民としてすごくもどかしいのですが…。
田中弥生前会計検査院長:
まず国際機関への拠出金そのものを否定するということは、会計検査院はしていないんです。パンデミックがあったり、ウクライナ戦争や地球環境問題とか、国際協調のためにはこういったお金は必要だということを前提にしていますので。ただ、国民の税金ですから、それがきちんと使われているかということをチェックして、説明をするということは必要だと思っています。
佐々木恭子キャスター:
会計報告がなされていない、今年お金をつけて渡しました…会計報告が上がらないのにまた次年度もお金を出すということが、ちょっと感覚的には違和感がありますよね。

SPキャスター 杉村太蔵氏:
540億円の方はどうですか。
田中弥生 前会計検査院長:
540億は、これはまさに法律違反、ルール違反です。
SPキャスター 杉村太蔵氏:
そうすると会計検査院から、刑事告発みたいなこともやっぱり(ある?)。
田中弥生 前会計検査院長:
これは検察の方にお渡しします。
国際機関への政府支出 厚労省の例
東中健アナウンサー:
他にも「新型コロナワクチンの拠出金の用途変更を公表せず」とあります。
厚労省はコロナ禍の2020年、日本国内の新型コロナワクチンの調達費として約172億円を拠出しました。こちらCOVAX(コバックス)に拠出していたんですけれども、この約166億円が2022年の段階で残っていたということなんです。その後国内用から途上国用に用途が変更されており、これが公表されていませんでした。
これに対し厚労省は「途上国へのワクチン普及は、国内の感染対策にもつながり当初の目的から大きく外れていない」としています。

谷原章介キャスター:
確かに国内向けから国際協力に変わったというふうに言い換えていますけど、変更する際にはちゃんと公表するべきですよね。
田中弥生前会計検査院長:
これは拠出金を出した時には報告書を提出する仕組みがあったんですが、「その後変更した後に報告をする」ということが義務付けられてなかったんです。仕組みがなかったので、会計検査院は「方法や仕組みを検討してください」ということを意見で申し上げました。

峯村健司氏:
コロナ禍でいうと、まさに給付金ありましたよね。かなり多額な税金を費やしたけれども、この検証ってされてないですよね?
田中弥生前会計検査院長:
民間のものはあるんですが、政府としてまとめてというのは、私たちは認識したことがないですね。
峯村健司氏:
だから今回減税か給付金かって、この番組でも何度も議論しているんですが、私は無駄な使い道をしっかり抑える方が先だと思うんです。なぜ、そういうふうに動かないのでしょうか?
田中弥生前会計検査院長:
一つは、給付金を出すまでの道筋がすごく複雑というのがあると思います。
給付金って住民基本台帳をもとにして配るので、市区町村が実際に配るんですよ。そこにいくまでに国から県を通ったり、あるいは直接というところの手続きが大変ですし、この市区町村は現場で何が起こっていたかというと、私たち問答無用で10万円もらいましたけど、あの後、9種類の給付金4兆7千億円ぐらいが配られていたんですが、毎年毎年「条件を変えて配ってください」ということで配るので、てんやわんやです。

谷原章介キャスター:
アメリカだとドージ(DOGE)政府効率化省みたいなものがあって、高市総理は「日本版ドージをやりたい」みたいな発言もあったりもしましたが、それ以前に会計検査院が、提言だけではなくて、いろんなことを検証した結果、勧告を出したりとかもうちょっと権限を強めることで、より政府の効率化、もしくは政策の実効性を高めるという考え方はないですか?
田中弥生前会計検査院長:
そういう意見は多々あります。でも日本って民主主義の国なんです。
やはり財政は国民の代表である国会が決めるというのが大原則です。そうであれば私たちはその議論に必要な情報を提供するけれども、「これがダメだ」と切るのはやっぱり国民の代表だと思います。
(「サン!シャイン」11月6日放送より)
