秋田県が防衛省に要望していたクマ対策の支援に向け5日、自衛隊が活動を開始した。県と陸上自衛隊が協定を結び、5日午後から鹿角市で箱わなの設置作業などの支援活動にあたった。
目撃1万件超 人身被害4人死亡・56人けが
2025年度、秋田県内では11月4日までに1万件を超えるクマの目撃情報が寄せられ、例年にない異常な事態となっている。
また、クマに襲われて亡くなった人は4人に上り、56人がけがをしている。
秋田県と陸上自衛隊が協定締結
5日、秋田県庁で協定の締結式が行われ、鈴木健太知事と陸上自衛隊第9師団の松永康則師団長が協定書に署名を交わした。
協定で自衛隊が支援する内容としては、箱わなの運搬や設置・見回りに伴う猟友会の輸送、駆除されたクマの運搬など。情報収集については、クマが出没した際にその位置を正確に把握するため、ドローンの使用も視野に入れているという。
これらの活動は、秋田市に拠点を置く陸上自衛隊秋田駐屯地の第21普通科連隊の部隊が対応する。
鈴木知事は「これから実際に活動が始まる。県民に少しでも安心してもらい、被害を局限できるように、県としても各市町村と綿密に連携しながら、陸上自衛隊の活動をしっかりバックアップしていきたい」と語った。
協定に伴う自衛隊の活動期間は11月30日までで、活動の進捗(しんちょく)によっては期間の延長を協議することにしている。
県によると、25市町村のうち半分近くが支援活動を求めていて、大館市や北秋田市、八峰町で派遣に向けた調整が進められている。
鹿角市長「一緒に目的果たしたい」
協定締結を受け、5日午後、鹿角市で自衛隊による支援活動が始まった。
鹿角市花輪の柴平地域活動センターでは、午後1時半ごろから自衛隊の受け入れ式が非公開で行われた。
隊員は15人派遣され、この施設を拠点にして活動にあたるという。
受け入れ式で鹿角市の笹本真司市長は、市民が危機感を感じながら生活している現状を伝えたという。
鹿角市・笹本真司市長:
これまでずっと訴えてきたことではあるが、具体的な行動として駆け付けてもらい、支援が始まることが本当に大切なことだと思うし、感謝したい。どこまで自衛隊の方でできるのか、実際にやってみたところでまた新たに見つかることもあると思う。一つ一つ克服しながら一緒になって目的を果たせればと思っている。
陸自隊員15人が支援活動開始
式の後、隊員たちは、鹿角市十和田大湯地内で猟友会から指導を受けながら箱わな1基を車に乗せ、10キロほど離れた別の場所までの移動や設置作業を支援した。
箱わな1基当たりの重さは約200キロで、隊員4人で運搬にあたったという。
隊員たちは安全を確保するため、金属製の板を入れた防弾チョッキなどを身に着けているほか、盾やクマスプレーを携帯して活動にあたっている。

鹿角市農地林務課の北方康博課長は「猟友会は日中に仕事を持っている人がほとんど。自衛隊に来てもらうことで、主に平日のわなの設置が機動的に進むのではないかと期待している」と話した。
鹿角市での自衛隊の活動は11月いっぱい続く見通しで、隊員はソバ畑などクマの出没の可能性がある場所を確認しながら、市内の見回りも実施する予定だという。
