大阪で人気の観光スポット、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン。その周辺で駐車違反が横行している。

取材をしたところ、警察が一斉取り締まりをしても、「2~3分」で再びタクシーが戻ってくる現状があった。

その理由をタクシー運転手やタクシーの乗客に直撃すると、「タクシーアプリで呼ばれやむを得ず」駐車しているケースもある一方、「よく乗ってくれるから」と本音を話す人も。

専門家は「タクシー乗り場が駅の反対方向にあり、認知されていない状況」を指摘し、「パークを出てすぐのところに表示や、音声案内を」と提案した。

■近隣住民によると、5年ほど前から違法駐車の長い列ができ始めたという

ユニバーサル・スタジオ・ジャパンがある大阪市此花区。

記者リポート:駐車禁止エリアなんですがタクシーが10台ほど止まっているのが分かります。ユニバーサルシティ駅の北側のこちらの道路も数は少ないですが、数台の車が止まっています。

USJの最寄り駅、ユニバーサルシティ駅周辺でタクシーの「違法駐車」横行している。

ユニバーサルシティ駅にはロータリーがなく、駅の南北の道路は駐車禁止。

そして、駅とパークの間の道路は駐停車禁止になっている。

道路には、駐車禁止の標識もありますが、近隣住民によると、5年ほど前から、違法駐車の長い列ができ始めたという。

近隣住民:この辺にマンションができたときはタクシー2、3台やったんですけど、コロナ禍が終わってからはびっくりするくらい。2~30台くらいですかね。

近隣住民:困っているどころじゃないよね。出るときに片側1車線でしょ。見えないんですよ。ここに止められたら。完璧に駐禁を取り締まってほしい。

ユニバーサルシティ駅周辺の駐車禁止エリア
ユニバーサルシティ駅周辺の駐車禁止エリア
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■なぜ違法駐車をするのか、運転手を直撃

現場で取材を続けていると、夕方から夜にかけてあれよあれよという間にタクシーがやってくる。

記者リポート:外国人の家族でしょうか、車に乗り込みます。USJの帰りとみられる客がタクシーを利用するようです。

警察:ここは駐停車禁止です。

警察はほぼ毎日パトロールを行っていて、その時は車がいったん去っていきますが、根絶はできていない。

さらに、午後10時過ぎには、クラクションが鳴り響く様子が…。

記者リポート:クラクションが鳴り響いています。車線の中心あたりで駐車をしました。

なぜか道路の真ん中に止まった車。一歩間違えば、大きな交通事故を引き起こすリスクもある。

道路の真ん中に止まった車
道路の真ん中に止まった車

■タクシーアプリで呼ばれ、「仕方なくこの場所で待っている」という運転手も

なぜ、違法駐車をするのか。取材班が運転手を直撃した。

記者:関西テレビなんですけど、ここは駐停車できる場所なんですか?
運転手:多分この通りはだめですね。
記者:駐停車禁止でも、お客さんが指定したら?
運転手:行かなしゃあないです。相手外国人なので。アプリなんで。待つしかないんです、僕らは。仕事ができないので。

タクシーアプリで呼ばれ、「仕方なくこの場所で待っている」という声が。

タクシーアプリで呼ばれ、「仕方なくこの場所で待っている」という運転手
タクシーアプリで呼ばれ、「仕方なくこの場所で待っている」という運転手

■手っ取り早く乗客を拾える穴場スポットと考えているタクシー運転手も

一方、手っ取り早く乗客を拾える穴場スポットと考えている人も。

運転手:駅から出て来てよく乗ってくれるから並んでいるんです。やから、おまわりさん来たら退かないといけません。

USJも対策として駐車禁止を呼びかけるスタッフを配置しているが、認知されず、続々とタクシーに乗る人がいた。

(Q:ここは駐停車禁止なんですが?)
迎えの車を待つ人(長野県から):全然わかっていないです。

(Q:ここは公式駐車場ではないと知ってた?)
タクシーを待つ人(オーストラリアから):いいえ、知りませんでした。

また、パーク周辺にタクシーやバスを停められる場所『交通広場』が用意されていますが、利用客にはあまり浸透していないようだ。

(Q:USJの中にタクシー乗り場があるが?)
タクシーに乗ろうとした人(大分県から):え!あった?気づいていない。
(Qここにタクシーが止まっているとご存じでしたか?)
タクシーに乗ろうとした人(大分県から):いえ、偶然。歩いて(ホテルに)行こうかなと思ったけどタクシーの方が良いかなとなって。(ここにタクシーが)あるじゃん?ってなって。

タクシーを待つ人
タクシーを待つ人

■専門家は「乗り場を認識しづらい」と“エリアの構造に問題”と指摘

なぜこの周辺で違法駐車が横行するのか。都市交通に詳しい専門家は、このエリアの構造に問題があると指摘する。

注目したのはタクシーが停まれる交通広場の“位置”だ。

関西大学・社会安全学部 吉田裕教授:人の動線ですね。人の流れとしてはみなさんパークから退場して駅の方に流れていくので。

交通広場があるのは、パークの北側。来場者が向かう駅とは反対方向にあるため、「乗り場を認識しづらい」と言う。

関西大学・社会安全学部 吉田裕教授:インバウンドに限らず、日本人の方にも正規のタクシー乗り場はこっちなんだと、パークを出てすぐのところに表示や、音声案内をすることで駅ではなく、反対側のタクシー乗り場に皆さん向かってくれるんじゃないかと思いました。

駅と反対側にある「交通広場」
駅と反対側にある「交通広場」

■警察の大規模な取り締まりもいたちごっこの状況

先週金曜日、警察は初めてとなる大規模な一斉取り締まりに乗り出した。

記者リポート:午後7時20分です。警察がタクシーに声をかけ始めます。

警察:ご主人開けて!運転手さん、警察!免許証見せて、駐車違反。

警察:駐車違反になるんです。乗ってても駐車違反。今から取締りしますんで。ずっと前から警告させてもらってるんですよ。それでもどいてくれないので切符切らせてもらいました。

呼びかけになかなか応じなかった運転手からは、こんな不満も…

運転手:北新地とか行ってますの?
警察:行ってると思うよ。ここは此花(警察)だから。
運転手:新地は?
警察:新地は新地。今はごめん、ここやねん。

この日、警察は3台を摘発、40台に警告を行ったが…

記者リポート:つい2、3分前に取り締まられた場所なんですが、警察がいなくなると、また2台タクシーが止まっています。
記者リポート:先ほど警察車両が来た時に車は一度はけたんですけれど、5分ほどしてまた多くのタクシーが集まってきています。

その後、警察が再度出動する事態になった。

いたちごっこの違法駐車。解決へと導く手立てはあるのか。

取り締まりの様子
取り締まりの様子

■駐車禁止エリアに「配車アプリで予約できないよう改良すべき」青山和弘さん

政治ジャーナリスト 青山和弘さん:構造的な問題ですね。どんなテーマパークも公共施設も同じような問題を抱えているんですよ。タクシーを乗りたい人とのマッチングですよね。

はっきりとタクシー乗り場だと分かるようにして、利便性を高めて、人もタクシーも集まるようにしていく。テーマパーク側もそうだし、駅の周辺とか開発の段階からしっかり考えなきゃいけない。これからでも対応する必要ありますね。

駐車禁止エリアにタクシーの配車アプリで配車できてしまうことについては、「アプリ側も(利用者側が指定場所に)ピンを置こうとしたらダメだと(配車できない仕組みに)改良していく必要があります」と話した。

(関西テレビ「newsランナー」 2025年11月3日放送)

ジャーナリスト 青山和弘さん
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関西テレビ
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