トラックドライバーの残業時間が規制された2024年問題。

長距離や長時間の運転が難しくなり、対策が進まなければ2030年度には物流の約34%に影響が出ると試算されています。

規制から1年半が経つ県内の現状を取材しました。

惣菜や魚など約7000の商品をとりそろえる出水市のスーパー。

スーパーよしだ・吉田雅幸取締役
「上がっていないものを探す方が難しい」

値上げの背景には原材料費の高騰などに加え、物流コストの上昇も要因ではないかと吉田さんは分析します。

スーパーよしだ・吉田雅幸取締役
「トレイの値段が上がっているのは物流費(の高騰だろう)。120~130%にはなっている」

物流の2024年問題。

2024年に話題を呼んだこの言葉。

トラックドライバーの年間残業時間が960時間に制限され、運送業界は対応に迫られました。

2024年4月に規制が始まり、約1年半。

県トラック協会の鳥部会長は現状をこう語ります。

県トラック協会 鳥部敏雄会長
「2024年問題であれだけ騒がれたけど、まだまだ荷主とかに浸透していない」

県内企業の実情を取材しました。

関東や関西に農畜産物を届けるJA物流かごしまです。

この会社ではトラックによる移動距離を縮めるために、大阪までの移動を高速道路ではなくフェリーに変更。結果、ドライバーの労働時間は1運行あたり14時間短縮できたといいます。

そして、会社にとって一番の課題はドライバーが荷物の積み込みなどを待つ待機時間を減らすことでした。

JA物流かごしま 早稲田一剣・幹線事業部長
「下手したら1日待っているところもざらにある。運送会社はそうなると走れなくなる」

対策として荷主の企業と協力して導入したのがこのパレットです。

鹿児島チキンくみあいフーズ 迫豊博製品課長
「出来上がった製品をトラックに積み込む出荷フォーム」

パレットとは荷物を載せるための台で、トラックが来る前にパレットに荷物を積めばそのままフォークリフトで一気に荷物を積み込むことができます。

荷物を手で積み込む「バラ積み」に比べて大幅な時短につながりました。

鹿児島チキンくみあいフーズ 迫豊博製品課長
「時間が3分の1くらいでトラックを出せる」

志布志港です。

ドライバーの運転時間を削減するためか、「フェリーさんふらわあ」で大阪へ向かう多くのトラックが並んでいました。

さんふらわあにコンテナを下ろしているのは運送会社エルスです。

いちき串木野市から荷物を運んできたドライバーに、「仕事は過酷か」と聞いてみると意外な答えが返ってきました。

エルス 重信慎也さん
「休みも増えているけど給料もそのまま。」

Q.この仕事の魅力って何ですか?
「ちょうどまさしく今なんですけど、景色を見ているのが『あぁトラックドライバーしていて良かった』」

鹿児島市に本社を置き、関東、関西などに向けて畜産物の流通を手がけるエルス。

通山社長は2024年問題についてこう言い切りました。

エルス 通山顕治社長
「2024年問題の取り組みは出来上がっている」

会社が30年ほど前から始めたのが、全国各地の拠点づくりです。

大阪を皮切りに福岡、東京に次々と拠点を開設。

こうすることで、さきほどのようにフェリーに荷物を下ろしさえすれば、あとは行き先にある営業所が荷物を受け取り、目的地へと運びます。


エルス 通山顕治社長
「売り上げの倍の投資をしてしまった。不安で眠れない日々が10年くらい」

自社完結の仕組みで業績も上向き、業界が人手不足にあえぐ中、ドライバーも20年前の約3倍に増えているそうです。

エルスのドライバー
「ローテーションで回っていたのを年々6人、7人。今では同じ所を8人で回している」

かつては400時間近かった月の労働時間も法律の範囲に収まるようになりました。

エルス 通山顕治社長
「(月の労働時間が)272時間以内に2年くらい収まっている」

法律を守りながら、物流を維持しようと試行錯誤を続ける運送業界。

しかし、課題もあります。

例えばフェリー輸送。

2024年問題により、さんらわあを利用するトラックの台数は2024年度、過去最高を記録。

JA物流かごしまの担当者はこんな変化を口にします。

JA物流かごしま 早稲田一剣・幹線事業部長
「今まで乗っていなかった会社が入ってくるからあふれちゃう。陸送しかない。陸送すると違反運行になる」

そして、荷物の積み込みの時間短縮につながるパレットは使う形状が統一されておらず、荷下ろし先でさらに積み替えが必要なケースもあるそうです。

JA物流かごしま 早稲田一剣・幹線事業部長
「パレット化が進んでない。今でもバラ積みの昔ながらのところがある」

さらに2025年4月、法律の施行に伴って運送業界に改善が求められるのが多重下請け構造です。

これは運送会社が受けた仕事を下請け会社が次々に引き受け、これが何層にも重なることで手数料が差し引かれ、結果、ドライバーの手取りが減ることになります。

この下請け構造を2次請け以内に収める努力義務が定められました。

県トラック協会 鳥部敏雄会長
「実際走っている所を見たら変な話、5次、6次、7次とかね。その辺の人たちの下請けが実際走っている。自分のところが何次受けか理解していないところもある」

さらに県トラック協会の鳥部会長は今後、ドライバーのさらなる残業規制が進むことを懸念しています。

県トラック協会 鳥部敏雄会長
「今度は2030年問題がある。年間960時間以内だったのが、『月40時間に収めなさい』となる」

私たちの暮らしには欠かせない物流。

2024年問題が顕在化して1年半が経過する今なお、運送業界はこの問題と現在進行形で向き合っています。

鹿児島テレビ
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