年内の廃止に向けて大きく前進したガソリン税の暫定税率。ガソリンの販売価格にはガソリン税や消費税など多くの税金が含まれていて、その額、1リットル当たり53.8円。そのうち、元々の税率に加えて“上乗せ”されている25.1円分が、年内に廃止が見込まれている「暫定税率」です。元々は昨年末から廃止に向けた動きが進んでいましたが、ようやく実現されることになりました。県内への影響を取材しました。
◆ガソリンスタンドは需要増に期待
吉田圭吾アナウンサー:
「福井市内のガソリンスタンドです。きょうのガソリン価格は171円。ここには、約25円分の暫定税率が含まれています」
 
予定通り暫定税率が年内に廃止になれば、ガソリン価格は下がり利用者の負担は軽くなりるため、利用者は「安くなるのは本当にありがたい」「(安くなったら)もう少し遠出したい」と歓迎します。
 
さらに店側も、値下がりによるガソリン需要の増加に期待を寄せます。
 
田中利幸所長は「体感として、ガソリン価格が上がれば上がるほど販売量は下がる」といいます。
 
ガソリン価格は、2022年のロシアによるウクライナ侵攻以降ずっと高止まりしている状況です。田中所長は「率直にいうと、やっと、というところ。コロナが収束してから物価が上がってガソリンも上がってきた。少しでも安くなって客に来てもらえるようになると嬉しいと」話します。
◆燃料代7000万円が削減できる可能性も
一方、福井市の運送会社「ラニイ福井貨物」は、所有するトラックの燃料は全て軽油です。軽油にも1リットルあたり17.1円の暫定税率が上乗せされていて、この軽油にかかる暫定税率も廃止される方針です。
 
藤尾社長は「シンプルに軽油の暫定税率17.1円分がなくなれば大きなメリットがある。年間7000万円ぐらいのコスト削減になる」と話します。
  
この会社では現在、約300台のトラックが稼働していて、暫定税率の廃止で年間約4億5000万円かかっている燃料代が7000万円削減できるといいます。
 
ただ、暫定税率の廃止を巡っては、これまで与野党間での協議が行われても法案提出に向けた動きにはつながらなかったという経緯もあり、現状を冷静に受け止めています。
 
「もし(暫定税率が廃止されれば)人手不足なのでドライバーの採用育成に投資できる環境になるが、この議論に振り回されることなく経営をしていかないといけないと考えている」(藤尾社長)
◆税収減で市民生活への影響は
ドライバーや運送業者にとって、暫定税率はメリットが大きく「やっと廃止」という声も多かった一方で、 廃止による税収の減少も懸念されています。
 
減少の額は、ガソリン、軽油の暫定税率が共になくなれば、約1兆5000億円と見込まれています。
 
県民の暮らしへの影響について、県財政課に話を聞きました。
 
県には去年、暫定税率による収入が約40億円ありました。「特定の使い方が指定されている財源ではないので、県の事業に広く使われている」と財政課長。
 
道路整備に使われているとイメージされがちな暫定税率による収入ですが「道路特定財源制度」としてなどに使い道が限定されていたのは2009年までで、現在はあらゆる行政サービスに使える「一般財源」となっています。
 
つまり、代替財源が見つからなかった場合には、我々が受けるあらゆる公共サービスに影響が出る可能性もあります。県の財政課長は「議論は注視していく必要があるが、現時点で代替財源がなく廃止されるシミュレーションをしているわけではない」とします。
  
暫定税率の廃止による影響を一般のドライバーに聞いてみると「税金分のサービスは何だったのか、財源がなくなった分はどうするのか、いいところも悪いところもトータルで見てどっちがいいのだろうか、とは思う」と戸惑いを口にします。
現在、ガソリン価格には物価高騰対策として国が1リットル当たり10円の補助金を出していますが、11月13日から5円ずつ段階的に増額。12月11日には、暫定税率と同額の25.1円まで増額し、年内に暫定税率は廃止される見込みです。
 
市民、企業、行政それぞれの“財布”に大きな影響を与えるガソリン税の暫定税率の廃止。政府は廃止法案の臨時国会での成立を目指す考えを示す一方、代替財源についての結論は先送りする方針です。
 
       
         
         
        