大阪市内にある4階建てのビル。部屋は40室ほどだが…。
(Q.ここに何社くらい?)
民泊に詳しい専門家:120か130じゃないですかね。(仕切る)壁があるね。
部屋数を超える100社以上の会社が入るにも関わらず、「人影」はない。
しかし…。
記者リポート:ほぼすべての部屋で電気がついています。ただ中に人がいる様子はうかがえません。
ビルで一体、何が起きているのか?
民泊問題に詳しい専門家:ほぼ全部が中国系の会社。
その、目的とは…。
中国人の起業 サポート会社代表:日本はみんなの憧れ。ここで生活したい。移住目的。
「newsランナー」緊急取材!中国系企業が急増?横行するペーパーカンパニーの謎に迫る。
■迷惑民泊を根絶するチームを創設 特区民泊の新規の申請受付け終了を決定
大阪市 横山英幸市長:まずは一度立ち止まって、課題を整理すべき。新規受け付けは終了した上で、監視指導体制の強化。
大阪市が発表した、特区民泊の新規の申請受け付け終了。
ホテルが不足する中、外国人観光客などの受け皿となっていた特区民泊だが、騒音やゴミ出しをめぐり相次いでトラブルが…。
大阪市は迷惑な民泊を根絶するチームを創設し、認定取り消しなどの規制強化に踏み出すことや、新規の受け付けを来年5月29日に終了することを決めた。
そんな中、今増えているのが駆け込みでの申請だ。
ウエストエリア行政書士事務所 水田衣利さん:『特区民泊の許可をとってください』という依頼がほぼ占めています。
大阪市の行政書士事務所。特区民泊の申請から運営のサポートまで行っている。
新規の申請受け付け終了の一報が出てから、依頼数は9月に比べおよそ2.5倍に。そのうち半数が中国人だということだ。
■大阪で民泊ビジネスが人気な理由は「特区民泊」
そもそも民泊ビジネスは“なぜ大阪”で人気なのだろうか。
ウエストエリア行政書士事務所 大久保太一代表:大阪は、ほぼどこでも特区民泊というのができる。365日営業できるのが特区民泊の特徴。民泊の運営代行を任せると、海外の方は特に何もしなくていい。それなりの売り上げが立つし、それなりの利益が出るし、一番手っ取り早く、手間もかからないのが特区民泊。
営業日数の制限がない「特区民泊」は、全国のおよそ9割が大阪市内に集中。
外国人が経営するには、多くの場合、日本国内に会社を設立し、事業所を確保する必要があるが、民泊問題に詳しい阪南大学の松村教授はその実態を指摘する。
阪南大学国際学部 松村嘉久教授:本社機能だけ、どこか置けばいいという話になるので、いわゆるペーパーカンパニーみたいなものを置く場所が必要になってくる。
大阪市内にはいま、民泊ビジネスをめぐって、経営実態のない会社ばかりが入るビルや、マンションが急増しているというのだ。
■100社以上の会社が登記してあるが…人の出入りがほとんどない
一体何が起きているのか。
松村教授と現地を緊急取材した。
阪南大学国際学部 松村嘉久教授:ここに9月末時点で130社以上入ってる。ここは1990年築なので、そんなに古くない。立地的にも住みやすい、ワンルームか1K。
訪れたのは大阪市中央区にあるマンション。
松村教授によると130以上の会社が登記されていて、そのほとんどが「特区民泊の運営」を目的に設立されたものだという。
さらに大正区にも…。
阪南大学国際学部 松村嘉久教授:このビルですね。
(Q.ここに何社?)
阪南大学国際学部 松村嘉久教授:120か130じゃないですかね。
4階建てのビルには、部屋が40室ほどしかないが、大幅に超える会社が。
阪南大学国際学部 松村嘉久教授:壁あるね。仕切ってる感じしますね。
1つの部屋を複数の区画に分けて貸し出しているようだ。
取材を進めると、ポストには中国企業とみられる名前ばかり。1つの部屋番号に対して、A、B、2つのポストが割り当てられていることが確認できた。
ただ、100社以上の会社があるにもかかわらず…。
(Q.人が出入りは?)
周辺住人:見たことない。気持ち悪い。何年もこのまま。
周辺住人:工事業者の方ぐらいしか、出入りしてるの見たことない。
近くに住む人は「人の出入りがほとんどない」と話す。
取材班も翌日、再びビルの様子を見続けたが、人の出入りは確認できず、インターホンを押しても応答はなかった。
■人影がないのに夜に電気がつく
そしてこのビルの不審な点は他にも…。
周辺住人:夜見たらライトついてる。全部です。
(Q.人がいる?)
周辺住人:というわけではなくて、本当に電気ついてるだけ。
人影がないのに、夜に電気がつくという不気味な話が…。
確かめるため、夜に再び訪れると…。
記者リポート:午後8時前です。午前中静まり返っていたにも関わらず、ほぼすべての部屋に電気がついています。ただ、中に人がいる様子はうかがえません。
周辺住民:夜中に帰ってくると、2時とか3時とかでもついてる。明け方になったら電気が消える感じ。
経営の実態があるように見せるためなのだろうか。
ビルのオーナーに問い合わせてみると…。
ビルのオーナー:不動産会社に一棟ごと貸しているので、管理には関与していない。
■「経営・管理ビザ」の取得が目的か
そもそもペーパーカンパニーとみられる中国系企業の目的は何なのか。
その背景として考えられるのが…「経営・管理ビザ」の取得だ。
「経営・管理ビザ」は、外国人の国内での起業を促し、日本の経済成長につなげようと2015年に創設。
「500万円以上の資本金」もしくは「2人以上の常勤職員」などの条件を満たした会社を作れば取得でき、日本への移住が可能というもの。
ただ以前から「取得条件の甘さ」が指摘されていた。
■中国のSNS上では「日本移住は呼吸をするように簡単」
記者リポート:中国のSNSを見てみると、日本への移住が簡単すぎるというような投稿が見られます。
SNS上には「日本への移住は呼吸をするように簡単」、「500万円だけあればいい」という文字が並んでいる。
「経営・管理ビザ」で日本に滞在する中国人は、この10年でおよそ3倍に。
中にはペーパーカンパニーを使って、このビザを取得したケースもあるとみられる。
こうした状況を受け、出入国在留管理庁は10月16日に、ビザの取得に必要な資本金を3千万円以上に引き上げるなど条件を厳格化した。
しかし松村教授によると、この改正の直前にペーパーカンパニーの「設立ラッシュ」が起こったというのだ。
阪南大学国際学部 松村嘉久教授:今現在で登記簿上は90社が入ってることになっています。90社のうち80社は、ことしの9月20日以降に、ここに登記してる。ほぼ全部が、中国系の会社。慌ててやったんやろなと思います。
■「日本がみんなの憧れ」 中国人が日本で企業する理由
なぜ会社を設立してまで日本への移住を目指すのか。
中国人の起業をサポートする会社の代表は、多くの経営・管理ビザの取得者が、適切に経営を行っているとした上でこう話す。
中国人の起業 サポート会社代表:日本がみんなの憧れでしたので、印象が良いですね。自由とか空気も食品の安全とか、本心は(元々は)日本で起業したい。日本にいるうちに、“移住目的”に変わった人が増えてきた。
取材で見えてきたのは、民泊ビジネスに潜む「移住を目的とした経営管理ビザの取得」。
■ルールから外れる事業者は「必要に応じて許可の取り消し」と大阪市・横山市長
事業実態のない会社が横行している状況に、大阪市の横山市長は?
大阪市 横山英幸市長:経営管理ビザに関しては国の問題で、厳格化していただきたい。違法な民泊や事業趣旨に合わずに認定のルールから外れるような事業者については、徹底的に指導した上で、必要に応じて許可の取り消しに臨んでいきたい。
(関西テレビ「newsランナー」2025年10月28日放送)
