安倍晋三元総理大臣を手製のパイプ銃で撃ち、殺害した罪などに問われた山上徹也被告(45)の裁判員裁判が始まりました。
山上被告は「全て事実です。間違いありません」と述べ、殺人罪について起訴内容を認めました。
弁護側は冒頭陳述で、「父親の生命保険のほぼ全額である3000万円など、母親の旧統一教会への献金は1991年から1998年ごろまでに総額1億円に上っていた」と指摘し、「生まれ育った環境が児童虐待であると立証する」などと方針を説明しました。
■弁護側 母親の旧統一教会への献金は「総額1億円に上っていた」
弁護側は冒頭陳述で「山上被告が4歳の時にお父さんが自ら命を落とし、兄は頭部の腫瘍で命の危険を医師から指摘されていた。片目の視力も失う。母は深い苦しみで生きるようになり、1991年7月に心の救いを求めて統一教会に入信した」などと入信の経緯を説明。
また母親の献金について、1992年に父親の生命保険金のほぼ全額である3000万円を献金するなど、1991年から1998年ごろまでに総額1億円に上っていたと指摘しました。
■山上被告は自死を考えるも…「母親の信仰心は深いままで家族に溝」
さらに弁護側は山上被告の家庭環境について指摘を続けました。
【弁護側冒頭陳述より】「山上被告が高校3年の時、祖父が亡くなり、母親が相続した財産を売り払って旧統一教会に献金し、住む家や収入源がなくなってしまった。
そして山上被告は大学進学せず、しばらくして海上自衛隊に入隊したものの、自分が死ねば保険金が兄や妹に渡ると考えて自死を図った。
一命をとりとめるが海上自衛隊は除隊になり、奈良市内で母親らと同居するようになる。
そのころ被告の兄が母親を厳しく責めるようになり、日常的に母に暴力を振るって、刃物で切りつけたり、骨折させたりした。
しかし、母親の信仰心は深いままで、家族に溝があるままだった」
■兄が自死しても母親は信者のまま「旧統一教会に翻弄された人生」復讐心も
そして2015年11月に兄が自死した際、母親が旧統一教会の信者のままであり、「自分は旧統一教会に翻弄された人生だったと自死を考え、復讐心を持ち、総裁らに打撃を与えたいと考えるようになった」と説明しました。
続けて弁護側は2018年から2019年に2回にわたって旧統一教会の幹部を襲撃しようと集会の場所にいったこともあったが躊躇して実行しなかったと説明し、「確実に襲撃するには、対象を銃で撃つべきだと考えるようになった」と述べました。
■襲撃考え始めるも主要な幹部来ず…「神話的な政治家の襲撃」考えるように
さらに「山上被告は銃や火薬を自作するようになり、旧統一教会の集会があると知って襲撃を考えたものの、主要な幹部が来ないとわかり、断念した」「統一教会に親和的な姿勢を見せる政治家を襲撃することが、統一教会に打撃を与えることになると考えた」などと考えが変わっていったと主張しました。
また犯行に至る経緯として、事件の前に岡山で襲撃しようと思ったものの、警備が厳重で断念したことを示したほか、事件前の2022年7月7日未明に、奈良市内の教団の施設に弾丸を発射した事件については、「自分がこれから安倍元総理を襲撃することが統一教会への復讐であることを示す証拠を残すためだった」などと説明しました。
■生まれ育った環境が児童虐待と言えることなどを立証する」
弁護側は冒頭陳述の最後に、山上被告の母親、妹の証人尋問と本人への被告人質問で、「家庭内の状況と被告がどのような気持ちで生きてきたかを立証する」という方針と、「生まれ育った環境が児童虐待と言えることなどを立証する」という方針を説明しました。