福岡県田川市で、保育士10人が虐待などの『不適切な保育』をした問題の続報です。
TNCは、保護者説明会の一部始終を記録した音声を入手しました。
◆記者リポート
「現在、保護者説明会が行われています。園長と理事長が説明する様子が確認できます」
田川市の松原保育園で、保育士14人のうち10人が虐待などの『不適切な保育』をした問題。
これを受けて10月24日、保育園による保護者説明会が開かれました。
〈10月24日 保護者説明会(音声提供:保護者)〉
◆保護者
「どんだけ頭にきとうか分かっとーね!!ふざけるな、ほんと!!」
◆保護者
「口の中に食べ物を詰められて、『おえおえ』って言っているところを後頭部叩かれたらどう思いますか!!それを見た私たちはどう思いますか!!」
◆保護者
「不安に思っちょー保護者がここに集まっちょーんよ!!正直、腹が立つ!!」
怒りをあらわにする保護者たちに明かされたのは衝撃の事実でした。
◆理事長
「まだカメラで全部把握していないが、1例目の保育士については(不適切保育が)約60件、2例目の保育士につきましては40何件だったと思います」
理事長が語った驚きの数。
この問題の発覚は今年8月4日。
昼休み中、園長が園内の防犯カメラ映像を確認したところ、20代の女性保育士が、担当する5歳児クラスで園児の頬や頭を叩いている姿に気づいたのです。
2週間余りが過ぎた8月20日になって、園はようやく保護者説明会を開き、この女性保育士による園児虐待を報告しました。
〈8月の保護者説明会(音声提供:保護者)〉
◆松原保育園の園長
「たまたま防犯カメラの映像を見た時に『○×組』の担任が園児を叩いているような姿が確認された。『えっ!』とびっくりして、事務の先生と防犯カメラ映像を巻き戻したところ、複数回叩いている姿が確認された。往復ビンタ、物でも叩く、引っ張る。とにかく大きな声で叱責している姿も確認できた。これは『不適切保育』というより『虐待事案』。本人にも防犯カメラ映像を見せながら『これ、どういうことなの?』と聞いたところ、『手が出てしまいました』と。被害園児が給食を食べている時間だったんですが、給食が遅いのと『口にパンパン入れたままお皿を下げない』という約束事を破ったから叩いたと聞いています」
8月の説明会で、園側は「問題の女性保育士を虐待発覚の翌日に懲戒解雇した」と報告しました。
しかし保護者たちからは、ほかの保育士による虐待行為についての質問が相次ぎました。
〈8月の保護者説明会(音声提供:保護者)〉
◆保護者
「他の保育士もそういうことを見たことがあるんですけど」
◆保護者
「今、運動会の練習をやっているじゃないですか。その練習中に、引っ張ったりだとか、怒鳴ってる姿だとか、結構耳にはしてきた。私が送りに来た時だけでも何回も目にしてるんですよね」
保護者の質問に対して園側は-
◆松原保育園の園長
「以前からそういったことがなかったか、とかいうことも含め、全職員に聞き取りが今、行われているような状況です。多くの職員は、今回の暴行というか叩いたことに関して、非常にショックを受けている」
多くの同僚保育士が「ショックを受けた」と説明した園側。
ところが、その後、県などによる調査の結果、想像を超える悪質な実態が明らかになりました。
〈10月20日 福岡県の会見〉
「各保育室にカメラがあったので、16日間分の保存期間があり、過去さかのぼれるだけ全部確認して、その期間内に虐待・不適切保育が行われた事案がないか確認したところ、10人の保育士が…」
県によりますと、松原保育園では保育士14人のうち10人が、園児を殴ったり、叩いたり口に食べ物を強引に押し込んだりする身体的な虐待行為を行っていたほか、「頭悪いんか」などの子供の心を傷つける発言を繰り返していたということです。
また、こうした問題行為を把握していたほかの保育士が、注意や園長への報告をしなかったことも把握。
園は、これまでに虐待などが確認された20代の女性保育士2人を懲戒解雇。
県と田川市は、保育園を運営する「社会福祉法人・松原福祉会」に児童福祉法に基づく改善勧告を出していました。
県などによるこの発表を受けて、園は10月24日、2回目の保護者説明会を開きました。
前に立ったのは、男性理事長と女性園長です。
〈10月24日 保護者説明会(音声提供:保護者)〉
◆理事長
「10人の保育士のことを指摘されました。園児の皆様、また保護者の皆様、大変申し訳ございませんでした」
理事長が謝罪したものの、早速、保護者たちから…
◆保護者
「ニュースで『同じトングで食べさせたり』とか、『保育士が食べるバナナをそのまま園児に与えた』とか見ました。それ以外に『突き飛ばした』とか色々見ました。それは本当なのか聞きたいです」
◆理事長
「事実でございます」
◆説明会に参加した保護者
「うちの子もされている可能性が高いです。他のみんな、そうかもしれない。すごく不安です。すぐに教えてください。うちの子が殺されかけているかもしれない」
◆理事長
「まだ園として(防犯カメラ映像の)解析ができていません。(映像は)約2週間分ございますので、時間をもっと要すると思います」
◆保護者
「2週間分の解析はいつ終わるんですか?」
◆理事長
「(映像は)2日前にもらいましたので」
◆保護者
「2日間でどんぐらい見たんですか?何日分見れたんですか?」
◆理事長
「いや、見てません」
◆保護者
「は?なんで見ていない?違うやろ」
保護者たちは、10人もの保育士が不適切保育をしていた園側の管理体制を追及しました。
〈10月24日 保護者説明会(音声提供:保護者)〉
◆保護者
「結局1人だけじゃなく2人出て、そして挙げ句の果てに何人ですか?もう、『経験が浅い』とかいう問題じゃない」
◆園長
「全部で10人出てきた中で、子供に対する人権の意識が職員の中、組織的な中でも園の風潮として、防げなかったってことは責任を感じています」
◆保護者
「(不適切保育は)保育士14人中10人。(今園にいるのは)8人。なぜ8人の先生がいない?普通、前に出て謝るのが筋ではないか」
◆保護者
「残っている人も『白か黒か』でいったら『黒』でしょ?違うの?不安でたまらない」
◆保護者
「おかしいよ。ここ辞めたいのに辞められない。受け入れ先がなくて。どういうことよ」
◆理事長
「このことが発生してから田川市などには、『転園をする人がいたら、その時はよろしくお願いします』と」
◆保護者
「何カ所か行ったが無理だった」
◆保護者
「無理なんです。色々回ったんです。こっちも諦めた末、ここにいる」
紛糾した保護者説明会は3時間に及びました。
◆説明会に参加した保護者
「ごちゃごちゃ全然話になりません。(この園は)何も変わらないでしょうね。でも保育園の行き場所がない。どこの保育園にも入れない状態。我慢はしないといけないとは思うが、でも不安です」
◆説明会に参加した保護者
「保護者として不安がある。それに対し園側はどう改善するのか、どう保護者の不安を取り除くのか。(園側は)あいまいな答え、『市が、行政が、県が』と」
福岡県と田川市は園に対し、11月20日までに改善状況を報告するよう求めています。