寿司ネタなど関東で取り扱われるコハダの多くが佐賀県沖の有明海で水揚げされている。その漁獲量が今季、かなり減少しているという。この夏に配備された陸上自衛隊オスプレイの騒音の影響を心配する漁業者も多い。
有明海に響き渡るオスプレイの騒音
佐賀県沖の有明海では毎年9月初めごろからノリの養殖シーズンを前にノリ網の支柱立てが行われる。のどかな秋の風物詩。その光景に今年は変化が生じている。
海の光景に変化をもたらしたのは陸上自衛隊のオスプレイ。上空をオスプレイが飛行し、静かな有明海に騒音が響き渡るようになったのだ。
その有明海沿岸の佐賀空港西側に、今年(2025年)7月、陸上自衛隊の佐賀駐屯地が開設された。

佐賀駐屯地には陸上自衛隊オスプレイ17機が配備され、1日あたりの離着陸は16回ほど。主な飛行ルートは有明海の上空だ。
江戸前「こはだ寿司」に欠かせない海
有明海の南西部にある佐賀・太良町の竹崎漁港。有明海ならではの美味で知られる「竹崎カニ」が有名な港町だ。

この日、午前11時ごろ、早朝に海に出た漁船が漁を終え続々と戻ってきた。水揚げされたのはカニやエビなど有明海の魚介類。
関東圏のグルメを支える魚介類も多い。
水揚げされた10センチ程の魚。これは、いわゆる“江戸前寿司”の定番とも言える「コハダ」なのだ。

実は、関東で取り扱われるコハダの約3割が竹崎漁港から出荷されている。去年(2024年)の水揚げ量は約100トンにのぼり、“江戸前寿司”には欠かせない食材だ。

コハダは警戒心が強く、音に敏感な魚。このため、海面近くにいる群れを見つけたら船のエンジンを止めて手漕ぎで近づき、投網で捕らえる。

そのコハダ漁が今季は厳しいと漁業者は口にする。
オスプレイの飛行との関係はあるのだろうか。
「オスプレイの騒音でいなくなった」
「どこに行ってもコハダがいない」と話す漁業者は多い。長年有明海で漁を続けてきた漁師は海の異変に敏感だ。

当然のことだが、漁は天候や潮の流れなどに影響される。しかし、今季はそれだけではないと漁業者は感じている。警戒心が強く音に敏感なコハダがオスプレイの騒音でいなくなったのではないかと考えている漁師も多い。

地元漁師:
魚自体少なくなっているけどオスプレイも関係ある。(オスプレイが来れば)魚(コハダ)が沈んでしまうから

Q.実感はある?
地元漁師:
あるある。オスプレイじゃなくても民間機が通っただけでも(コハダが)いなくなってしまうときもある
漁師によると、筑後川や六角川など大きな川が流れ込む佐賀空港近くでコハダは産卵するという。このためオスプレイの騒音が産卵に影響しないか漁業者は心配している。
オスプレイ飛行回数・場所などを記録
竹崎漁港で26年間漁を続ける寺田一人さんら竹崎港で投網漁を行う約20人は、九州防衛局からの依頼で去年から漁の記録を付けている。

投網漁の漁業者が記録しているのは、漁に出た時間と帰ってきた時間。魚介類の種類と漁獲量。給油した燃料の量や網を投げた回数や場所。それだけではない。有明海の上空を飛行した自衛隊機や民間機などについても記録している。

投網漁師 寺田一人さん:
(オスプレイが)どのくらいの頻度で飛ぶのか、高さはどうなのかとか、結構話は出ていますよ、最初から。(防衛省への)要望とかは話し合いしていますからね。あとはどのくらい(要望が)反映されて出てくるのか、まだはっきりわからない
因果関係は不明だが…消えない不安
オスプレイの飛行訓練開始からまだ日が浅いため、コハダの漁獲量とオスプレイの騒音の因果関係はまだはっきりしていないが、漁業者からは不安の声が聞かれる。

投網漁師 寺田一人さん:
(今後の懸念や不安は)結構あります。今年、コハダ漁が厳しかったんで。生きもの相手でどうなるかはわからない。天気も、この暑さも、オスプレイも(心配)という感じです

コハダ漁にオスプレイの騒音が影響しているのか、していないのか、まだ分かっていないが、漁業者の不安が募る中、九州防衛局は来年度も漁業者に漁の記録を提出してもらう方針だ。
