JR西日本グループが取り組む、スタートアップ企業との事業共創プログラム「ベルナル」をご存知だろうか。同グループの経営資源を企業が活用しながら、共同検証や審査会などを通じて共に事業化を目指す取り組みだ。今夏にはプロジェクト1期の最終審査会が開かれ、協業による事業化案件が決定。応募企業約184社の中から事業化を勝ち取ったhab株式会社(横浜市)の豊田洋平CEOは、プログラムについて、「JR西日本グループの本気度を感じた。他の事業共創プログラムとは一線を画している」と話す。
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habの豊田洋平CEO(左)とJR西日本イノベーションズの米丸昌宏さん
◆幅広く事業の可能性を模索
ベルナルは、JR西日本(西日本旅客鉄道株式会社、大阪市北区)と、株式会社JR西日本イノベーションズが主催。社会や地域の課題解決を志向するスタートアップ企業との事業共創を推進するプログラムで、列車の「ベル」が「鳴る」=事業の始まりをイメージした名称になっている。鉄道会社の持つアセット(駅施設、車両、沿線用地など)を活用した事業について、可能性を探る。
第1期は2024年8月にキックオフした。書類審査やプレゼンテーションを経て実証実験が採択され、それぞれ最大500万円の予算がついて本格的な実証実験を実施。25年8月末の最終審査会まで長期にわたり検討を重ねた。
ベルナルの特徴は、単なる資金提供や支援に留まらないことだ。JR西日本グループの社員がそれぞれ担当につき、初期段階からフルコミットして事業を推進する。また、審査の過程で残ることができなかった事業でも、内容によっては事業化や協業のチャンスがあるほか、コーポレートベンチャーキャピタル(JR西日本イノベーションズ)による出資や資本提携といった可能性もあるのも魅力で、応募事業の幅広い可能性を模索する。
◆JR社員が「フルコミット」
第1期に最高賞の「ベルナル大賞」を受賞したのは、関東圏で子どもの送迎を軸にした送迎プラットフォームを展開するhab株式会社。同社のプラットフォームとJR西側のアセットを組み合わせた高付加価値型の学童保育事業について、事業化が決まった。
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豊田さんは複数の大手企業勤務を経て、2022年にhabを立ち上げた。昨年ベルナルに応募した時点で、同社の社員はCEOである豊田さん1人だけ。「今回参加したベンチャーの中で一番小さい規模の会社だったと思います」と話す。そんなhabに、JR西側の担当社員としてついたのが、JR西日本イノベーションズの米丸昌宏さん。事業を形にするため、社内外の幅広い調整業務を担った。
豊田さんは「協力してくれる保育事業者さんを探す時も米丸さんが電話で営業をかけてくださったり、走り回ってくださったり…。さまざまな調整をとんでもないスピード感でやってくれました」と振り返る。これまでに他社や公官庁による共創プログラムに参加した経験もある豊田さんだが、ベルナルについては「(主催する企業側の)かかわり具合も熱意もまったく違いました。そもそも数千万円単位で検証費用を準備しているプログラムという時点ですごい。まさに『共創』という言葉を体現した取り組みだと思います」と話す。
◆「日本の放課後を変える」事業実現へ
事業の方向性について議論を重ねたhabチーム。途中の審査会でのフィードバックなどもふまえ、より相互のリソースを有効活用できて“共創”のニュアンスが強い「送迎付き駅ナカ学童保育」というアイデアの形が、次第に見えてきた。米丸さんは「あらゆる可能性を閉ざさず、当社側のリソースで出来ることをhabさんに提示して議論できたことはよかったと思う」と振り返る。常に「その先にいる保護者様やお子様がどう感じるか」を意識して事業設計に取り組んだといい、「事業者側の論理ではなく、これは誰のための取り組みなのかということを考え続けました」とする。
実証は今年7月に芦屋駅(兵庫県)などで実施。送迎付き学童サービス事業に小学生15人が参加した。駅構内のスペースで子どもたちを預かり、そこから足を伸ばした総合車両所での見学、社員研修センターでの乗務員体験など、鉄道会社ならではの体験もかけ合わせた。実証後のアンケートでも、子どもや保護者から好評を博した。
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今年7月に芦屋駅などで実施した、送迎付き学童サービス事業の実証実験
そして迎えた最終審査会。8月下旬にグラングリーン大阪(大阪市)で開かれ、3社が登壇した。habチームによる「高付加価値型の学童保育事業」のほか、「広告マーケティング支援事業」、「観光利用者のアクセス向上に貢献する事業」という三者三様の事業アイデア同士で競った。habチームからは米丸さんらが登壇。実証実験やニーズ調査の結果を交えたプレゼンを披露し、実現可能性などについて審査員と激論が交わされた。そして見事、最高賞である「ベルナル大賞」を獲得。子どもたちの放課後の過ごし方といった社会課題に挑んでいる点などが評価された。
これをもって事業化が決定し、JR西側から経営資源提供と、26年春以降の事業開始が決定。事業化に際しては大阪府内で実施予定で、habチームは現在、開業に向けた準備を進めている。日常的な学童保育サービスを提供しつつ、JRや習い事事業者と連携しつつ幅広い経験の機会を定期的に子どもたちに届ける。
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今年8月に開催された最終審査会。habチームが「ベルナル大賞」に輝いた
◆「事業成長を別角度に連れていってくれた」
JR西日本という鉄道会社ならではの安全・安心に対するこだわりを感じられたことも、子どもが関わる事業を設計する上で心強かったと豊田さんは語る。「見守り体制について考える場面一つをとってもJRさんから強い責任感を感じた。非常に考えさせられました」と振り返る。「この事業は学童以外の課題も解決し得る、放課後を変える取り組みになるはず。『新しい放課後』の姿を示す日本初の事例になると信じており、必ず実現したい」と力を込める。
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伴走する米丸さんも「JRに入社した理由の一つは『地域のために自分の力を使いたい』と思ったから。その原点に立ち返る仕事に携われて何よりです」と語り、事業立ち上げに引き続き全力を注ぐ。
すでに2025年度のベルナル参加企業の募集も始まるなか、豊田さんは「あらゆる企業にとって、絶対に参加した方が良いプログラム。取り組みとして長く続けていただきたいと思う」と太鼓判を押す。「あらゆる局面で、事業成長を別角度に連れていってくれると感じた。当初思っていたことよりもかなり大きなことが実現できたし、それはこのプログラムに参加したからこそだと思います」。
■JR西日本グループの事業共創プログラム「ベルナル」の詳細については、下記ページをご覧ください。
250901_00_press_Belnal2025_1.pdf (westjr.co.jp)
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