鹿児島銀行と肥後銀行が経営統合して10月で10年となる「九州フィナンシャルグループ」に注目します。

将来的に人口が減少すれば、地域の経済も縮小し、地方銀行が置かれる環境もより厳しくなります。

こうした状況の中、これから先の10年、果たすべき役割とは何か、グループの未来を探ります。

九州フィナンシャルグループの社長で肥後銀行の笠原頭取です。

まず率直に聞いてみました。

Q.鹿児島銀行の利用者が肥後銀行を感じるか、という部分では今のところ難しい。グループとしてどう考えるか。

九州FG(肥後銀行頭取)笠原慶久社長
「ブランド戦略としても地域戦略としても、鹿児島の方に肥後銀行を感じてもらおうと思っていない。鹿児島の方には鹿児島銀行をしっかり感じていただいて、自分の県のナンバーワンバンクとして鹿児島の経済を盛り上げていくということ」

鹿児島銀行と熊本の肥後銀行が経営統合したのは今からちょうど10年前です。

その背景として地方の人口減少が進み、地域経済の縮小が見込まれる中で、銀行同士が手を組んで組織の体力を守ろうというのが狙いでした。

複数の銀行が一緒になる方法としては「合併」と「経営統合」の2つがあります。

「合併」の場合だと、銀行名を新しく変えたり、一方をなくしたりするほか、支店の統廃合やシステムの統合など効率化が進められます。

一方の「経営統合」は、持ち株会社を設立し、銀行が子会社としてぶら下がる格好で、銀行名はそのまま残り、基本的にこれまで通りの経営ができます。

九州フィナンシャルグループは、後者のケースです。

鹿児島銀行の郡山頭取は「鹿銀」の名前を残した意義をこう語ります。

九州FG(鹿児島銀行頭取)・郡山明久会長
「あえて肥後銀行、鹿児島銀行というブランドで営業していることは、地域の金融機関として『鹿児島の企業に冷たくなったな』ということが絶対にないようにしないといけない」

ここ九州は、全国に先駆けて銀行の再編が活発な地域です。

最大手となる2007年設立のふくおかフィナンシャルグループは、福岡銀行、長崎の十八親和銀行、熊本銀行、福岡中央銀行が経営統合や合併を経て傘下に入っています。

2016年設立の西日本フィナンシャルホールディングスは、西日本シティ銀行、長崎銀行がグループの傘下で市場規模の拡大を図っています。

そして、九州フィナンシャルグループは九州の持ち株会社としては、総資産ベースで3番目の規模で、わかりやすくいえば経営的に困っていない県内トップ銀行同士が無理のない範囲で、自然体でタッグを組んだといえます。

九州の経済に詳しい専門家は、県境をまたぐトップ銀行同士の経営統合は、当時としては全国的に珍しいケースだったと話します。

シンクタンク・バードウイング 鳥丸聡代表
「とても珍しい形で全国でも先鞭をつけた(開拓した)。健全なうちに経営統合しておくという、当時としてはとても珍しいパターンだった」

グループの船出は決して順調だったわけでは、ありません。

設立翌年には、熊本地震が発生、さらにコロナ禍と逆風にさらされました。

しかし、2024年の金利引き上げもあり、業績は上昇。

両行単体の2025年3月期決算は過去最高益で、2026年3月期決算も最高益を更新する見通しです。

グループとして堅調な業績で推移していますが、専門家は今後、地方銀行が果たすべき役割の変化を指摘します。

鳥丸代表
「かつての銀行は企業経営を後追いしていけばそれで良かった。これからの時代はむしろ地域をリードしていく。地場産業をサポートするような事業展開(が必要)。穴が開いているところをちゃんと埋め込んでいく工夫が必要」

九州フィナンシャルグループの、「これまでの10年」と「これからの10年」を郡山頭取はどうみているのでしょうか。

【これまでの10年ー】

九州FG(鹿児島銀行頭取)・郡山明久会長
「経営統合していなければ見えなかった世界は、実はすごくたくさんある。この10年の成果は大きかったと思う。これから先の10年も経営統合したからできたことを発揮していかないといけない」
「モデルとして『統合と独自性』を掲げているので、これを進化させていく」

グループが掲げる「統合と独自性」。このうち統合については、課題となっているシステム統合を2030年をめどに検討するなど、今後、経費率を下げる効果が期待できそうです。

一方の「独自性」については、郡山頭取は従来の銀行業に留まらない新たな地銀としての形を模索しています。

九州FG(鹿児島銀行頭取)・郡山明久会長
「預金と貸し出しをしっかり地元でやって、それでつけた力を使って地域の活性化に本業の銀行業以外でも関与してやっていく。地域の企業、自治体と連携する。そういうことをやっていけば、地域の中で果たすべき役割がおのずと出てくる」

県内のトップ銀行として地域と関わりながら、地元経済をリードしていくことが今後さらに求められています。

鹿児島テレビ
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