災害時に「シームレスな通信」と「被災状況の把握」
では実際に日本で災害が起きた際、どのような活用を想定しているのだろうか。
フランドセンCEOが次のように話す。
ミッケル・ヴェスターガード・フランドセンCEO:
考え方としては、(発災前に)すでに日本上空に待機しているイメージだ。万一、地震や津波のような不幸な出来事が起きた場合、機体はその地域に急行し、即座にインフラを提供する。まさにこれが期待できるHAPSの可能性だ。
1機で地上の直径200キロのエリアをカバーでき、携帯端末と直接通信できるため、新たな受信端末などは不要だ。普段使っている携帯をそのまま使い続けることができる利点がある。
上空20キロから「7平方cm以下」を確認可能
さらに、災害時にHAPSが力を発揮するもうひとつの機能がある。搭載されたカメラによる被災状況の把握だ。機体に搭載されたカメラは、上空20キロから7平方cm以下のものを確認できるという。フランドセンCEOは、「津波や地震の後に重要なのは、人を発見することだ。行方不明者の発見には、間違いなく役立つ」と強調する。
フランドセンCEOは、年内にも捜索を念頭に置いた飛行試験を行うと話す。
ミッケル・ヴェスターガード・フランドセンCEO:
捜索と救助を支援できる役割は非常に重要だ。年内に沿岸警備隊のために飛行試験を実施するが、『捜索』と『救助』のうち、『捜索』の作業を省くことができることを証明するつもりだ。
「成層圏に展開せずして6Gは実現できない」
フランドセンCEOは、災害対応だけでなく、その先の展開にも期待感を寄せている。
6G時代で「空飛ぶクルマ」や「物流ドローン」などが飛び交うためには、通信インフラの整備が不可欠だ。
フランドセンCEOは「成層圏に展開せずして6Gは実現できない」と強調し、HAPSがその“missing piece(欠如していた要素)”になりうると指摘する。
SCEYE社は2026年にHAPSを日本に飛ばす予定で、ソフトバンクは10日間の実証実験でデータを集める。2027年には、一般へのサービス提供を目指している。
【執筆・取材:FNNニューヨーク支局長 弓削いく子、撮影・取材:ハンター・ホイジュラット、伊東浩文】
