59年前に静岡県清水市(当時)で一家4人が死亡した強盗殺人放火事件をめぐり、やり直しの裁判=再審を経て無罪となった袴田巖さん(89)が10月9日、法律に基づき国と県を提訴しました。請求額は6億840万7602円に上ります。

1966年6月30日に清水市(当時)にある味噌製造会社の専務宅が燃え、焼け跡から多数の刺し傷がある一家4人の他殺体が見つかったほか、現金などが盗まれた強盗殺人放火事件をめぐっては、元プロボクサーで味噌工場の従業員だった袴田巖さんの死刑が一度は確定したものの、再審を経て2024年9月に無罪判決が言い渡されています。

こうした中、袴田さんは10月9日、国家賠償法に基づき国と県を訴え、計6億840万7602円の支払いを求めました。

訴状によると、請求額の中には逮捕から釈放まで刑事施設に収容されていた計1万7389日間に働いて得られたと推定される利益や死刑執行の恐怖に直面していた精神的苦痛に対する慰謝料、さらに長期間の身体拘束に伴う精神的な問題により釈放後も通常の日常生活を過ごすことができないことに対する慰謝料や介護費用などが含まれています。

一方で、袴田さんは逮捕から釈放までの48年近い身柄拘束に対する刑事補償金として約2億1700万円を受け取っていて、この分は請求額から差し引かれました。

袴田さんの弁護団は今回の訴訟について、捜査や取り調べ、証拠の捏造など違法を糺すこと、適切な賠償を求めること、冤罪解決の先例を作ることの3つを目標に掲げ、一連の刑事手続きに関与した警察・検察・裁判所の違法と責任を問う裁判と位置付けています。

その上で、訴状では「これまで再審無罪となった者が原告となった国家賠償訴訟では、警察官の違法と責任は比較的認められることが多いが、検察官のそれが認められることは殆どなく、裁判官に至っては認められたためしはない。それは裁判所が検察官、裁判官の違法と責任を極めて限定的に解しているためである」と指摘し、「原告を艱難辛苦に陥れ、最終的には原告の精神に回復し難い損害を与えた刑事手続に関与した全ての司法機関の責任が問われなくて良い筈がない」と訴えました。

請求額は再審無罪事件に関わる国家賠償請求訴訟としては過去最高額となります。

テレビ静岡
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