大阪府の吉村知事は9日の取材で、8日、山極壽一京都大学前総長らが「大屋根リング」を輪のまま保存することを吉村知事や博覧会協会などに要望したことを受け、「価値の高いものだと評価いただいて率直に嬉しいが、長期維持する前提で建築されているものではなく、難しい」という考えを示しました。
一方で、「絶対にレガシーとして残したい」として、一部は現存の形で残ることが決まっており、ARやVRなどの技術を活用して、現在の大屋根リングの様子をバーチャルで残していきたいと意欲を示しました。
■多くの先生に評価いただいて「率直に嬉しい」
【大阪府・吉村洋文知事】「開幕前はこんなん必要ないんじゃないかと言われていた大屋根リングが京大の山極先生含めて、多くの先生方に『非常に価値の高いものだ』と評価いただいているということは、私たちも率直に嬉しいなというふうに思います。
現実問題、大屋根リングは木造で維持管理も含めて、長期維持するという前提で建築されているものではありませんので、そこも議論を重ねてきましたけれども、実際はなかなか難しいところがあるだろうというふうに思っています。
ただ大屋根リングの理念であったり、1つの輪として繋がっていることの大切さ、そして大屋根リングそのものの造形美・建築美、そして価値観、そういったものを私は絶対レガシーとして残したいという思いでこの間やってきました。だからこそ一部残るということになりました。多分、声を上げなかったら、今もないという前提で進んできたと思います。
一部は現存の形で残るということが決まりましたので、それも踏まえた上で、京大の山極先生がおっしゃるようなものを、別の技術の形で、例えばARとかVRとか様々な技術もありますし、そういったことで、万博のレガシーがより深く継承できるような形というのを考えていきたいとは思います。
なので例えばリングの屋根に乗ったときに、拡張現実の技術を使えば、リングを一周なんてようなもの、リアルに近い形でバーチャルですけれども、そういったものを再現することもできると思います。
そういった新しい技術も使いながら、かつてここは一緒に繋がってたんだということを表現できる方法なども考えていきたいと思います」
■「管理費用の問題」も踏まえて判断
【大阪府・吉村洋文知事】「現実的な財源論も踏まえた上での判断です。僕はどちらかというと屋根リングに価値があると判断しているからこそ、全部撤去は絶対反対だとこの間言ってきました。
リングの価値というのを僕自身は非常に肌で感じてる方です。最初、大屋根リングをするかどうかっていうところも議論ありましたが、僕はやるべきだという判断をしました。当時それで建築費が上がるという話もあって批判も受けましたけれども、やはり僕はこれやってよかったなというふうに思っています。
この万博において、6カ月間多くの人の心に残った建築物になったと思います。日本のこの木造技術のすばらしさ、大切さというのを世界に発信することができた。
ただ現実問題、これは6カ月という前提で建築している中で、永続ということになると、これやっぱり管理の費用の問題、これは現実として出てきます。これは上に上ると思ったらやっぱ安全性も確保しなきゃいけませんから、安全性も確保した上での管理表の問題。これは当然あります」