SNSで有名人になりすまし投資を持ち掛ける、いわゆる“なりすまし詐欺”が横行している。テレビ西日本の女性アナウンサーも、そのターゲットにされていたことが判明した。
『a』であるところが『o』に
2025年8月、インスタグラムのフォロワーから驚きの連絡をもらったと話すのは、福岡市議会議員の富永周行さん(51)だ。「偽アカウントのスクリーンショットと、そこから送られてきたDMが送られてきて『これ、なりすましだよね?』」といわれたという。それを見て、驚きと怒り、そして気味悪さが襲ってきたと富永さんは話す。

富永さん本人のインスタグラムアカウントと、なりすましアカウントを比較すると顔写真や紹介文はそのまま。投稿している写真も同じだった。しかし…。

「アカウント名を見たらtominagaじゃなくてtominogaになっていたんですよ」(富永さん)。よく目を凝らすと『a』であるところが、『o』になっていたのだ。16人のフォロワーの中には、富永さんの実際の知り合いもいたという。

「僕が新しくこのアカウントを作り直したというのと勘違いしてフォローされていたという方が多かったですね」と富永さんは話す。

『本人のものだ』と騙されてフォローすると、すぐさま或るメッセージが届いたという。

『減税、円安、年金問題、株価の変動など今こそ知識を付ける時期です。『+1』と返信していただければ、招待させていただきます!』

投資について学べるというライングループへの勧誘だった。

富永さんは、偽アカウントをフォローしていた人たちに“なりすまし”であることを伝え、運営側にもアカウントの削除を要請。「この偽物のアカウントがなくなるまで2週間近くかかった。他の友人も『なりすまし』っていうのを申請してくれて、やっぱり何人かが報告しないとなかなか消えないような仕組みになっているみたいです」と富永さんは話す。

富永さんによると、同じ福岡市議会でも同様のなりすまし被害に遭った議員が、ほかに7人いたという。また福岡県の服部誠太郎知事も偽アカウントに注意する呼びかけをしている。

「怖い…」女子アナウンサーも被害に
そして今、犯人たちが“なりすまし”の新たなターゲットにしているのが、テレビ局のアナウンサーだ。テレビ西日本の赤木希アナウンサーもそのひとり。この夏、インスタグラムで“なりすまし”が発見された。

「私のアカウントのユーザー名のところは『nozomi.akagi』なんですけど、これは『nozomi』のあとにもうひとつ『i』が付いている」と話す赤木アナウンサー。このユーザー名も富永福岡市議の“なりすまし”同様、微妙に違っていた。

「ダイレクトメッセージが、この偽アカウントから送られてきて、投資を持ちかけられたと聞いた。怖いですし、何かトラブルに巻き込まれるんじゃないかな」と赤木アナウンサーは気味が悪いと話す。

同じくテレビ西日本の松尾幸一郎アナウンサーの偽アカウントも発覚した。アカウント名の点の位置をずらしている。本人だと信じたフォロワーがメッセージのやりとりをしていた

▼偽物「”ラインの投稿ON”」
▼松尾「お前だれや!!」
▼偽物「『+1』と返信いただければご招待させていただきます」
▼松尾「お前だれや!」
▼偽物「松尾幸一郎」

テレビ西日本では、そのほかのアナウンサーも偽アカウントの被害に遭っていて、同様の被害が全国のテレビ局で相次いでいる。

「7月ごろに一気に偽アカウントの注意喚起をするアナウンサーの方が増えて…。こんなことが起きているんだと思っていた矢先に自分もだったので、集中的に狙われているというか…」(赤木アナウンサー)。

「身近な存在が狙われやすい」
地方議員にアナウンサーと広がりを見せる“なりすまし”。専門家は、狙われるアカウントが変化しているという。

成蹊大学の高橋暁子客員教授のよると「地方の警察署のアカウントもなりすまされました。地元の会社の社長さんなども結構、狙われています。有名で信頼感は高いけれども、フォロワーはそれほど多くはないので、“なりすまし”しやすい。身近な存在、親近感を感じるような方なので『連絡をくれるかもしれない』と思わせる」のだという。

巧妙化する“なりすまし”の実態。安易な金銭のやりとりには注意が必要だ。
(テレビ西日本)