北海道で暮らす働くママの1日を追いかける観察ドキュメント「ママドキュ」。
子育ても仕事も頑張りながら働くママさんたちのリアルな1日をのぞくと、限られた時間で家事・育児をこなす究極の時短ワザの連続でした。
今回の主役ママは五十嵐アイリさん(33)。釧路市出身のシンガーです。
これまでミュージカルで全国ツアーを回ったり、テーマパークのショーアクターを務めたりと活躍してきました。
結婚を機に札幌に戻り、もうすぐ3歳になる息子じゅらくんの子育てに励んでいます。
じゅらくんはダウン症と呼ばれる染色体の病気で、生まれたときから治療や入院を繰り返しています。
子どもの成長をそばで見守りながら、歌で表現できる場所を模索中です。
パーソナルジムを経営するパパ・けんとさん(33)はボディビルの選手としても活躍。
そんな忙しいパパのことも、アイリさんは陰で支えています。
パパは早朝からトレーニングに出かけるため、朝はワンオペ育児。
午前7時30分。ワンオペでの朝食作りに大助かりなのが、焼くだけでおいしい冷凍の塩サバ。
まだやわらかいものしか食べられないじゅらくんのために、フライパンに魚焼き用のアルミホイルを敷いて水を注いで、ふんわり蒸し焼きに。
10月1日で3歳になる1人息子のじゅらくんは、ダウン症と呼ばれる染色体の病気で成長がゆっくりです。
蒸し焼きにしたサバと青のりとごま油を少しご飯に混ぜて「サバ混ぜご飯」に。
じゅらくんに朝ごはんを食べさせたら、今度はパパのお弁当作り。
パパのお弁当の中身はなんと、大量のイカ!フライパンにぎっしりのせて焼いていきます。
パパ・けんとさんは海外のボディビル大会で優勝するほどの実力者。
「(体質的に)鶏胸肉やササミを大量に食べるとお腹が調子悪くなっちゃう。シーフードだと消化に負担がかからない。内臓にもやさしい」といいます。疲労回復にもいいんですって。
食材へのこだわりも人一倍で、週に1度は夫婦で買い出しに出かけます。
中でもお気に入りが、コストコに売っているという、ナマズの仲間の白身魚「生パンガシウスフィレ 100g298円」。
やわらかくてどんな味付けにも合う白身魚で、骨も皮もなく、調理も楽なところが気に入っているそう。
味はタラに似ていて、ちゃんちゃん焼きにしたり照り焼きにしたり、クセがなく何にでも使えるんですって。
じゅらくんがデイサービスに出発したら、朝ごはんを食べながらパパのYouTubeの動画の編集。
仕事も育児も、夫婦で二人三脚です。
デイサービスから帰ってきたじゅらくんを連れてやってきたのは貸しスタジオ。
じゅらくんと一緒に歌の練習です。
アイリさんは音楽家だった母親と劇団に所属する兄弟の影響で、幼い頃から自然と歌に親しんできました。
高校卒業後はミュージカルの全国ツアーを回ったり、テーマパークのショーアクターとして活躍。
高校の同級生だったけんとさんと結婚して、じゅらくんを出産した直後も、当然何事もなく退院しシンガーとして復帰できると思っていましたが…。
「(小児科の)先生が私が泣く前に泣き出した。『なんでこの先生泣いてるんだろう』と思ってたら(ダウン症と)言われた」とアイリさん。
現実を受け止められなかったアイリさん。
夫・けんとさんのある一言に救われたといいます。
「『ごめん、障がいがある子を産んでしまった』と言ったら、彼は『なんで泣いてるの。俺らの子どもなんだから何も変わらないでしょ。全然謝ることなんてないんだよ。泣くこともないし』」と言ってくれたのだそう。
たくさんの治療や入院を乗り越えて、もうすぐ3歳。
じゅらくんは病気の影響で耳が聞こえにくいとお医者さんから言われています。それでもいつもそばで聞こえるママの歌が大好きです。
午後5時30分に帰宅して夕食づくり。アイリさんもじゅらくんもヘトヘト。
少しでも早く出せる料理をと冷凍庫から発掘したのは冷凍うどん。
面倒なダシはヤマサの「ぱぱっとちゃんと これ!うま!!つゆ」。1本で味が決まるから、忙しいときに大助かりなんだそう。
ごはんを作っている間、なぜか、じゅらくんはテーブルの上に正座したり立ち上がったり。
「そこで立たないよ」とやさしく声をかけながら見守るアイリさん。
このあとじゅらくんは、しっかりイスに座っておいしそうにうどんを食べていました。
アイリさんは今年、耳が聞こえない子どものための音楽ライブに出演しました。
じぇらくんの子育てを通じて、歌への向き合い方も変わったと感じています。
「1回はダウン症だって言われたときに『いろんなものを諦めよう』って思った。でもそれがきっかけでいろんな世界を見させてくれた。いろんな人とも出会わせてくれた。自分の利益とか名誉とか、そういうことではなくて純粋に心の底からじゅらのために歌いたい。(ライブに)来てくれた子に歌いたい」と話してくれました。
治療や入院を乗り越えてきた小さな命は、ママの歌声に包まれながら、ゆっくりと、でも確実に成長を続けています。
アイリさんはこれからも、じゅらくんに届くように心に響く歌を歌い続けます。