時速194kmの車による死亡事故について、控訴審の初公判が開かれました。

2021年に大分市で起きた時速194kmの車による死亡事故。
運転していた当時19歳の男が、危険運転致死の罪に問われています。

福岡高裁で29日に始まった控訴審の初公判で、被告の男は出頭しませんでした。

検察側はスピードの出し過ぎだけでなく、交差点で通行を妨害しようとした「妨害目的」もあったなどと主張。

新たな証拠を3点提出しましたが、いずれも認められませんでした。

一方、弁護側は危険運転致死罪の適用に誤りがあり損害賠償金も支払っているとして、刑を軽くするよう求めました。

裁判は即日結審し、判決は2026年1月22日に言い渡されます。 

今回、遺族は1審では危険運転が認められたが量刑が軽すぎるということで控訴しています。
法律が分かりづらいという声も上がっている状況です。

「過失運転致死傷罪」と「危険運転致死傷罪」の2点をめぐっては、裁判で争われるケースも相次いでいます。

現行の法律を見てみると、「過失運転致死傷罪」の場合は法定刑の上限は7年となっています。
そして、「危険運転致死傷罪」の場合は上限が20年ということで、この2つの間には大きな差があるわけです。

ただ危険運転で起訴されたとしても、裁判で過失運転にとどまるケースが相次いでいます。

青井実キャスター:
これまでニュースでたくさんお伝えしてきましたが、ルールがあるわけですが、ご遺族としては納得できない思いがあるわけですよね。

SPキャスター・山口真由氏:
そうですね、制御困難というところがありますから。直前まで道路を逸脱していなかった場合には結構高速でも制御困難ではなかったという判断が相次いでいて、ご遺族の気持ちは非常に分かるようには思いますけどね。

こうした事案を受けて、法務省は29日、「危険運転」が適用される基準案を示しました。
「アルコール濃度」と「走行速度」の2つに関してです。

まず「アルコール濃度」について見ていきます。

飲酒運転の場合、現行の法律では「正常な運転が困難」と受け取り方によってはあいまいだったものが、A案では0.25mg以上、B案では0.5mg以上。
こちらは体内のアルコール濃度、呼気1リットルにつきですが、こういった2つの案が示されました。

0.5mgがどのくらいかというと、体格差など個人差はありますが、法務省によると体重60kgの人がビールの大瓶を1~2本ほど摂取した状態に相当するということです。

そしてもう1つが「運転速度」です。

これは一般道と高速道路で基準を分けるような想定となっています。

まず、一般道を見ていきます。
最高速度が60km/h以下の一般道の場合は、速度を40km/h以上超えた場合がA案、そして50km/h以上を超えた場合がB案とする案が示されました。

具体的な速度で見ていくと、法定速度30km/hの場合は70km/h(A案)、または80km/h(B案)で「危険運転」が適用されるといったことを想定しているということです。

そして、高速道路ではどうなるのでしょうか。

例えば、70km/h以上の高速道路では速度を50km/h以上超えた場合がA案、60km/hを超えた場合がB案となっています。

つまり80km/hの道路の場合、130km/hまたは140km/hで「危険運転」が適用されるということです。

青井実キャスター:
一般道で時速70~80km/hだと、かなり危険だなと思いますから、これは危険運転となるんでしょうけれども、ただ大分の194km/hで走行した車による事故は、速度で見ると明らかに危険運転になるわけですよね。

フジテレビ・上法玄解説委員によると、数値基準を明確にすることで、交通事故で危険運転の適用が増える可能性があるということです。
そして、これまでは裁判で「過失運転」か「危険運転」かということを慎重に争ってきたわけですが、今後は論点が明確になって裁判がスムーズに進む可能性もあると指摘していました。

青井実キャスター:
山口さん、こういった数値基準を決めようとしていることはどうみますか?

SPキャスター・山口真由氏:
危険運転は常に国民目線と法律家目線のせめぎ合いだったと思うんですね。法律家としては過失を故意にするって相当ハードルが高いので、一律基準ということに対して根強い抵抗があるんですけど、国民目線から見て、「これで危険運転が適用されないのはおかしいだろう」というのに法律が応えていかないと、法律に対する信頼が損なわれるので、数値基準というのは一定の答えかなと思いますね。

一方で、この数値以下なら危険運転に問われないということになってしまわないのでしょうか。

その点に関しては、法務省の審議会によりますと、数値基準を下回った場合でも正常な運転が困難な場合など、実質的な「危険運転」についてはこうした処罰ができるように検討されているということです。

法務省はこのたたき台をもとに議論を進めていく方針だということです。