2歳までにほぼすべての乳幼児が感染するとされているRSウイルス感染症。風邪のような症状が出て、重症化すると気管支炎や肺炎を引き起こす危険性がある。ここ数年の感染ピークは初夏から夏にかけてだったが、今年の流行のピークは夏から秋になっている。注意点や予防法を専門医に聞いた。
RSウイルスの基本的特徴
福井愛育病院の石原靖紀院長によれば、RSウイルスは「呼吸器に感染する代表的なウイルス」だという。症状としては、「初めは発熱や鼻水。咳が出だして、ひどくなると呼吸困難でゼーゼーしたり、肺炎になったりする」と説明する。
潜伏期間は4日から6日ほどで、症状が軽い場合は1週間ほどで回復するケースが多い。しかし、特に注意が必要なのは乳幼児だ。2歳未満の約2~3割が重症化し、入院が必要になるという。
「重症化した場合は、下気道感染といって、気管支炎や肺炎になる。ゼーゼーして呼吸困難になると酸素投与が必要になり、赤ちゃんだと人工呼吸が必要になる」と石原院長は警告する。
特に重症化しやすいリスク要因
乳幼児の中でも特に重症化しやすいのは、以下のような場合だ。

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生後6か月未満
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妊娠37週未満で生まれた
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生まれつき心臓病がある
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免疫不全がある
治療法と現在の流行状況
RSウイルスの治療について石原院長は「残念ながら特効薬がないので、対症療法になる。発熱したら解熱剤、咳が出たらたんが切れる薬を使ったりなどする」と説明。

感染状況については、コロナ禍のここ数年は流行のピークが初夏から夏にかけてだったのに対し、今年は全国的に8月から9月に感染者が増加しており、コロナ禍以前の状態に戻ったという。
感染対策としては「接触感染と飛沫感染なので、コロナウイルスと同じように手洗い、マスク着用が大切。ドアノブやおもちゃの消毒も感染対策として大事」とアドバイス。
また、妊婦の感染対策も重要だ。妊婦を対象にした母子免疫ワクチン「アブリスボ」は任意接種で、妊娠28週から36週の間に1回接種する。自己負担費用は約3万5000円。この費用について石原院長は「赤ちゃんが入院すると付き添いなどで出費がかさみ、3万5000円くらいはかかってしまうことが多い」として接種を推奨している。

RSウイルスは家庭内感染が多いといい「兄弟が感染して、家にいる生まれたての赤ちゃんが鼻づまりがあってミルクが飲みにくい、咳込んでいることがある場合は、早めに病院に連れてきてもらいたい」と呼びかけている。
RSウイルス感染症は、特に乳幼児にとって重大な疾患となり得る。家族全員で感染対策を徹底し、特に乳幼児がいる家庭では早期発見・早期治療を心がけることが大切だ。