警察の捜査情報が漏えいか

記者はアプリを分析していく中で、ある衝撃的な投稿を発見した。

「千葉のソープランド4~5店舗に、【7月13日、14日】どちらかでガサが入るとのリーク情報が入りました」

“ガサ”とは、捜査機関による家宅捜索のことで、7月13日の数日前にアプリ内で共有されていた。投稿は以下のように続いていた。

「それに伴い、【7月13日、14日】は絶対に女の子を出勤させないで下さい!!」

「その日出勤をして、プロに本番行為をした事を裏取りされてしまうと紹介者にまで飛び火が来る可能性が非常に高くなります!」

実際に7月14日、千葉県警が、警視庁などの合同捜査本部からの情報を元に、千葉市内の風俗店4店舗に家宅捜索に入り、男性5人を現行犯逮捕していたことが分かった(その後、いずれも処分保留で釈放)。

捜査情報が事前に“トクリュウ”側に漏れていた疑いがあり、結果として、摘発を免れた人物がいる可能性もある。千葉県警は、こうした事態を把握しているのだろうか。

記者は9月中旬、県警に質問状を提出。情報漏えいの疑いがあることなどについて尋ねた。
しかし、捜査幹部の回答は「ご指摘の投稿やメンバーの証言を承知していないので、お答えできません」「県警では情報管理の取り組みを進めており、引き続き、その徹底に努めてまいります」などと一般論にとどまるもので、情報漏えいの疑いについて確認をするかどうかも明らかにしなかった。

トクリュウの実態把握、なお課題

トクリュウに認定されている「ナチュラル」は、どのようにして捜査情報を入手したのか。

今回の取材で見えてきたのは、トクリュウが警察の摘発や法改正で一時的に存在感を薄めているように見えても、より巧妙に潜伏し、風俗業界以外の領域にも枝葉を伸ばしている姿だった。その実態はいまも全貌が謎に包まれたままだ。

夜の街の一部には、こうしたスカウトグループを「必要悪だ」とする声もあった。だが、そうした見方が生まれてしまう余地があること自体、スカウトグループをめぐる問題の根深さを示しているように思う。

いま求められているのは、巧妙に摘発逃れをする彼らの実態を正確に把握しつつ、社会全体として「必要悪」という言葉が通用しない社会環境を築いていくことではないだろうか。
(松岡紳顕)

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松岡 紳顕
松岡 紳顕

フジテレビ 報道局記者。1991年生まれ。
福岡とカナダで育ち、慶應義塾大学法学部、米アメリカン大学WSPジャーナリズム専攻を経て、2015年に全国紙へ入社。
2023年秋にフジテレビに転職しました。
これまでの担当は、知能犯罪、反社会的勢力、宗教2世問題、農水省、宮内庁など。
現在は25年7月に新設された「調査報道統括チーム」に所属し、報道の新しい形を模索しています。
趣味は冬山登山です。不正を働く公務員や権力者、ヘイトスピーチに関する情報提供をお待ちしております。