電動アシスト自転車の鍵に“アルファベットと数字を組み合わせた番号のようなもの”が書いてあった。
何気なく検索画面に入力すると、フリマサービスで「自転車の鍵」が売買されているのを発見。
これはいったいどういうこと?
よく見るとディンプルキーの穴の開き方もまったく同じだ。

■自転車の防犯対策と法的対処は
昨年購入した電動アシスト自転車は15万円以上。
立派なディンプルキーだったこともあり、てっきりマンションの鍵などと同じで1台につき1つの鍵だと思っていたが、違うのか?
自転車やバッテリーの盗難が増加しているが、鍵が共有されていて、セキュリティは大丈夫なのか?
自転車店の店主に防犯対策を、往復20キロの自転車通勤を日課としている弁護士に法的な対処について聞いた。

■「同じ鍵番号」が存在するのは事実です…
自転車を製造しているヤマハ発動機株式会社に確認したところ、
「自転車業界を見渡しても、物理キーである以上、鍵の番手には限りがあり、世の中に同じ鍵番号が存在するのは事実ですが、過去、自分の自転車を開けられたなどの大きなクレームには至っておりません」
との回答だった。
やはり、自転車の鍵は「1台に1つ」ではなかった。
おそらく、日常生活で自転車を利用していて支障がないように計算されているのだろう。
過剰に心配する必要はないのだと思うが、やはり何か対策をした方がよい気がする。
今、どのような防犯対策が望ましいのか?
防犯対策に精通する、滋賀県彦根市の自転車店「侍サイクル」の目片貞明さんに詳しく聞いた。

■最大の防犯は「できるだけ面倒にすること」
【侍サイクル 目片貞明さん】
まず前提として、壊せない鍵はありません。
どんなに太くて重くて丈夫でも、専用の工具と時間があれば突破出来てしまいます。
鍵に対する過信は禁物なのです。
では鍵は何のためにあるのかというと「時間稼ぎ」です。
盗難は「時間との勝負」。数秒で盗めるから狙われやすく、時間がかかるほどターゲットから外れやすくなります。
「手間がかかりそう」「大変そう」「目立ちそう」。
できるだけ面倒にすることが、最大の防犯なのです。

■簡単だけど効果大「カバーをかける」
自転車の盗難の多くは、自宅の敷地内(マンションなどの駐輪場含む)で起こっています。
家の中など鍵のかかる屋内での保管がベストですが、実際には難しい方も多いでしょう。
外に置く場合、「自転車にカバーをかける」のは効果的な盗難対策の一つです。
簡単なことに思えますが、盗る側からすると、
*カバーをとるのが手間
*カバー越しだと自転車の種類がわからず、防犯装置の有無もわからない
*カバーを外しているところを見られるリスクがある
となります。

■「2ロック」と「地球ロック」
よく言うのが「2ロック」。
もともとついている鍵にもう1つ加えるなど、2種類以上の鍵を使うのがおススメです。
ポイントは「同じものを2つではなく、違うタイプの鍵をつける」こと。
種類が異なるとそれぞれを壊すのに別の工具が必要になる…つまり時間と手間がかかります。
また、自宅の敷地内やマンションなどの駐輪場に置く場合は、できれば動かないもの(固定物)と一緒に鍵をかける「地球ロック」をしてください。
自転車にいくら頑丈な鍵をかけても、担いでトラックに載せてしまえば一瞬で終わり。
持っていかれないようにするためには「地球ロック」が効果的です。
ただし外出先では注意が必要です。
ガードレールや電柱、街路樹といった公共物や他人の所有物への地球ロックは行わないで下さい。
無断での利用は違法行為です。

■当たり前だけど「鍵」をかける!
自転車を盗まれた人のうち、鍵をかけていない無施錠の割合は約7割だそうです。
「ちょっとだけだから」「家の前だから」そう思った隙を狙われます。
どんなに短時間でも必ずロックをする、当たり前のことのようですが、意識して確実に実行してください。
盗る側から考えると「リスクがあることを避けたい」。
「鍵が1つより2つだと倍のリスク」になり、自転車カバーは「手間がかかるリスク」「人目につくリスク」などにつながります。
「盗りにくいな、面倒くさいな」と思わせることが重要です。
盗難対策は、お住まいの地域や居住形態によって変わってきます。
ご自身に合った方法で、大切な自転車を守って頂きたいと思います。
(侍サイクル 目片貞明さん)

■増加続く自転車盗、メーカー、法律、警察捜査の改善を!
続いて1日20キロの自転車通勤を日課とし、自転車を取り巻く法律に詳しい鳥飼総合法律事務所の本田聡弁護士に、法的な観点からの窃盗対策について聞いた。
【自転車事情に詳しい本田聡弁護士】
9月1日の新法施行で「ケーブルカッターやボルトクリッパーの隠匿携帯が禁止」され、業務などの正当な理由なく、指定金属切断工具を隠して携帯することはできなくなりました。
“金属盗”対策が中心ですが、自転車盗の抑止にも役立つでしょう。

■増え続ける自転車盗難
自転車の盗難は、2022年に増加に転じて以降、増え続けています。
2021年の10万6585件から2024年の17万4020件では1.6倍以上です。
一方で、自転車窃盗の検挙率は約6.7%(2024年)。これは窃盗犯全体の33.1%と比べても低いのが現状です。
自分自身でしっかりと盗難防止対策をするのはもちろんですが、高額な電動アシスト自転車などが多くなる中で、メーカー側の盗難対策の改善や、上記新法のような法整備の拡充、自転車盗に対する警察の捜査姿勢の改善などの種々の取り組みが自転車盗を減らすことになるものと考えます。
(鳥飼総合法律事務所・本田聡弁護士)
