宮城・気仙沼発のスタートアップが挑む、“海の厄介者”を“地域の希望”に変える「アップサイクル事業」とは。
海の厄介者を資源に変えて、地域を活性化させる試みに迫りました。
多くの人が集まった会場には、オシャレなデザインの洋服や機能性にこだわったバッグなどが展示されていますが、どれも“特別な素材”で作られています。
「amu」代表取締役・加藤広大さん:
漁師さんが使い終えた漁具・漁網を。海洋プラスチックごみと言われて、有名な環境課題。新しい形でゴミにならない方法はないか。
日本有数の水揚げ量を誇る港町、宮城・気仙沼市。
カツオやメカジキの水揚げ量は全国でもトップクラスです。
漁船に乗り込む多くの若者たち。
これから漁に出るのかと思いきや“ある物”を次々と回収し、車両に積み込んでいきます。
回収しているのは“使い終えた漁網”です。
実は彼らは漁師ではなく、気仙沼で2年前に創業したスタートアップ「amu」の社員。
海洋プラスチックごみの課題解決に向けて、漁師から買い取った使い終えた漁網をアップサイクルする新たな事業を立ち上げました。
「amu」代表取締役・加藤広大さん:
元々、漁師さんは産業廃棄物として処理していた物ですけど、それは資源です、ゴミじゃないですと言い切って、買い取りをさせていただく。その上でリサイクルをして、ペレットだったり布というようなものに変えて、それを自分たちの方でブランディングをして。
国内でも大量の海洋プラスチックごみが海に流出していますが、中でも漁具が占める割合は非常に高いといいます。
特に頑丈に作られているナイロン製の漁網は、自然界で分解されるまで600年以上も掛かり、海洋汚染や海洋生物に絡まり命を奪うなど大きな悪影響をもたらしているのです。
「amu」では気仙沼を中心に、全国50カ所以上の漁港から使い終えた漁網を回収できるシステムを構築。
不純物を取り除くため、分別作業から取り組みます。
スタッフは「やばい、やばい、デカ釣り針が」「細かい作業、人の手でないと分別できない」「魚の死体もそのまま入ってたりとか。あとゴミ。空き缶とかもそのまま。金属のパーツが交ざっていることも。だからこそ、あまり手が付けられなかった」と話していました。
その後、漁網を洗浄し溶解すると、ペレット状の素材に生まれ変わります。
サングラスの一部として使用できたり、ペレットを原料に糸を紡ぎ、生地を作ることで洋服・バッグなどを作ることも可能です。
「amu」代表取締役・加藤広大さん:
ナイロンの素材のよく言われる特性は軽くて丈夫。長く愛してもらえるような、しっかり丈夫なもの、物作りをするというところが前提として大切。
「いらないものはない世界を作る」をビジョンに、今後は海外の漁網を回収する体制を整え、グローバル規模での環境貢献を目指していきます。
「amu」代表取締役・加藤広大さん:
漁業という基幹産業でずっと生きてきた、気仙沼から漁具を扱って、グローバルに挑戦できる事業をしたい。