5人による争いとなりそうな自民党総裁選。22日の告示が迫る中、政界関係者の間でダークホースと呼ばれているのが、18日に立候補を正式に表明した林芳正官房長官です。不祥事で辞任した大臣の「ピンチヒッター」として緊急登板が多く「政界の119番」との異名を持つ林さん。果たして林総裁の誕生はあるのか、永田町取材では定評があるジャーナリストの鈴木哲夫さんが解説します。
■独自予想「最後の選択肢として林さん」
川崎健太キャスター:
鈴木哲夫さんの自民党総裁選独自予想です。まず、最有力といわれる2人ですが、小泉進次郎さんは議員票に強くて◎、 高市早苗さんは党員票に強くて◎ということですが、ダークホースの林芳正官房長官について哲夫さんの予想は党員票が△、議員票が○ということで、ある程度は票を取るという見立てでしょうか。
鈴木哲夫さん:
自民党の党員というのは割と世論に近い感覚を持ってるんですよね。世論調査などで小泉さん、高市さんの人気が非常に高いので、党員票は同じように、 つまり世論に近いような形で出るんではないかと。
ところが、決選投票も含めて議員票は俗に言う永田町的ないろんな判断が加わってくるわけですよ。石破さんの時もそうだったけど「あいつが好きだ嫌いだ」から始まり、今回の総裁選というのは総裁イコールすぐ総理ではない。野党のどこと組むかとか組まないかとか、いろんなことがこれから先起こるわけですね。 そうすると「この人だったらあの党と組むな、それなら自分はそれでいいな」とか永田町的な判断というか議員心理が働くんですよね。それでいくと飛び抜けている2人よりも安定感の林さんということで、最後の選択肢として林さんに議員票が流れる可能性があるというイメージですね。
■公明党の動向がカギに
川崎キャスター:
このまま順当にいけば小泉さんと高市さんの決選投票の可能性が高そうですが、小泉さんが選挙中に“失速”すれば、 林さんが上がる可能性もあるということでしょうか。
鈴木さん:
去年の総裁選を思い出してほしいんですけど、その時も最初からとにかく圧倒的に小泉さん勝つよという感じだったのに、失言とか過去の発言とかいろんなものがネットなどで蒸し返されて、一気に本命から落ちていったんですよね。それで石破さんが出てきた。だから今回も、選挙までの間に失言とか討論になったときに弱いとかが出てくると小泉さん人気が落ちてくる可能性があると。
もう1つ、 実はポイントは公明党なんですよ。ちょっと意外に思うかもしれないけれど、小泉さんがもし総裁になったら維新と組むんじゃないかと言われてますよね。維新の吉村代表と万博で小泉さんがなんか親友みたいにしてやってましたよね。もし組むとなると、公明は嫌ですよね。大阪であんなバチバチやってるわけだから。公明党はまず小泉さんはノーだと考える。そうすると公明は自民と組んで選挙協力やっていて、公明の協力があって当選してる自民党議員は50人以上いるって言われてるんですね。となると公明が嫌だと言ってるのに小泉さんに入れちゃうと公明から「お前何やってんだ」と選挙協力してもらえない可能性があるわけです。なので、公明に気を使うのであれば小泉さんはどうなのかなと。公明の言動も影響してくるってことですね。そうすると公明党は「まあ林さんなら一番穏健でいいんじゃないか」ということになってきます。
■「高市氏vs林氏」の決選投票ならば…
川崎キャスター:
条件次第で林さんが抜け出す可能性があるということですが、仮に高市さんと林さんの決選投票になった場合はどちらが抜け出すか。いかがですか。
鈴木さん:
公明党は穏健な保守というか中道がいいと言っている。高市さんはちょっと先鋭的な保守ですよね。そういうことを考えると、ここはトータルにバランスのいい林さんで、自民党をみんなで手をつなぎながら立て直していこうという形で林さんに流れていく可能性があるんじゃないかと思いますね。
■「林さんはオールラウンドだが…」
それに総理経験者では麻生さん、岸田さんっていうのは、宏池会で林さんと同じグループなんですね。高市さんか林さんかということになれば林さんの方に流れていく可能性がありますよね。ただ1つだけ言わせてください。林さんはオールラウンドで何でもできます。 だけど今、自民党とか日本の政治に必要な改革というのは、オールラウンドで、みんなで握手をしようというところではないと思うんですね。壊していかなきゃいけない。そういうものが林さんにあるかは、これからの議論の中でみんなチェックして試されていくと思いますね。
川崎キャスター:
あくまで可能性の1つとして林さんが抜け出す状況について解説していただきました。
鈴木さん:
本命はあくまでも小泉、 高市両氏の流れだとは思います。
(2025年9月18日放送「報道ワイド 記者のチカラ」より)