今年7月、西原村と南阿蘇村にまたがる俵山で60代の女性が遭難しました。消防は異例ともいえる夜間の捜索に踏み切り、女性を無事に救助しました。夜間捜索を行った背景、そして、行楽の秋を前に登山する上で気を付けたいポイントを取材しました。

【登山客】「多いときは月に8~9回。登山届を出し、食料や水をしっかり持っていく」

まだまだ気温が高い日が続いていますが、暦の上ではもう秋。西原村と南阿蘇村にまたがる俵山では、ハイキングを楽しむ人の姿が増えてきました。しかし、俵山では今年の7月31日、下山中だった60代の女性が夫とはぐれて遭難しました。

その日の夕方午後6時ごろ、夫が警察に通報。消防は〈異例〉ともいえる夜間の捜索に踏み切り、日付が変わった午前1時前、頂上からおよそ700メートル離れた登山ルートでうずくまっていた女性を見つけ、救助しました。命に別条はありませんでした。

女性を救助したのは阿蘇広域消防本部の特別機動救助隊。山岳救助や水難救助のほか、火山災害などより難易度や危険度が高い事案が発生した際に招集されます。普段は各消防署に勤務しながら訓練に励み、有事に備えています。

【阿蘇広域消防本部 特別機動救助隊中尾聡志さん】「(当日は)休みで、酒でも飲もうかなとしていたら招集がかかり、急いで来た。暑い時期で、熱中症なども考えられるので、早期に救助できて、とてもよかった」

女性が遭難した7月下旬、県内は厳しい暑さが続いていました。そのため、特別機動救助隊は女性の体調を考慮し、少しでも早く救助する必要があると判断。夜間の捜索に踏み切ったといいます。

【阿蘇広域消防本部・特別機動救助隊野田幹也さん】「〈早く安心させたい〉という家族への気持ちもあったし、女性も一夜を山で過ごすのはとても苦しいと思うので、助けられて、やりがいを感じた」

また今回、捜索に駆け付けたボランティアのドローンも活躍しました。

【7DAYS白木川直己代表理事】「ご主人が女性の名前と『今迎えに行くからね。助けに行くから絶対に動かないで待ってて』と音声を吹き込んだ。それを鳴らしながら飛ばしていた。ドローンの音が聞こえていたら遭難者にとって勇気が出る」

県内では去年までの5年間に103人が遭難。このうち10人が命を落としています。ハイキング感覚での登山は危険で標高の低い山でも油断は禁物、注意が必要です。

【阿蘇広域消防本部・特別機動救助隊中村定和隊長】「標高の低い山での事故が多くなっている。ハイキング感覚で行くと事故に遭うこともある。〈山〉という認識をしっかりして、余裕を持った事前計画でルートをしっかり分かった上で登山することが大事」

スマートフォンのアプリなどを活用し、登山ルートや自分の居場所を常にしっかりと把握することが重要です。こちらは登山地図GPSアプリ『Yamap(ヤマップ)』です。このアプリを使えば、スマートフォンの電波が圏外でも、現在地を知ることができます。

熊本県と熊本県警はこのアプリを運営する会社と協定を結んでいて、遭難してしまったときにはアプリの位置情報をもとに警察や消防が捜索に当たるということです。

【阿蘇広域消防本部・特別機動救助隊中村定和隊長】「山アプリの活用でルートの喪失を防げると思う。スマートフォンを持っている人が多いので、命を守るツールとしてぜひ活用してもらいたい」このほか、十分な食料や水、モバイルバッテリーなども持参し、事前に計画をしっかりと立てた上で安全に登山を楽しみましょう。

テレビ熊本
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